Japan Society for the Promotion of Science:Grants-in-Aid for Scientific Research
Date (from‐to) : 2018/06 -2023/03
Author : 田村 善之, 中山 一郎, HAZUCHA B, 山根 崇邦, 鈴木 將文, 吉田 広志, 前田 健, 橘 雄介, 駒田 泰土, 上野 達弘, 奥邨 弘司, 金子 敏哉, 村井 麻衣子, 比良 友佳理, 孫 友容, 宮脇 正晴, 平澤 卓人, 小嶋 崇弘, 山本 真祐子, Rademacher C
従来の知的財産法学の世界では、知的創作物や創作者概念と異なり、パブリック・ドメインは知的財産権の対象ではないものとして消極的に定義されるに止まり、スポットライトが当てられることは稀であった。しかし、知的財産法が創作を奨励し産業や文化の発展を目的とする以上、その究極の目標はパブリック・ドメインを豊かにし、人々にその利用を享受させるところにあるはずであり、知的創作物の創作者に対する権利はそれを実現する手段に過ぎないはずである。本研究は、このようなパブリック・ドメインを中心に置いた知的財産法に対するものの見方を軸に、いかにしてパブリック・ドメインを豊かにし、その利用を確保するのかという観点から、パブリック・ドメイン・アプローチという思考方法を提唱し、各種の知的財産法の構築を目指している。
とりわけ今年度は、昨年度までの総論的研究の成果を受け、各論的な研究に焦点を当て、特許法、著作権法、商標法、不正競争防止法のそれぞれについて、知的財産の保護の要件、保護の範囲、保護の効果の局面について、代表的な論点の研究に着手した。その際には、本研究が志すパブリック・ドメイン・アプローチの下では、それぞれの局面がパブリック・ドメインの対象から外される要件、パブリック・ドメインの領域から外される要件、パブリック・ドメインとの切り分けの問題であることを意識した立論を展開している。すでに年度内にその研究作業の一部については、次項に記すような内容の成果を得るにいたった。こうした本研究の成果は、パブリック・ドメイン研究会や「知的財産法政策学研究」その他の媒体を活用して社会に還元することに努めた。