田髙悦子, 田口理恵, 有本梓, 臺有桂, 今松友紀, 鹿瀬島岳彦, 塩田藍 厚生の指標 62- (8) 22 -28 2015/08
[Refereed][Not invited] 目的 都市在住高齢者における傷害予期不安の実態を把握するとともに関連要因を検討することにより,地域レベルで安心・安全の向上に取り組むセーフコミュニティ推進に向けた基礎資料を得ることとした。方法 対象は,首都圏A市a行政区に在住する65歳以上の住民31,150名(全数)のうちから,1/50割合で無作為抽出された623名である。方法は無記名自記式質問紙調査(郵送法)である。調査内容は,基本属性,身体心理社会的特性,主観的健康感,外出頻度,抑うつ(K6尺度),ソーシャルネットワーク(Lubben Social Network Scale:LSNS),ならびに主要傷害("自然災害""交通事故""犯罪""転倒・転落""外傷・脱水""誤えん・窒息")に対する今後5年間における予期不安の有無である。各傷害種別の予期不安を従属変数とし,各要因を独立変数とする重回帰分析を行った。結果 回答者は381名(61.2%),有効回答者は359名(94.2%)であった。対象者の平均年齢は73.5(標準偏差=6.1)歳,うち男性が183名(51.0%),世帯状況は配偶者と同居している者が173名(48.6%)となっていた。予期不安を有する者の割合は,"自然災害"が66.9%と最も多く,次いで"犯罪"61.6%,"転倒・転落"が53.7%,"交通事故"49.0%,"誤えん・窒息"17.0%,"外傷・脱水"13.1%となっていた。また関連要因については,(1)すべての傷害に年齢および主観的健康感が有意に関連し,(2)"自然災害""交通事故""犯罪"については近所付き合いおよびソーシャルネットワーク,(3)"外傷・脱水""誤えん・窒息"については当該傷害経験,抑うつ,外出頻度,(4)"転倒・転落"については当該傷害経験,抑うつ,外出頻度,近所付き合いおよびソーシャルネットワークが,おのおの有意に関連していた。結論 都市在住高齢者における傷害予期不安は総じて高く,個人要因と環境要因が関連していたことから,今後,保健,医療,福祉はもとより,警察,消防,職域,教育,交通等における地域の諸領域のネットワークによりセーフコミュニティづくりを推進し,安心・安全を保障することが必要である。(著者抄録)