日本学術振興会:科学研究費助成事業
Date (from‐to) : 2004 -2005
Author : 古市 徹, 谷川 昇, 石井 一英
本研究の目的は、循環(3Rと適正処理)という目標に合致した新たな物流管理システムを提案することであり、特に,生ごみなどのバイオマス資源を最大限に活用するバイオマス資源の循環管理システムの提案を行うことである。
(1)大都市および中・小都市(約200自治体)を対象に,生ごみの資源化の現状,今後の生ごみ資源化の考え方について,アンケート・ヒアリング調査,および生ごみ資源化を中心とした廃棄物管理シナリオの解析を行った.
(1)大都市(14政令都市を対象)に対する結果
大都市においては,現在,家庭系・事業系生ごみの資源化を行っている自治体はごくわずかであった.一方,資源化を検討する際には,堆肥化については,製品としての堆肥の需要先に懸念があることなどから,現実問題としては,バイオガス化を選択する傾向が見られた.シナリオ解析の結果,バイオガス化施設のコストが問題となったが,焼却施設更新時に,焼却施設に併設することが,コストや環境影響面で,メリットのあることを示した.
(2)中小都市に対する結果
生ごみ資源化を実施している17市町村および実施していない200市町村に対するアンケート調査では,それぞれ,7市町村(回答率41%),142市町村(回答率71%)の回答が得られた.生ごみを資源化している市町村では,いずれも堆肥化が行われていた.この市町村では,当初,「分別協力がえられるかどうか」について懸念していたが,施設稼働後では,「堆肥の需要先」を課題している傾向が見られた.
(2)堆肥利用促進因子を調査するために,札幌市の約1300件の耕種農家に対して,生ごみ等の有機系廃棄物を原料とした堆肥の利用について,アンケート調査を行った(有効回答率は約36%).その結果,51%の農家が現在堆肥を利用しており,22%が条件さえ整えば,堆肥を利用すると回答した(それ以外は,堆肥を利用する意思がなかった)、堆肥利用促進のためには,(1)品質を良好に安定させるための発酵期間の確保や客観的な成分分析の実施が必要であること,(2)散布の手間を解消するために,委託業者を利用できる仕組みにすること,(3)散布効果の実証試験を行っていく必要があることがわかった.
以上より,大都市・中小都市ともにその地域特性に応じた,バイオマス資源としての生ごみを中心とした廃棄物管理システムの構築が可能であることを示した.また,その際に課題となる資源化物の需要,資源化技術のコストについて,解決策を提案することができた.