黒岩 麻里(クロイワ アサト) |
理学研究院 生物科学部門 生殖発生生物学分野 |
教授 |
トゲネズミ属(Tokudaia)は琉球列島にのみ分布する固有属であり,トクノシマトゲネズミ(Tokudaia tokunoshimensis)は徳之島にのみ分布する固有種で,絶滅が危惧されている.本種の分布・生息状況についてはまとまった記録が蓄積されておらず,保全策を検討する上で分布・生息状況を明らかにする必要がある.本研究ではトクノシマトゲネズミの保全に向けた第一段階として本種の分布状況を明らかにするため,2011年から2015年の捕獲調査,自動撮影カメラによる調査に加え,2005年から2016年の目撃記録・直接観察の情報の整理ならびにその他の分布情報を精査した.その結果,トクノシマトゲネズミの分布は島北部の天城岳ならびに島中東部に位置する井之川岳周辺を分布の中心地域とし,南部の犬田布岳周辺にわずかに生息していることが明らかとなった.また,比較的良好な森林があるにも関わらず生息が確認できない地域が存在することが明らかとなった.本調査結果は,絶滅のおそれのあるトクノシマトゲネズミの保全地域の設定およびイエネコ(Felis catus)による捕食対策など生息地保全を含むさまざまな保全策の策定に基礎情報を提供するものである.