友清 淳, 濱野 さゆり, 長谷川 大学, 杉井 英樹, 吉田 晋一郎, 御手洗 裕美, 有馬 麻衣, 野津 葵, 和田 尚久, 前田 英史 日本歯科保存学雑誌 60 (4) 200 -210 2017年08月
[査読無し][通常論文] 目的:直接覆髄や穿孔部封鎖に用いたWhite Mineral Trioxide Aggregate(WMTA)が,往々にして色調変化をきたすことが知られている一方で,その色調と浸透深さに関する研究報告は少ない.そこで本研究は,歯内治療ならびに修復処置に関連する7種類の溶液を用い,それらによって生じるWMTAの色調変化パターンや浸透深さについて検証することを目的とした.材料と方法:WMTAを蒸留水(DW)と通法に従い混和したものを型枠に填入し,硬化させることによりWMTA diskを作製した.これらのdiskを次亜塩素酸ナトリウム溶液(以下,NaClO),エチレンジアミン四酢酸溶液(以下,EDTA),過酸化水素溶液(以下,H2O2),ボンディング材(以下,BOND),血液(以下,BLOOD),I型コラーゲン溶液(以下,COL1),およびヨウ素溶液(以下,JG)に浸漬し,またコントロールとしてDWに浸漬した.1,7,14日経過後に測色装置および実体顕微鏡による画像撮影を行った.さらに実体顕微鏡画像に対しては,画像補正用カラーチャートを基に画像補正を行った.次に浸漬後のdiskを割断し,実体顕微鏡下にて割断面の画像撮影を行った.また,酸化ビスマスをDW,NaClO,BLOOD,JGに浸漬し,1,7,14日経過後,WMTA diskと同様の画像撮影および画像補正を行った.これらの画像を用いて,1試料当たり5点の色調測定を行い,平均値および標準偏差を算出した.結果:EDTA,H2O2,BOND,COL1に浸漬したdiskは,DWに浸漬したものと同様の色調を示したが,NaClO,BLOOD,JGに浸漬したdiskには色調変化が生じた.Diskの割断面を観察した結果,NaClOおよびJGに浸漬したdiskでは内部まで色調変化が生じたのに対し,BLOODに浸漬したものでは,内部に色調変化は生じなかった.DW,EDTA,H2O2,BOND,COL1に浸漬したdiskにおいても,内部に色調変化は認められなかった.一方NaClO,BLOOD,JGに浸漬した酸化ビスマスにおいても色調変化が生じたが,WMTA diskの色調変化パターンとは異なっていた.結論:次亜塩素酸ナトリウム溶液,血液,ヨウ素溶液は,硬化後のWMTAの色調変化を引き起こすが,それらの色調や浸透深さは異なることが明らかとなった.(著者抄録)