日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2021年10月 -2024年03月
代表者 : 吉田 邦彦, 牛尾 洋也, 今野 正規, 橋本 伸, RodriguezSamudio RubenEnrique, 西原 智昭, 広瀬 健一郎, ゲーマン・ジェフリー ジョセフ, 上村 英明, 木村 真希子
世界中の先住民族への過去の不正義に関する理論的・比較法的研究は、国連の先住民族の権利宣言に基づいて、徐々に進められてきている。法的問題としては、土地・環境問題、遺骨返還、知的所有権、先住権(漁撈権など)などがあり、日本の状況は「世界標準」からは遅れており、諸外国からは学ぶところが多い。しかし、冷戦期からの国際政治の大きな変化で、民族紛争は分散して止まず、強制移民や先住民族の周縁化がもたらされ、先住民族の権利実現はバラツキがあり、地域により国により、その文化的背景の相違から区々に分かれる。従って、ここではグローバルなポスト・ウェストファーリア的な脱植民地的な先住民族の状況を包括的、学際的、そして経験的(実証的)に考察する。世界各地の先住民族問題のエキスパートとの学術交流を深める本研究では、第1に、国際情勢一般で、国連との関係を密にして、第2は、先住民族問題の先進諸国として、アメリカ合衆国、カナダ、北欧、オセアニアからの聞き取りを行い、第3に、発展途上国の先住民族については、中南米ないしアフリカ諸国を扱う。第4には、日本法が位置づけられる近隣諸国として、東アジアとしては、台湾、東南アジア(タイ及びフィリピンなど)を扱う。交流形態としては、学理的な議論、先住民族のかかえる諸課題の現場のフィールドワーク、先住民族との交流会などを考える。日本の先住民族(アイヌ民族、琉球民族)がかかえる諸課題の検討が最終的着地点である。
こういう研究計画であったが、初期年度はコロナ禍のために、かなりの逆境であるが、それでも、アイヌ民族の問題状況の精査による足場固めを行い、さらに、アメリカでの先住民族の交流を細々続け、さらにフランスのユネスコ本部で先住民族知識の意見交換を行い、ブラジル先住民族のコロナ被害調査などを行い、隣国との平和島ネットワークでも、先住民族の視点を掲げた。まだ緒についたところであろう。