日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2001年 -2002年
代表者 : 青木 直史
平成14年度は,平成13年度に引き続き,インターネットを介した音声処理システムの可能性について調査および具体的な実装を通じて研究を展開した.特にマルチリンガル対応の音声合成システムの構築を念頭において研究を行った.国外における同様の研究課題に関する調査として,フィンランド・ヘルシンキ工科大学における研究動向の実地調査を行った.マルチリンガル対応の音声合成システムの構築には,必要となる言語の音声データベースを準備する必要があるが,本研究では,これまでに各国の研究機関で構築された音声データベースを再利用する枠組みを新たに提案し,XML (eXtensible Markup Language)に基づくデータ交換のための標準フォーマットを提案した.また,こうした標準フォーマットにより実際に音声データベースを整備し,これをインターネット上に公開することで,ボーダレスかつシームレスに音声データベースを利用する音声合成システムの実装を行った.
上記の研究課題と並行して,インターネットのブロードバンド化が進み,リアルタイム通信が実用段階に入りつつある背景を鑑み,インターネットを介した音声処理システムの一つであり,次世代の電話サービスとして急速に利用が進みつつあるVoIP (Voice over IP)に関する調査を行った.VoIPはベストエフォート型の通信方式によってリアルタイム通信を行うため,パケットの遅延や損失といったエラーに対してリアルタイムに対処する必要があるが,本研究では,こうした問題に対して,暗号技術のひとつであるステガノグラフィ技術を適用することで,伝送量を増加させることなく,従来法よりも有効に音質改善を行える可能性があることを実証するに至った.また,情報隠蔽技術の高度化を目標として,様々な角度からステガノグラフィ技術の高度化について検討した.