文部科学省:科学研究費補助金(基盤研究(B))
研究期間 : 2002年 -2004年
代表者 : 宮谷 真人, 河原 純一郎, 中條 和光, 深田 博己, 中尾 三月, 島津 明人, 橋本 芳世子
認知的ストレスとして,時間的切迫感,複数課題の同時遂行,および認知的葛藤をとりあげた。反応選択課題におけるP300潜時は,刺激評価が困難な場合にのみ時間的切迫感によって短縮した。また,刺激と反応のマッピングが困難な場合にのみ,時間的切迫感により反応準備から反応出力までの時間が短縮された。時間的切迫感が説明文理解における図の促進効果にもたらす影響について検討した結果,時間的切迫感はテキストベースの構築には影響するが,状況モデルの構築には影響しないことがわかった。二重課題がワーキングメモリの中央実行系に及ぼす影響を,文の正誤判断課題遂行時のN400成分を指標として調べた結果,乱数生成課題の同時遂行により,反応時間の遅延と,N400の意味プライミング効果の減少が生じ,中央実行系が関わる文脈統合機能が低下することが分かった。さらに,フランカー課題を用いて認知的葛藤がワーキングメモリの反応抑制機能に及ぼす影響を検討した結果,2つの異なる反応を同時に誘発する葛藤刺激に後続する試行では,反応抑制により反応時間が遅延し,その遅延の程度は,前試行で生じる葛藤が強いほど大きいことが分かった。情動的ストレスとして,不安を取り上げた。状態不安と読みの補償方略,およびワーキングメモリ容量との関係について眼球運動を指標として調べた結果,容量の大きな読み手であっても,状態不安が喚起されると,容量の小さな読み手と同様の読み方略を用いることが明らかとなった。また,不安がパフォーマンスに及ぼす影響について検討した結果,自己認知過程には,感情喚起が介在し,不安の喚起が自己認知処理することによって,記憶課題などのパフォーマンス低下をもたらすことが推測できた。その他,社会的コミュニケーションやストレス対処行動における認知的要因と感情的要因について検討した。