日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2000年 -2003年
代表者 : 中村 郁, 桂 利行, 筱田 健一, 諏訪 立雄, 中島 啓, 斉藤 政彦, 松本 圭司, 小野 薫, 山田 裕史, 島田 伊知朗, 臼井 三平, 山下 博, 江口 徹
本研究では,モジュライ空間とそのコンパクト化の研究および,ある特定の代数多様体をある別の幾何学的な対象のモジュラィ空間と同一視してその立場から,その代数多様体を研究することを目標とした。具体的には以下のような問題を考察することを目標とした:(a)商特異点C^3/Gの特異点解消のモジュライ空間としての研究,構造の決定.(b)Kempf安定性によるモジュライのコンパクト化の構成.(c)アーベル多様体のモジュライ空間A_のZ[1/N]上の自然なコンパクト化SQ_および関連するモジュライ空間の研究.そのおのおのについて相当程度の成果が得られた.
おもなものは二つある.その第一は,Hilbert scheme of G-orbitsの研究であり,単純特異点のMcKay対応とよばれる20年以上も前から知られる現象に新しい説明を与え,さらに3次元に拡張して多くの新しい問題を提起し,多くの新しい成果を得たことである.とりわけ3次元ないし高次元への拡張は,研究代表者のアイデアによって研究の方向が提唱され,多くの関連する研究が続いた.その意味で,McKay対応の研究史における本研究の意義は少なくない.とりわけ,代表者の証明した事実のひとつは,Hilbert scheme of G-orbitsがC^3/Gの極小特異点解消のなかでもっとも自然なものだということである.これは従来の理論にはなかったことであり,代数幾何学における従来の常識を破る性格を持ち,多くの研究者によって驚きをもって迎えられた.もう一つはアーベル多様体のModuli空間A_の自然なコンパクト化を構成したことである.このコンパクト化は射影的であり,望ましいコンパクト化の性質を持つ.不変式理論の立場からは,安定性によって簡明にその本質を表現できるという点で,正統な,しかもそのような唯一のコンパクト化である.