我々は微小気泡とパルス超音波を用いた細胞への薬物・遺伝子導入技術であるソノポレーションについて基礎的な検討を行っている.なかでも,薬物を付加した微小気泡を用いて目的の部位のみに薬物を直接導入する技術は,使用薬物量の抑制が期待され盛んに検討されているが,導入率が低いことが問題となっている.本研究では,異なる膜損傷のメカニズムを誘導するために,薬物を模擬する蛍光物質を付加した微小気泡に種々の条件で超音波を照射し,細胞内への模擬薬物の導入効果を共焦点顕微鏡により観察した.ヒト前立腺がん細胞を培養したカバーガラスを水槽の底面に設けた観察チャンバに設置した.顕微鏡観察下で模擬薬物付加気泡が付着した細胞に3種類の条件で超音波を照射し(連続波,繰り返し波,パルス波),照射前後および照射中の共焦点観察により膜損傷の様子と模擬薬物の細胞内導入の発生を調べた.その結果,パルス超音波では,気泡の崩壊に伴う微小な水流による膜損傷が,連続波ではマイクロストリーミングによる膜損傷が観察された.しかし,模擬薬物の細胞内への導入は,パルス超音波照射で1例確認されただけで導入効率は3%と低かった.観察例の多くで照射後,細胞膜上に模擬薬物が付着していたことから、低効率は細胞膜と気泡の脂質膜が付着して模擬薬物が膜から離れなかったためと推測され、気泡と細胞の付着状態を制御することによる導入効率向上の可能性が示唆された.
我々は簡便な超音波音場可視化法としてフォーカストシャドウグラフ法を提案し,その有用性を検証してきた.従来の実験装置では光源にレーザダイオード(LD)を使用していたが,音場画像に光の干渉によるノイズが重畳するという問題があった.そこで本報告では光源にコヒーレンシーの低いLEDを用いて音場像のノイズ低減および,音圧波形の再現可能性について検討した結果を述べる.光源として波長850 nm,パルス幅5 nsのLDと波長610 nm,パルス幅35 nsのLEDを用い,超音波診断装置用プローブが発生する中心周波数2.5 MHzのパルス音場を可視化した.また,光源の点光源性が音場像に与える影響を調べるため,LED光源のコリメート光学系に200 μmのピンホールを挿入した条件でも可視化を行った.その結果LED光源(ピンホールなし)の条件ではLD光源に比べて音場像上の干渉ノイズが軽減されたが,ピンホールを入れると干渉ノイズが再発した.また音場像から求めた焦点近傍の輝度分布を1階空間積分してハイドロホンで測定した音圧波形と比較した.その結果,1階積分波形には音圧波形特有の急峻な圧力の立ち上がりが見られなかったが,ピンホールを入れることで立ち上がり特性が改善され,音圧波形と良い一致を示した.これよりフォーカストシャドウグラフ法の光源にLEDを使用することで画質が向上した音場像が取得可能であり,音圧波形の再現には光源の点光源性が重要であることが示された.
我々は医用超音波機器の安全性検討の一環として,ラットから単離培養した心筋細胞への超音波照射を行い,超音波照射により拍動異常が誘導されることを示してきた.しかし,これまでの検討はガラス上に培養した心筋細胞で行われたものであり,その細胞形態は生体内と大きく異なる.そこで,本研究では生体を模擬した柔軟な足場層上に心筋細胞を培養し,細胞骨格を生体内の状態に近づけ,機械受容感度の変化を調べた.実験には生後2~3日のラット新生仔から単離培養した心筋細胞を用いた.柔軟な足場としては、アクリルアミドゲルを用い、対照条件としてカバーガラス上に培養した試料も作製した.ゲル上とカバーガラス上で拍動する培養心筋細胞の機械刺激受容感度の差を調べるために,音圧と波数が異なる超音波パルスを一回のみ照射し,拍動異常が誘導される閾値を調べた.拍動観察には倒立型光学顕微鏡を用い,拍動異常の判定は目視により行った.細胞の円形度を表すShape indexはゲル上で0.29±0.08,ガラス上で0.11±0.04であり,ゲル上の細胞は細胞骨格が未発達であることが示された.また,拍動異常が生じる波数閾値はゲル上の細胞が約10倍高かった(音圧13.5 MPa).これらの結果は,心筋細胞の機械刺激受容感度が細胞骨格の発達程度に依存して変化することを示唆するものと考えられた.
The scattering effect in light propagation through random media can be suppressed with the phase-conjugate optics. We have applied this technique to the transillumination imaging of animal body using a digital phase-conjugate system. In the experiment, we attempted to restore various incident light patterns through a scattering medium. As a result, the feasibility of scattering suppression using digital phase-conjugate light was verified.
A high intensity focused ultrasound (HIFU) field of a transducer for ultrasound therapy was visualized using an image subtraction Schlieren technique. The transducer of 110 mm in diameter and 100 mm in focal length was driven by a burst pulse of 1.58 MHz in center frequency and of 10 W or 100 W in input electric power. 10 instantaneous HIFU fields were visualized at 10 different phases, and a beam profile was determined by superimposing the fields. FWHMs of the beam were 5.8 mm in a visualized field but was 7.3 mm in a field determined by hydrophone measurement.