杜 長俊
『社会言語科学』 16 2 18 - 31 社会言語科学会 2014年
[査読有り] 本稿は,非優先行為のフォーマットで産出される優先行為の応答を記述したものである.優先行為の応答は,前の発話との連続性を保つフォーマットで産出され,非優先行為の応答は,前の発話との間に,沈黙・言いよどみ等が挟まれ,連続性を破るようなフォーマットで産出されることが指摘されている.しかし,優先行為のフォーマットで産出される非優先行為の発話,または非優先行為のフォーマットで産出される優先行為の発話のように,行為とそのフォーマットが一致しない現象がまれに観察される.この場合は,行為とフォーマットが一致する場合と比べて,異なる「含意」・「印象」をもたらすことも指摘されている.そこで,本稿は,非優先行為のフォーマットで産出される優先行為の応答が,異なる「含意」・「印象」をもたらすだけではなく,その応答が産出された後の発話のスペースの確保にもつながることを明らかにする.そして,非優先行為のフォーマットで産出される優先行為の発話が,どのように後続の発話スペースを確保できるのかを明らかにする.