At present, decreasing farmland due to the shortages of farmers and the devastation of agricultural landscape are becoming grave concerns. Farmland serves several multifaceted functions as a green space, and its conservation is therefore essential. In this study, we aim to elucidate the effects of various agricultural experiences on the perception of agricultural landscape. Accordingly, an interview of university students was conducted in the form of a survey. Attachment, awareness of conservation, and an understanding of the multifunctional role of farmland itself are some of the aspects that were interviewed. To reveal the effects of agricultural experiences beyond a single day's interaction, lifetime experiences were targeted in this research. Several agriculture-based categories were extracted from individuals' experiences using text analysis. It was found that agricultural experiences positively affected the perception of farmland, suggesting that the types of landscapes that give rise to feelings of attachment differ depending on the individual's own categories of experiences. Additionally, it was suggested that when these experiences were accompanied by knowledge acquisition, the understanding of farmland amenity was also positively influenced.
国立公園の効果的な管理を行うためには協働型管理が不可欠である。協働型管理の実現を目指し、これまで様々な提言が示されている(例えば、2007年の「国立・国定公園の指定及び管理運営に関する提言」)。本研究では、協働型管理がどのような構成要素から成り立っているのかを先行研究や過去の提言から整理し、その上で、構成要素が管理計画(管理運営計画も含む)にどのような形で反映されてきたのかを把握する。協働型管理に必要と考えられる構成要素は8つに整理できた。分析対象とした65編の管理計画について、整理した8つの構成要素は合計1,549箇所で登場していた。多様な主体間の連携した活動の有無を示す構成要素が829箇所と半数以上を占め、次いで各主体間での役割や費用の分担の有無を示す構成要素が276箇所で続いていた。ビジョンに関わる3つの構成要素は、2007年の同上の提言が示された以降にしか登場していなかった。2007年以降、ビジョンに関わる3つの構成要素を記載している管理計画は7割を超えたが、最も具体的な構成要素である、ビジョン達成のための行動計画まで策定しているものは2割にも満たなかった。
自然地域におけるレクリエーションでは、体験の質を確保することが求められる。そのためには、適切な混雑度の許容限界を把握することが必要である。先行研究では、合成写真を用いて利用人数の異なる場面を回答者に複数回提示し(例えば、50・25・5・0人の利用者が写っている4つの場面)、それぞれを許容できるかどうかの回答から許容限界を把握してきた。具体的には、写っている利用者数を横軸、許容できる回答者の割合を縦軸に取り、過半数が許容できないとする利用者数を許容限界として採用してきた。ただその値の推定方法は、利用者数ごとに許容できる回答者の割合の点推定値を求め、それらを直線で結ぶというものであった。回答者の平均値を結んでいることになるので、許容限界に回答者属性が与える影響は把握することができなかった。本研究では回答者の複数回答をパネルデータとして扱い、順序ロジットモデルを適用することで、より適切な許容限界の把握を試みた。結果として許容限界は均一なものではなく、旅行先で⽬的地や交通⼿段の混みぐあいを気にする人や、長期の休暇を取得できる人(混雑を避けることが可能な人)は許容限界が低いことが明らかとなった。
大山(鳥取県)では、登山道にトイレが少なく、トイレの混雑や山中への排せつ物の放置が問題化している。これに対し、一部の登山者からはトイレの増設を求める意見が提出された。一方、管理者は山岳トイレの維持管理にかかる人的・金銭的コストも問題視しており、むしろ登山道のトイレは将来的に廃止して、携帯トイレに移行することも検討している。近年では試行的に携帯トイレの普及活動を行い、利用者からは一定の評価を得た。しかし、観光客や子供も多く訪れる大山では、携帯トイレにどこまで支持が広がるかは未知数であった。本研究では、大山の登山者を対象にアンケート調査を実施し、どのような条件(トイレの形式や費用負担)であれば、より多くの利用者の支持が得られるかを検証した。登山者の選好を定量的に評価するため、アンケートには選択型実験を用いた。この結果、登山者は携帯トイレの推進自体は好意的に評価しているものの、登山道のトイレには代替しがたい必要性を感じており、廃止には有意に否定的であることが明らかになった。同時に、登山者はトイレ維持のために一定額の料金(入山料またはトイレ利用料)の支払いを許容しうることが示唆された。
都市の公園緑地において提供される生態系サービスは、都市生態系を支えるだけでなく、都市住民の肉体的・精神的な健康も支えており、その重要性が高まっている。一方、公園緑地において提供される生態系サービスは多様であり、ニーズに合った生態系サービスの提供方法を考える必要がある。このような中、生態系サービスの経済評価は都市の公園緑地の計画を立案する上で、重要な情報を提供するものである。ただ信頼性の高い評価を行うには、一度に評価対象とする生態系サービスの数を絞らなければならないという制約があった。本研究では環境評価手法である選択型実験を適用するが、マーケティングの分野で使われてきた部分プロファイル選択型実験を用いて、想定される15の生態系サービスについて、同時に評価を行うことを試みた。アンケート調査は2017年12月に実施し、回答者は札幌市の一般市民1,109人である。分析の結果、「森林樹木とのふれあいの場の提供」といった、これまで公園緑地において想定されてきた生態系サービス以外にも、「生物多様性の保全」や「防災機能の提供」といった、今日注目をあびることの多い生態系サービスにも高い評価が与えられてきた。
知床国立公園では、訪日外国人旅行者(以下、訪日外国人)が増加しているが、そこに生息するヒグマとの間に軋轢が生じることが懸念されている。ここで軋轢とは人身被害や危険な状況のことを指す。日本人観光客を想定したヒグマとの軋轢緩和対策はあるが、それが訪日外国人にも適切に対応しているとは限らない。これは訪日外国人と日本人観光客ではヒグマに対する意識が異なる可能性があるからである。そこで本研究は訪日外国人の望ましいと感じるヒグマとの距離感を明らかにし、日本人観光客の同様のことを明らかにした先行研究(稲葉,2016)の結果と比較した。その結果、訪日外国人も日本人観光客も共にヒグマとの距離が近くなるほどそれを望ましくないと評価していた。しかし訪日外国人の方がその傾向が弱かった。特に肉眼でヒグマを観察できるような近い距離については、訪日外国人より日本人観光客の方がより強く望ましくないと評価していた。よって、訪日外国人は日本人観光客と比べてヒグマとの距離を近く取る可能性があり、ヒグマとの軋轢が生じやすいと考えられる。
保護地域において,国際的な視点からその設置・保護・管理の有効性を評価しようとする試みが行われている。保護地域の管理有効性評価 (MEE: Management Effectiveness Evaluation) とは、 2000年にIUCNにより提案され、背景・計画・投資・プロセス・成果といった管理運営の側面を複数の指標から得点化して達成度を評価するものである。WWF (世界自然保護基金)や世界銀行などが、具体的な評価手法を開発している。これまで100カ国以上が実施し、東アジアでは韓国および台湾、中国が実施済みである。本研究では、WWF開発のRAPPAM (Rapid Assessment and Prioritization of Protected Area Management) を翻訳・整理し、同様な方法で評価を実施したフィンランドと台湾の事例も参考に評価指標の選定を行った。さらに、保護地域管理国際認証制度であるIUCNグリーンリストの評価基準も参考にして、我が国向けの評価指標群をまとめた。これを使用し、自然保護官に我が国で運用する場合の指標や質問項目群の妥当性などについて意見をもとめた。結果をもとに、今後、保護地域の有効性評価を我が国で応用する場合の課題について検討した。
2016年に訪日外国人は,2,403万人に至った。国立公園の外国人利用者数も増加しており,2015年には607万人と推計されている。外国人利用者への対応が課題だが,その動向や意識を探った研究は少ない。本研究では,知床国立公園知床五湖地区を対象に、外国人訪問者の動向および冬期のエコツアーに参加した外国人と日本人観光客の意識を比較し、その傾向を把握した。まず、2016年の知床五湖利用調整地区の植生保護期の立ち入り申請書の分析を行った。申請書に記入された利用者の名前、住所などから期間中の日ごとの訪問人数、または訪問者の国籍などを明らかにした。調整利用地区を訪れた外国人は合計で6000人を超え、全体利用者数の約1割を占めた。また,40ヶ国(地区)の異なる国籍がみられた。日本人とは異なる利用変動がみられた。また、2016年1月から3月のエコツアーの参加者を対象に,アンケート調査を実施した。参加した外国人のうち、アジア系が9割以上を占めた。日本人と外国人では知床の訪問動機やツアーの参加動機、ツアーの評価などが異なることが示された。
本研究の目的は、日本の国立公園の費用負担に対する一般市民の選好とその多様性を把握することである。日本の国立公園は土地所有の問題もあり、利用者に対して費用負担を求めていない。しかしながら近年は、地方公共団体による協力金の導入が増えており、また地域自然資産法の施行によって、入域料などを経費に行う事業の導入も可能となっている。しかし、どのような形での費用負担を人々が望ましいと思っているのかについては知見が存在していない。アンケート調査は、調査会社の全国モニターを対象に2015年1月9~13日に実施し、有効回答数は2,291であった。全体的回答として、人々は入場料金や施設利用料金を高く評価しており、募金(協力金)や税金を高く評価していなかった。しかし、選好の多様性を考慮して分析したところ、募金(協力金)を高く評価するグループも見出すことができた。彼らは他のグループと比較して、「国立公園は自分にとって身近な存在である」「国立公園の自然環境を改善するためのボランティアに参加したいと思う」と回答しており、国立公園をより身近な存在としている回答者の方が、自発的な費用負担を望ましいとしていることが明らかとなった。