日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 1997年 -1998年
代表者 : 新井 則義
筆者は,α-ヒドロキシイミノカルボン酸に対し,アルケン,またはアルキン類の存在下,硝酸アンモニウムセリウム(IV)(CAN)を作用させることによりニトリルオキシドを生成し,対応する付加生成物として4,5-ジヒドロイソオキサゾール,あるいはイソオキサゾール誘導体がそれぞれ得られることをすでに見出している。今年度の検討において,ニトリルオキシドの前駆体としてα-ヒドロキシイミノカルボン酸のみならず2-オキソアルドキシムも有効に活用でき,アシル(アロイル)ニトリルオキシドの発生に利用できることを見出した。たとえば,フェニルグリオキサール-1-オキシムに対しアクリル酸エチルの存在下CANを作用させると,生じたベンゾイルニトリルオキシドとアクリル酸エチルとの環状付加反応が進行し,3-ベンゾイル-4,5-ジヒドロイソオキサゾール-5-カルボン酸エチルが85%の収率で得られる。アシル(アロイル)ニトリルオキシドの効率の良い発生手法についてはわずかしか報告例がないが,本手法を用いることにより3-アシルイソオキサゾール誘導体を収率良く合成することができる。さらに,2-オキソアルドキシムに代え2-オキソアルデヒド-1-ヒドラゾンを用いれば,ニトリルオキシドと同様1,3-双極子の一種であるニトリルイミンを発生させることも可能なのではないかと考え,フェニルグリオキサール-1-アセチルヒドラゾンに対し,CANを作用させ反応を試みた。その結果,オレフィンとの付加生成物は得られなかったものの,自己環化生成物である1,3,4-オキサジアゾール誘導体が得られた。この化合物はニトリルイミンの発生を示唆するものと考えられる。