佐藤 嘉晃, 井上 則子, 大瀧 尚子, 梶井 抄織, 藤井 元太郎, 塚田 東香, 山本 隆昭, 今井 徹, 中村 進治 『北海道矯正歯科学会雑誌』 26 (1) 21 -30 1998年
[査読無し][通常論文] 矯正治療にとって重要な個人の顔貌に対する意識を検討する事を目的として,まず18歳から24歳の女性で構成される一般集団20人を対象に,自分自身の顔面写真を用いてアンケート調査を行い以下の結果を得た。1.顔貌に対する不満が高かった項目は,全体印象では9項目中7項目と多く,横顔の項目で最も高かった。各部分の印象では,鼻,まぶた,ひたい,頬,歯,咬み合わせ(前歯),歯並びの順であった。2.顔貌に対する意識の高かった項目は,全体印象では正面顔,顔の各部のバランス,口の周りであった。各部分では,歯並び,歯,鼻,えらであった。また,全体印象の項目よりも各部分の項目で満足の程度が高かった。3.不満または満足と答えた項目を表現する自身の顔面写真の撮影方向は,不満で正面,満足で斜めの割合が高かった。しかし,ひたい,上口唇,下口唇ではどちらの場合も正面で高かった。横はほとんどなく,不満では鼻が,満足では耳と頬が比較的多かった。4.自分の特徴を示す写真の方向で選択されたものは,斜めが最多の75.0%であった。5.E-lineに対する上下口唇の前後的位置は,上口唇で後方0.6mm,下口唇で前方1.15mmであった。また,口唇部の位置を変化させた4種類の側貌シルエットから自身の側貌を選択させたところ,45.5%がこれを選択した。以上より,一般の女性は自身の顔貌を,方向性をもって認識し,3次元的に捉えていることが示唆された。しかし,日常の中で横顔を積極的に認識する者は少ないことがわかった。