日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(C)
研究期間 : 2000年 -2001年
代表者 : 山下 博, 西山 享, 澁川 陽一, 齋藤 睦, 和地 輝仁, 太田 琢也, 山田 裕史
実簡約リー群の無限次元既約表現に付随したハリシュ・チャンドラ加群は,リー代数のべき零共役類からなる随伴多様体を基本不変量にもつ.さらに,随伴多様体の各既約成分の当該加群における重複度は,対応するべき零軌道上の一点の固定部分群の等方(固定)表現の次元として捉えることができる.研究代表者の一連の研究により,多くの場合に,双対ハリシュ・チャンドラ加群を実現する勾配型不変微分作用素の主表象写像を用いて等方表現を記述できることが,原理的には分かっている.本研究では,四元数型無限次元表現,離散系列や最高ウェイト加群など,既約な随伴多様体をもつハリシュ・チャンドラ加群に対する等方表現の研究を開始し,以下に述べる成果を挙げた.
1.随伴サイクルに対するヴォーガン理論を出発点に,等方表現の構造の一般論を展開した.等方表現の既約性に対する判定条件を与え,勾配型微分作用素により等方表現が特定できるのは如何なる場合かを調べた。
2.四元数型を含む一般の離散系列表現について,等方表現の零でない商表現を構成した.この商表現は等方表現のなかで十分大きいと考えられるが,各離散系列加群に対応して定まるテータ安定な放物型部分群が対称対に付随したリチャードゾン型のべき零軌道を持つ場合に、これを支持する定性的な定理を得た.
3.エルミート型リー代数BI, DI, EVIIの特異ユニタリ最高ウェイト加群に対する等方表現を,具体的に特定した.最終的に,任意のエルミート型単純リー代数の特異ユニタリ最高ウェイト加群に付随する等方表現が既約になることを見出した.
4.各研究分担者は本研究に常時参画した.齋藤は,ユニタリ最高ウェイト加群と密接に関わるA-超幾何系の研究を進め,A-超幾何系が斉次の場合にランクの公式を得た.和地は一般バーマ加群上にキャペリ恒等式の類似物を構成した.西山と太田は,それぞれ独自の視点から,対称対に付随するべき零軌道のモーメント写像による対応(双対対に関するテータ・リフト)を与えた.