日本学術振興会:科学研究費助成事業 基盤研究(B)
研究期間 : 2019年04月 -2023年03月
代表者 : 須江 隆, 梅村 尚樹, 高橋 亨, 藤本 猛, 渡辺 健哉, 津田 資久, 小島 浩之, 江川 式部
本研究は南宋時代の筆記史料『夷堅志』に着目し、その史料性及び全容の解明と、史的研究への活用の便をはかるための情報ツールの構築を、国際的共同研究のもとで推進すること目的としている。具体的には、「①中国近世社会の日常性や生活文化の実態を解明して現実を見つめ直すために、『夷堅志』を如何に史的研究に活用すべきなのか、②どうしたら『夷堅志』活用の便をはかれるのか、③内外で関心が高い『夷堅志』を国際的共同研究として推進するためにはどうすべきなのか」の3つを研究課題の核心をなす学術的「問い」と設定し、その問いに応えるべき成果の達成を目指している。本年度は研究実施計画の初年度であったので、研究全体の準備期間に当て、研究内容の打合せと各研究者の作業分担の決定に重点を置きつつ、各研究者が上記目的の達成に向けた作業に従事した。研究実績の具体的概要は以下の通り。
ア)『夷堅志』の史料性解明:各研究者に逸話を2話づつ割り当て、史的研究活用に資するための分析作業を実施した。分析に不可欠な比較・照合用の史料については、各研究者が、各大学等機関で蒐集・複写した他、「中国前近代史関係図書」を新規購入して作業を進めた。
イ)『夷堅志』の後世への受容の実態解明:国内の複数の大学等機関にて、『夷堅志』各版本の所在と内容の調査・分析を、主として熊本崇、渡辺健哉、高橋亨が行った。
ウ)現代的意義を有する史的研究成果の呈示と全容解明に向けた取り組み:上記ア)の作業と連動させ、各研究者が各逸話の訳注稿を作成する作業と、キーワード抽出による一覧表作成作業に従事した。
エ)情報ツールの整備・公開:各研究者の上記の作業内容を検討し、個々の成果を精緻化するために、研究打合せの全体会議を日本大学と東京大学で開催した
オ)国際共同研究プロジェクトの構築:洪性珉が韓国における『夷堅志』研究の動向を調査し、研究文献目録を作成した。