地球温暖化への対策としてCO2排出削減を行うためにはさらなる高炉セメントなどの混合セメントの利用拡大が必要である。しかしながら高炉セメントを使用したコンクリートの場合には普通ポルトランドセメントを使用する場合より長い養生を必要とする。そのため高炉セメントを積極的に使用するためには初期強度発現の改善が必要である。そこで本研究では高炉スラグ微粉末の反応性に及ぼす各種無機塩の影響を明らかにすることを目的とした。その結果、無機塩を混和した場合、高炉スラグ微粉末─水酸化カルシウム固化体において初期材齢から強度増進が見られ高炉スラグ微粉末の反応が促進することを明らかにした。特にアルミネート系の水和物が異なること、Si鎖の重合が異なることを固体NMR測定によって確認した。'
北海道などの寒冷地においては冬季にコンクリートを打設する際には適切な養生を行う必要がある。しかしながら高炉セメントを使用した場合には普通ポルトランドセメントを使用する場合より長い養生を必要とする。そのため高炉セメントを積極的に使用するためには初期強度発現の改善が必要である。そこで本研究では高炉スラグ微粉末の反応性に及ぼす各種硬化促進剤の影響を明らかにすることを目的とした。その結果、亜硝酸系の硬化促進剤を用いた場合、高炉スラグ─水酸化カルシウム固化体において初期材齢から強度増進が見られ高炉スラグの反応が促進していることが明らかとなった。また、水和物として亜硝酸型のモノサルフェートが生成されていることを確認した。
セメント製造時のCO2排出量削減のため高炉セメントの利用が推進されているが、寒冷地において初期強度の低下やスケーリング劣化が懸念される。硬化促進剤や凍害抑制剤を混和することにより対策可能であるが、それらの併用によって初期強度発現が抑制されないか検討がなされていない。また、硬化促進剤及び凍害抑制剤が高炉スラグの反応に及ぼす影響は明らかでない。そこで本研究では、硬化促進剤や凍害抑制剤を混和させたセメント硬化体に対して強度試験や相組成分析を行い、高炉セメント硬化体の強度発現メカニズムを解明した。その結果、硬化促進剤によりC3S、C3A反応率が上昇し、凍害抑制剤はその反応を阻害しないことを明らかにした。
高炉セメントの利用や寒冷地における凍結融解抵抗性増進を目的としたAE剤の利用によって、コンクリートの初期強度が低下する。これを補うためにポリオール系と硫酸塩系を併用した併用型硬化促進剤が開発されており、高い硬化促進効果が得られている。しかしながらその硬化促進メカニズムは詳細には明らかにされていない。本研究では、併用型硬化促進剤混和による高炉セメント硬化体の初期強度発現メカニズムの解明を試みた。その結果、ポリオール系と硫酸塩系を併用することによりアルミネート相の水和反応が促進すること、併用型硬化促進剤が水酸化カルシウムを溶解し、高炉スラグ微粉末の反応を促進させる可能性があることを明らかにした。
サーモポロメトリーは空隙内部の水の凍結融解時に発生する熱量からセメント硬化体の空隙量を推定するものであり、著者らは少量の試料によって測定を行ってきたが本研究ではバルク試料に対してサーモポロメトリーの適用を行った。その結果、少量のサンプルでは測定できていなかったピークを検出でき、高炉スラグ混和による空隙の小径化を明らかにすることができた。また、塩化物イオンの拡散や電気伝導率に及ぼす空隙構造の影響は、サーモポロメトリーの凍結過程における-30℃までに凍結する水量と相関があることが示され、特に塩化物イオンの拡散係数とは非常に高い相関関係を示した。
The purpose of this study is to determine the tortuosity of cementitious materials containing blast furnace slag (BFS). Furthermore, the influence of tortuosity on multi-species transport into these materials is studied. The porosity and diffusivity of calcium silicate hydrate (C-S-H) were predicted using a three-dimensional spatial distribution model, which were then fitted to Archie's law to determine tortuosity. The tortuosity increased with the slag replacement ratio, suggesting that the diffusion path for ions becomes complicated and lengthy due to slag addition. Thermoporometry was used to determine the pore size distribution of hydrated slag-blended cement. A partial replacement of ordinary Portland cement (OPC) with BFS modified the mineralogy (especially in the types of C-S-H), resulting in changes to the pore structure. The determined tortuosity and porosity were used in a reactive transport model to predict multi-species transport. Experimentally measured and simulated chloride profiles were in good agreement for hydrated OPC and slag-blended cements exposed to sodium chloride solutions. The causes for the low penetration rate of chloride in slag-blended cementitious materials are discussed considering their pore structure and surface electrical properties. The role of tortuosity on Cl-/OH- for the evaluation of chloride induced corrosion was also discussed.
既存コンクリート建造物の劣化状況を把握するために、空隙構造を正確に測定することが求められているが、その測定手法としてサーモポロメトリー法が提案されている。そこで、本研究ではフライアッシュセメント硬化体にサーモポロメトリー法を適用し、圧縮強度などの物性を予測できるかを検討した。その結果、圧縮強度と超音波速度はサーモポロメトリー法を用いて算出した総空隙量から推定できるが、電気伝導率と塩化物イオンの拡散については凍結過程において検出される-15℃付近の空隙量によって推定できることを明らかにした。'
放射性廃棄物処理の充填材としてセメント硬化体の利用が検討されているが、地下環境においてはセメント硬化体のカルシウムが溶脱しその吸着性能の低下に伴い拡散性が変化することが想定される。フライアッシュを用いた混合セメントの利用が考えられるが、溶脱後の吸着量に関しての検討が少ない。本研究では硝酸アンモニウム水溶液を用いた浸漬法によってカルシウム溶脱を促進させたフライアッシュセメント硬化体に対して、塩化物イオン吸着量の定量と既往の吸着量予測式を基に吸着量予測式の構築を試み、Ca/Si比の減少およびAl/Si比の増加に応じた吸着量低下を表現することができた。
コンクリートの耐久性は、その物質透過性能に大きく依存しているため物質透過性能を適切に評価することが必要である。物質透過性を評価する手法として透水試験や透気試験、電気泳動試験などがあげられるが簡便に測定できる手法として交流インピーダンス法による電気伝導率測定があげられる。そこで本研究では、本手法がフライアッシュを混和したセメントペーストにも適用可能かを検討した。その結果、拡散性に及ぼす空隙率の影響はフライアッシュ混和量によって異なる関係を示したが、電気伝導性と塩化物イオンの拡散性には非常によい相関が見られた。したがって電気伝導性を測定することによってフライアッシュを混和したセメント硬化体の物質透過性能を評価することが可能であることを示した。