日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 2002年 -2004年
代表者 : 山下 博, 山口 佳三, 齋藤 睦, 澁川 陽一, 和地 輝仁
本課題研究は,無限次元半単純リー代数(群)や量子群に対して,有限次元群の場合の既約許容表現,すなわちハリシュ-チャンドラ加群に相当する新しい表現の族を構成・分類するために,「代数的量子化」の理論が無限次元の場合にいかに展開できるか,その可能性を探ること主目標としている.今年度は,昨年度に行った試行的研究を推し進め,代数的ディラク作用素及びディラクコホモロジーを用いて,共役類の量子化と許容表現の構成を検討した.また,リー代数の作用に関する不変式論,トーリック多様体上の微分作用素環,量子群の研究を併せて行った.その研究経過と得られた知見について,以下に報告する.
研究代表者山下は,A型のリー代数に対して,簡約あるいはべき零な部分リー代数から定まるディラク作用素の構成とコホモロジー空間の構造を検討した.その過程で,表現論国際会議(平成16年8月開催,於新疆大学)に参加し,有限次元の場合の専門家であるJing-Song Huang(香港科技大)およびPavle Pandzic(Zagreb大)と研究打合せを重点的に行った.無限次元リー代数に理論が拡張できる部分と障害となる部分が明らかになり,今後研究を発展させるために重要な手がかりが得られたと考えている.また,ディラク作用素と基盤研究(B)(課題番号14340001)で実施中の離散系列に対する等方表現との間の関係を調べた.研究分担者和地は,対称対に関する不変微分作用素を定める普遍包絡代数の元の研究を行い,デュアルペアと関わる明示的公式を得た.
無限次元リー代数の表現の研究に資するため,研究分担者齋藤は,アフィン半群環上の微分作用素環やA-超幾何系において基本的な加群の圏Oを扱い,各々の圏Oにおいてヴァーマ的対象や単純対象と,それらの間の基本的な関手について考察した.研究分担者澁川は,力学的ヤン・バクスター方程式の集合論的解を構成した.