清水 香基(シミズ コウキ) |
文学研究院 人間科学部門 社会学分野 |
助教 |
本研究は、生活目標、理想の家庭、理想のワーク・レジャーバランスといった観点から、日本人の「夢」に焦点を当てつつ彼らの価値観変容を検討する。経済発展を文化や基底的な価値観の形成を突き動かす動力として捉えるならば、第二次世界大戦以降浮き沈みを経験してきた日本経済の力学にともない、日本人の価値志向においてもまた変化の過程があったと考えられよう。1973 年から2008 年にかけてNHK が実施してきた「日本人の意識調査」を用いて分析を行ったところ、高度経済成長期に主流とされていた中流階級の夢から、若いコウホートが徐々に解放されつつあるという傾向が認められた。簡略にまとめるならば、①生活目標については、計画をたてて豊かな生活を築くことや、世の中をよくするといった志向性が後退しつつある一方、自由に楽しく過ごしたり身近な人たちとなごやかな毎日を送るといった志向性が台頭しつつある。②仕事へと置かれていた重点が余暇に取って代わられつつある。③家父長的な夫婦関係や性別役割分業意識への支持が失われ、夫婦の自立や家庭内協力が支持を受けるようになった、という傾向が確認された。