鈴浦 秀勝 (スズウラ ヒデカツ)

工学研究院 応用物理学部門 量子物性工学分野教授

研究者基本情報

■ 学位
  • 博士(工学), 東京大学
■ URL
researchmap URLホームページURL■ ID 各種
研究者番号
  • 10282683
ORCID IDResearcher ID
  • F-7605-2012
J-Global ID■ 研究キーワード・分野
研究キーワード
  • カーボンナノチューブ
  • 電子・格子相互作用
  • 電気伝導
  • アンダーソン局在
  • スピン軌道相互作用
  • グラフェン
  • 励起子
  • 低次元電子系
  • 螺旋度
  • 磁気抵抗
  • グラファイト
  • 吸収スペクトル
  • 動的電気伝導率
  • フォノン
  • 発光スペクトル
  • ナノチューブ
  • スピンホール効果
  • 格子不安定性
  • 電気伝度
  • 微細構造分裂
  • 弱局在
  • 光学応答
  • アハラノフ-ボーム効果
  • 熱流体力学
  • 有効質量近似
  • 量子効果
  • 理論
  • 非線形伝導
  • 2次元グラファイト
  • 量子ホール効果
研究分野
  • 自然科学一般, 半導体、光物性、原子物理
■ 担当教育組織

経歴

■ 経歴
経歴
  • 2025年05月 - 現在
    北海道大学, 大学院工学研究院 応用物理学部門, 教授
  • 2003年04月 - 2025年04月
    北海道大学 工学(系)研究科(研究院), 准教授

研究活動情報

■ 論文
■ その他活動・業績
■ 主な担当授業
  • 凝縮系物理工学特論, 2024年, 修士課程, 工学院
  • 凝縮系物理工学特論, 2024年, 博士後期課程, 工学院
  • 統計力学Ⅰ, 2024年, 学士課程, 工学部
  • 統計力学Ⅱ, 2024年, 学士課程, 工学部
  • 統計力学演習Ⅰ, 2024年, 学士課程, 工学部
  • 統計力学演習Ⅱ, 2024年, 学士課程, 工学部
■ 共同研究・競争的資金等の研究課題
  • 太陽電池ペロブスカイトにおける励起子光学応答の理論的研究
    科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    2020年04月01日 - 2024年03月31日
    鈴浦 秀勝
    今年度は太陽電池ペロブスカイト材料における電子・格子相互作用に起因した励起子吸収スペクトルに対するクーロン相互作用遮蔽効果の理論解析を行った.励起子束縛の強さは電子と正孔のバンド構造から決まる有効質量と実効的な誘電率から定まる.換算質量は電子構造から値を決定できるのに対し,この物質系の誘電率は周波数に強く依存し,静的誘電率は可視光近傍の値と比較して10倍にも及び,束縛エネルギーに換算すれば100分の1となる.実験的にはその中間的な値になることが知られている.単一の周波数を持つアインシュタインフォノンによる電子と正孔の散乱を考慮して光学伝導率を計算することにより,励起子束縛エネルギーに対する動的遮蔽効果の影響を調べた.
    従来の計算ではアインシュタインフォノンによる現実的な誘電率変化では実験で観測される束縛エネルギーの縮小を説明できなかったため,今回は有効モデルとして誘電定数を任意に変化させ影響を調べた.その結果,静的誘電率がいかに大きくなろうとも,現実的なフォノン周波数を考える限り,単一モードのフォノン散乱で達成される遮蔽は不十分であることが明らかになった.静的遮蔽による定数誘電率模型であれば適当な値を設定可能なのに対し,動的効果を取り入れる遮蔽は制限を受けることになる.実際の物質では,極性分子の存在による配向分極が静的遮蔽を支配していると予想され,その方向のランダムネス等の効果を同時に考慮する必要があると考えられる.
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 20K03798
  • 原子層積層構造の空間反転対称性の制御によるスピン流の生成
    科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    2017年04月01日 - 2021年03月31日
    明楽 浩史; 鈴浦 秀勝; 江上 喜幸
    (1) DNAやオリゴペプチドなどの多くの螺旋状有機分子において観測されているスピン選択性に対する共通の機構を解明することを目的として、螺旋状原子鎖に対して電流誘起スピン偏極、電流誘起軌道角運動量偏極、螺旋状原子鎖スピンフィルターに対してスピン偏極電流の計算を行った。その結果、電流によって時間反転対称性が破れたときに発生する軌道角運動量偏極は原子鎖の曲率が小さい領域において曲率に比例することを明らかにし、電流誘起軌道角運動量偏極が曲率の存在が原因で生じること、曲率によって制御可能であることを示した。一方電流誘起スピン偏極は、曲率とスピン軌道相互作用(原子内LS結合)の両方が原因で生じることを明らかにした。スピンフィルター効果により発生するスピン偏極電流はこの電流誘起スピン偏極によって生じると考えられる。実際、螺旋状原子鎖の電流のスピン偏極率は曲率と原子内スピン軌道相互作用によって制御可能であることが明らかになった。この研究成果は有機分子のようにスピン軌道相互作用が小さい軽元素からなる物質でも曲率を大きくすることで十分大きいスピン流を生成することが可能であることを示唆している。
    (2) シリセンなどのIV族元素からなる原子層に垂直に電場を加えて空間反転対称性を破った系について、電流誘起スピン偏極を強束縛モデルにより計算した。強束縛モデルのパラメタは第一原理計算により決定した。電流誘起スピン偏極はフェルミエネルギーを変えることで符号を反転することを見出した。
    (3) 逆向きの有効磁場が生じる二重量子井戸においてスピン緩和への井戸間トンネル遷移の影響をDyakonov-Perel機構のスピン緩和について調べ、スピン緩和率が井戸間トンネル遷移強度とともに減少すること、すわわち井戸間トンネル遷移がスピン緩和を抑制することを明らかにした。
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 17K05484
  • 遷移金属カルコゲナイド層状物質における励起子光学応答の理論的研究
    科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    2016年04月01日 - 2020年03月31日
    鈴浦 秀勝
    遷移金属カルコゲナイド層状物質の励起子光学応答における相互作用効果の理論的解明に取り組んだ.一番大きな進展として,励起子束縛エネルギーに対する動的遮蔽効果を定量的に評価する方法を確立したことがあげられる.層状物質を誘電体で挟み環境誘電率を変化させ相互作用を変調することにより共鳴エネルギーの制御が可能になると期待される.有機溶媒など巨大な静的誘電率を示す物質により電子・正孔間相互作用を遮蔽し励起子束縛エネルギーを縮小する提案がなされていたが,動的遮蔽効果を考慮すると有機溶媒のような配向分極を起源とした遮蔽効果は巨大な束縛エネルギーを持つ物質系では無視できることを明らかにした.
    相互作用遮蔽を微視的に記述する模型として格子振動による遮蔽に着目し.励起子吸収スペクトルに対する電子・格子相互作用効果を明らかにした,格子振動が励起子束縛エネルギーを縮小するだけでなく電子との散乱によりバンドギャップを変化させることが重要で,励起子共鳴エネルギー変化に対する大きさは後者のほうが大きいことを明らかにした.
    動的遮蔽の考察から励起子共鳴エネルギーの制御は半導体基板物質を置き換えることで実現可能であることになる.基板物質による遮蔽は電子・正孔間相互作用のみならず,電子間相互作用に起因した自己エネルギーを抑制する.つまり,励起子束縛エネルギーの減少と自己エネルギーの抑制によるバンドギャップの縮小が競合する.自己エネルギーをハートリー・フォック近似で計算した範囲では,基板誘電率を増大させると励起子共鳴エネルギーは低エネルギー側にシフトすることを示した.
    光学素子への応用を念頭に,非線形光学効果として2光子吸収に着目し,励起子効果により増強されることを明らかにした.巨大な束縛エネルギーを持つ遷移金属ダイカルコゲナイド物質では非線形光学効果も大きく増強されると期待される.
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 16K05391
  • 固体ディラック電子系における非線形電場応答の理論
    科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    2013年04月01日 - 2016年03月31日
    鈴浦 秀勝
    固体ディラック電子系の電磁応答は電子状態の特異性を色濃く反映する.その光学応答や輸送現象の特異的振る舞いの外部電場印加による先鋭化を理論的に試みた.カーボンナノチューブの巨大な振動子強度を持つ励起子吸収は外部電場により赤方遷移すること,グラフェンナノリボンに特徴的な端状態による静電遮蔽は電界効果電荷注入により大きく変調すること,2次元トポロジカル絶縁体の電流誘起スピン空間分布が電極配置に強く依存して変化すること,などを明らかにした.
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 研究代表者, 競争的資金, 25400313
  • 半導体における動的相関電子系の光科学
    科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    2008年11月13日 - 2014年03月31日
    五神 真; 秋山 英文; 金光 義彦; 小川 哲生; 田中 耕一郎; 井元 信之; 野村 晋太郎; 芦田 昌明; 浅野 健一; 鈴浦 秀勝; 榊 裕之; 十倉 好紀; 北川 宏; 湯本 潤司
    本新学術領域研究では、最先端のレーザー分光技術、量子多体物理学を捉えてその双方を存分に活用しつつ、物質の未利用な光効果・現象を探求し、 その活用に向けた新たな道筋をつけることを目的とした。光と物質の関わりについて新たな視点で見直すために、特に物質の励起状態に生じる多数の電子間の相互作用や、量子力学的位相相関に注目し探求した。これを動的相関電子系-DYCE (DYnamically Correlated Electrons) という中心的コンセプトとして世界に先駆けて掲げ、異分野の研究者の連携による新しい融合学術を創り出すための組織的研究を行うことができた。
    今年度の研究成果の取りまとめとして、活動情報整理、自己評価、国内外の領域外部有識者による外部評価、国内外の研究者コミュニティーへの研究成果の発信、社会・国民に向けた成果の発信を行い、報告会等で情報を集約・整理して冊子体の資料として作成した。これにより、平成25 年9 月10 日に行なわれた事後評価では、最高評価である「A+」の評価を頂くことができた。事後評価所見の中で、「光と物質を同等に扱うという新しい視点に立ち、それぞれが強く相互作用する中で散逸効果を取り入れるという困難な問題に、初めて系統的に取り組んだ野心的な領域」であり「それぞれ世界的に第一級の成果をあげただけでなく、異種分野の研究者が機能的に連携して予想以上の成果が得られたことは、特筆に値する」との高い評価を受けた。
    また、平成24年4月に引き続き、国内と国外、特に光産業において近年非常に勢いがあるアジア地域からの有識者を集めた「第2回DYCE- ASIAワークショップ」の開催を平成25年12月に開催し、有意義な議論の場を通じて、海外へも「DYCE=動的相関電子系」という標語の知名度が益々高まって来たことを確信することができた。
    日本学術振興会, 新学術領域研究(研究領域提案型), 東京大学, 連携研究者, 競争的資金, 20104001
  • カーボンナノ構造における動的電子相関と光学応答
    科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    2008年 - 2012年
    鈴浦 秀勝
    炭素原子で構成される低次元物質であるカーボンナノチューブ・グラフェンの光学特性を理論的に評価し,既存の化合物半導体との比較を行った.一次元系のナノチューブの場合,一次元性をより強く反映して電荷間の相互作用効果が増強され,環境や外場による制御性が高いと期待される.二次元系に対しては,物質定数に依存しない普遍物理定数のみで表される光吸収係数が,グラフェンのみならず,半導体量子井戸のバンド間遷移吸収にも適用可能である事を明らかにした.
    日本学術振興会, 新学術領域研究(研究領域提案型), 北海道大学, 研究代表者, 競争的資金, 20104009
  • 特異な電子状態に起因する量子輸送現象の理論的研究
    科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    2008年 - 2010年
    鈴浦 秀勝
    スピン軌道相互作用を有する半導体やグラフェンなどで実現する,有効質量がゼロの特異な伝導電子が示す電気伝導の量子効果を理論的に評価した.任意の不純物密度における数値計算の結果から,電極を付けた2次元半導体において有限のスピンホールコンダクタンスが残る事,グラフェンにおいて散乱が弱い場合は質量ゼロのディラック電子の特徴が見られるのに対して,散乱が強い場合は通常の2次元電子系と同様のアンダーソン局在が起きる事を,それぞれ,明らかにした.
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 研究代表者, 競争的資金, 20540307
  • カーボンナノチューブにおける電子状態制御と量子輸送現象の理論
    科学研究費助成事業 若手研究(B)
    2005年 - 2007年
    鈴浦 秀勝
    カーボンナノチューブの不純物散乱に起因する磁気伝導度を強束縛模型に基づき数値的に計算した.常に金属であるアームチェア型と金属と半導体のどちらかの伝導性を示すジグザグ型について調べた結果,金属と半導体で結果を分類できるとした研究計画時の予想とは異なり,アームチェアとジグザグという型による分類が可能であることが明らかになった.
    磁場がチューブ軸と平行な場合,常に金属となるアームチェアナノチューブに対しては磁場を増大することにより伝導率が低下,つまり,正の磁気抵抗が得られた.これは,ゼロ磁場において不純物ポテンシャルによる後方散乱が抑制される機構が破れることによる.対照的に,金属ジグザグナノチューブでは10テスラ程度の強磁場であっても伝導率は増大し,負の磁気抵抗を得る.このチューブの構造に依存した振る舞いは有効質量方程式によれば電子のエネルギー分散の異方性を与える高次の補正項により説明される.その補正項はアームチェア型の場合には先に述べた後方散乱抑制機構に影響を与えないが,ジグザグ型では,小さいながらも,散乱を生む原因となる.軸に平行な磁場はこの補正項を相殺し,散乱を減少させることで負の磁気抵抗を生じる.半導体ジグザグチューブの場合も同様に,エネルギーギャップを生む有効磁束と印加した磁束が相殺することで負の磁気抵抗が実現する.磁場がチューブ軸と直交する時はアームチェア・ジグザグのどちらの場合も伝導率は減少し,正の磁気抵抗が得られた.これはランダウ準位の形成過程で分散が平坦化し,電子の群速度が低下することが原因と考えられる.
    以上の結論から,カーボンナノチューブの磁気伝導はその構造,つまり,電子状態の構造に依存する高次補正項により多彩な振る舞いを示すことが明らかとなり,通常の電子系で期待される普遍的な振る舞いが実験で得られない事実を説明する理論となりうる.
    日本学術振興会, 若手研究(B), 北海道大学, 研究代表者, 競争的資金, 17740184
  • 量子ホール系の熱流体力学
    科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    2004年 - 2007年
    明楽 浩史; 鈴浦 秀勝
    1.量子ホール系の熱流体力学理論を局所平衡仮定のもとで非線形領域も含めて構築した。この理論では、電子温度と電気化学ポテンシャルの時空間変動を電子数保存則とエネルギー保存則の方程式で記述する。この理論を適用することにより、下記のそれぞれの系における電子温度と電気化学ポテンシャルの空間変動を計算した。
    2.圧縮性・非圧縮性帯領域をもつ量子ホール系における電子温度分布と電流分布
    電流に垂直の方向の電子温度分布と電流分布を、閉じこめポテンシャルが緩やかに空間変動し圧縮性・非圧縮性帯領域をもつ場合について、線形領域および非線形領域で計算した。熱流体力学の電子数保存およびエネルギー保存の方程式とポアッソン方程式を連立することにより閉じこめポテンシャルをセルフコンシステントに計算し、次のことを明らかにした。(1)線形応答領域では、格子温度が低い場合電子温度の空間変動が非圧縮性帯領域に集中する。電子温度分布は反対称性をもち、電子温度のピークおよびディップが現れる。(2)この線形応答領域での反対称分布を反映して、量子ホール効果のブレークダウン近傍の非線形領域において電流分布の非対称性が顕著になる。
    3.量子ホール系と電流電極の接合部分における電子温度分布とホットスポット
    電流電極の近傍における電子温度の空間変動を線形および非線形領域において計算した。高電流領域では両方の電流電極の近傍に電子温度のピーク(ホットスポット)が現れるが、低電流領域では一方では電子温度が高く他方では低くなることを見いだした。
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 連携研究者, 競争的資金, 16540278
  • カーボンナノチューブにおける量子輸送現象
    科学研究費助成事業 奨励研究(A)
    2000年 - 2001年
    鈴浦 秀勝
    カーボンナノチューブの母体となる物質であるグラファイト平面における弱局在効果に関する研究を行った.ナノチューブの場合に習い,谷間散乱を生じる短距相互作用する不純物と,谷内散乱のみを生じる長距離相互作用する不純物という2種類の散乱体を考慮し,久保公式を用いて電気伝導率の計算を解析的に実行した.古典的伝度率に対する量子補正としていわゆる最大交差図形とよばれるダイヤグラムにより表される項を足し合わせた結果,2次元系特有の対数発散する寄与が得られたが,2種類のポテンシャルで符合が異なった.短距離不純物に対しては,系の対称性から予想されるとおり,負の寄与となり通常の弱局在を示す.他方,長距離不純物による散乱では正の寄与となり,反局在を示す.これまで,反局在を示す系はスピン軌道相互作用が散乱に寄与する場合に議論された以外に例が無く非常に興味深い結果である.今後は,対称性による観点からユニバーサリティについて議論しその詳細を明らかにしていくことが必要である.
    前年度に得た電子格子相互作用の有効模型により格子不安定性の議論を行った.電子系の全エネルギーの解析的表式を導き,微小格子変形に対する依存性が強束縛模型から得られる結果と良く一致することを示した.格子不安定性は確かに存在するが,生じる自発的変形は周長に関して指数関数的に減衰するため非常に小さなチューブを除いては実質的に無視できるという,既存の結果と符合する結論となった.しかし,軸に平行な磁場はその不安定性を増大すること,一様な伸縮,ねじれなどが電子と結合しているため外的応力により電子状態を制御可能であることを新たに明らかにした.
    日本学術振興会, 奨励研究(A), 東京大学, 研究代表者, 競争的資金, 12740173
  • カーボンナノチューブの磁場効果と量子効果
    科学研究費助成事業 特定領域研究(A)
    1999年 - 2000年
    安藤 恒也; 鈴浦 秀勝
    ナノチューブは通常の量子細線とはトポロジカルに異なっており,そこでの電子は自由電子とは非常に異なった運動をする.その結果ナノチューブはこれまでの物質にはない全く新しい性質を示す.この特徴は有効質量近似で扱うことによりはっきりする.この研究の目的は,主にこの有効質量近似をもとにナノチューブの量子効果について研究することである.この研究で明らかにしたい問題は以下のようにまとめられる.
    (1)有効質量近似においては,通常の散乱体のポテンシャルは行列の対角成分として表現されが,その場合,金属的なナノチューブでは散乱が全く生じない.散乱体の種類によりこれがどのように変化するかを明らかにする必要がある.
    (2)ナノチューブは円筒形の2次元グラファイトであり,磁場の方向により輸送現象への影響が大きく異なる.軸方向の磁場の場合,アハラノフ-ボーム効果により電子状態が大きく変化し,垂直な場合,円筒表面に沿って電子はサイクロトロン運動を行う.
    (3)5員環や7員環などトポロジカルな欠陥により構造の異なるナノチューブが接合できる.欠陥の周りを一周すると,K点とK'点の波動関数の2成分が互いに入れ替わる.この境界条件はナノチューブ接合系の電子状態や電気伝導に大きな効果を及ぼす.
    これらの問題について,本年度は以下のような理論的研究を進めた.[1]有効質量近似のWeylの方程式をもとに,磁場中で格子欠陥の散乱問題を解析的に解き,コンダクタンスを計算した.[2]磁場中での接合系を有効質量近似で考察し,コンダクタンスが磁場に依存しないことを示した.[3]長波長で正しい格子振動の模型を確立し,電気抵抗の温度変化を計算し,大きな磁気抵抗効果の存在を予言した.また,長波長フォノンによる格子不安定性の可能性を指摘した.[4]ナノチューブの先端部での電子波の反射の位相を計算し,先端部に局在した状態の存在を示し,有限長のナノチューブのエネルギー準位を求めた.
    日本学術振興会, 特定領域研究(A), 東京大学, 連携研究者, 競争的資金, 11165211