岸田 治 (キシダ オサム)

北方生物圏フィールド科学センター 森林圏ステーション 和歌山研究林教授
Last Updated :2025/11/06

■研究者基本情報

学位

  • 博士(水産科学), 北海道大学

Researchmap個人ページ

研究キーワード

  • アズマヒキガエル
  • 外来種
  • 誘導防御
  • 表現型可塑性
  • 誘導攻撃
  • 間接効果
  • 生態系機能
  • 形態変化
  • エゾサンショウウオ
  • 適応
  • 捕食
  • 相互作用
  • エゾアカガエル
  • 両生類
  • 栄養カスケード
  • メソコスム
  • 遺伝学
  • 動物
  • 生態学
  • 個体群生態学
  • 群集生態学
  • 行動生態学
  • 進化生態学
  • Community Ecology
  • Evolutionary Ecology

研究分野

  • ライフサイエンス, 生態学、環境学

担当教育組織

■経歴

経歴

  • 2024年11月 - 現在
    北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター 森林圏ステーション, 教授
  • 2012年11月 - 2024年10月
    北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授
  • 2009年04月 - 2012年10月
    北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教

■研究活動情報

受賞

  • 2009年, 第13回 日本生態学会宮地賞               
    日本国

論文

その他活動・業績

書籍等出版物

  • 多種系における表現型可塑性(分担執筆) シリーズ群集生態学2 進化生物学からせまる               
    京都大学学術出版会, 2009年

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 野生生物における種分化の生態遺伝機構
    科学研究費助成事業
    2022年04月27日 - 2027年03月31日
    北野 潤, 岸田 治, 石川 麻乃, 山崎 曜, 山道 真人
    日本学術振興会, 基盤研究(S), 国立遺伝学研究所, 22H04983
  • 適応戦術としての動物の移動:河川性サケ科魚類の大規模モニタリングによる検証
    科学研究費助成事業
    2022年04月01日 - 2026年03月31日
    岸田 治
    4月,7月,10月に幌内川の上流域5.3kmの調査区間において採捕調査を行い,個体にPITタグを装着した. 持ち運び式のPITタグアンテナを用いて調査区間内を毎月1度以上踏査し,個体位置の把握をした.魚の広域移動は河川6箇所に設置した個体式のアンテナで常時モニタリングした.以上の調査から得られたデータに加え以前から蓄積してきたデータをあわせて解析し、以下の研究を実施した
    研究① 移動の同調性のパターン解析:サケ科魚類を対象とし、個体の移動パターンを分析した.サクラマスでは繁殖時期に移動が盛んになるが,それは成熟個体のみならず未成熟の個体においてもみられることが明らかとなった.未成熟個体は卵を食うためか,成熟個体の移動に伴うハビタット内の個体間競争の変化に応答して移動をした可能性がある。
    研究② 倒木によるハビタット形成後の移動様式の探索:本年度は予備実験を行った。幌内川中流に倒木を設置し,淵ができる過程を観測しつつ,魚類の定着を確認した。この結果をもとに次年度に大規模な実験を展開する。
    研究③移動の日周性の分析:サクラマスでは夕方と朝方に毎日移動をしている個体が一定数おり、昼間の生息場所と夜間の生息場所を変えている可能性が示唆された。
    研究④サクラマスのハビタット変更:サクラマスでは繁殖時期に河川内を盛んに移動し,それをきっかけとしてハビタットを変える場合が多いことがわかっているが,ハビタットを帰る際,どのようなハビタットに入植するのかを調べたところ,繁殖期以前に,自分と同じか大きいサイズの個体が抜けた空間に新しく定着することがわかり,河川スケールでの個体の入れ替わりが生じていることが示唆された.
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 23K23957
  • 適応戦術としての動物の移動:河川性サケ科魚類の大規模モニタリングによる検証
    科学研究費助成事業
    2022年04月01日 - 2026年03月31日
    岸田 治
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 22H02694
  • 閉鎖系に棲む動物の被食回避行動:両生類幼生をモデルとした実験生態学
    科学研究費助成事業
    2022年06月16日 - 2024年03月31日
    岸田 治
    本年度は以下の4つの研究に取り組んだ。
    ①個体の動きが食う‐食われるの関係を生む:個体は他個体が近づいたときに逃避する.逃避によって,一時的に危険から逃れられるが,逃げた先で他個体と遭遇し,新たな動きや,食う-食われるの関係が発生する可能性がある。この仮説を同種他個体や他種の存在を操作した実験で検証した。逃避と他個体との遭遇は、操作上、加えた種によって異なっていることが明らかになり、特に活発に動き回る種ほど効果が大きい傾向が見られた。
    ②大きな餌を食うことのコスト:「捕食者が大きな餌を捕食する際、サイズと抵抗の大きさからハンドリングが難しいため、捕食中の動作が大きくなることで、上位の捕食者から襲われる確率が高くなる」という仮説をエゾサンショウウオを用いた操作実験で実証した。
    ③シカの移動経路と両生類幼生の産卵生態 シカが頻繁に通る経路(シカ道)は踏み固められたり掘削されることで,水が溜まりやすい.このような水場は,水生動物の生息場所となる可能性がある.本研究では,釧路湿原のキタサンショウウオを対象にエゾシカのシカ道の利用状況をフィールドでの調査により明らかにした。その結果、我々の調査地域では、95%の卵がシカ道に産み付けられていることがわかり、同種の産卵場所としてのシカ道への依存性が強いことが明らかとなった。
    ④捕食者誘導型の形態における逃避強化メカニズムの解明:捕食者がいない場合といる場合とで形態を可塑的に変化させる動物は多い.本研究では、エゾアカガエル幼生を対象として逃避行動誘発実験を行い、撮影した動画の解析により、捕食者誘導型の表現型が一度の遊泳動作による加速度が大きいことを明らかにし、形態と行動のメカ二スティックな関係を実証した。
    日本学術振興会, 学術変革領域研究(A), 北海道大学, 22H05644
  • 河川性魚類の行動と生活史の統合戦略:PITタグシステムを駆使した探索的研究
    科学研究費助成事業
    2020年07月30日 - 2022年03月31日
    岸田 治, 森田 健太郎
    動物個体の移動は,動物の生き様や生態を研究するうえで不可欠である. 本研究では,移動中の動物はいかなる死亡圧にさらされているのか,死亡圧を逃れるためにどのような行動や生活史の戦術があるのかについて, PITタグを用いたサクラマスの個体追跡研究により探索的に調べた. その結果,降海型サクラマスは降河中に下流で小さな個体ほど死にやすいサイズ依存の死亡圧にさらされることが明らかになるとともに,河川下流や海洋でのサイズ依存の死亡圧から逃れるための戦術として,降海型では小さな個体ほど冬季の成長が良く,降河が遅いことで,より大きなサイズになってから川を下ることが明らかとなった.
    日本学術振興会, 挑戦的研究(萌芽), 北海道大学, 20K21439
  • サイズダイナミクスの生態学               
    科学研究費補助金(基盤研究(B))
    2017年04月 - 2022年03月
    岸田 治
    文部科学省, 研究代表者, 競争的資金
  • 北海道に侵入したアズマヒキガエルが水域の生物 群集に与える影響               
    旭硝子財団研究助成近藤グラント
    2017年04月 - 2020年03月
    岸田 治
    旭硝子財団, 研究代表者, 競争的資金
  • 北海道に侵入した強毒性ヒキガエルのインパクト               
    三井物産環境基金
    2017年04月 - 2020年03月
    岸田 治
    三井物産, 研究代表者, 競争的資金
  • 複合生態系における寄生者感染動態と群集動態の関係の統合理解
    科学研究費助成事業
    2015年04月01日 - 2018年03月31日
    佐藤 拓哉, 渡辺 勝敏, 徳地 直子, 舘野 隆之輔, 金岩 稔, 瀧本 岳, 日浦 勉, 岸田 治, 内海 俊介
    寄生者介在型のエネルギー流 (PMEF, Parasite-Mediated Energy Flow) の時間変動性に注目して、PMEFが異なる時間スケールでどのように群集動態に影響を及ぼし、寄生者自身の感染動態にフィードバックするかを実証と理論を統合したアプローチで検証した。地域に応じたハリガネムシ類の種多様性と宿主利用の多様性に依存して、PMEFの時間変動性が規定されていた。野外実験と数理モデルから、PMEFの時間変化に対するサケ科魚類の応答の個体間変異が、群集動態を規定する重要な要因になることが確かめられた。生態系間の季節的な相互作用が群集の形成過程に重要な役割を果たすことが示された。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 神戸大学, 15H04422
  • 水生動物がアミノ酸を飲む -見落とされていた窒素循環プロセスの解明-
    科学研究費助成事業
    2014年04月01日 - 2016年03月31日
    岸田 治, 小林 真
    本研究の目的は、「水生動物が溶存アミノ酸をエネルギーとして利用する可能性」を孵化直後のエゾサンショウウオ幼生を用いて示すことである。実験の結果、アミノ酸を添加した環境水で飼育したエゾサンショウウオ幼生は、アミノ酸由来の窒素を体内に取り込み、成長を促進させることが分かった。細菌などの微生物が溶存アミノ酸を直接利用し増殖することは一般に認知されているが、脊椎動物による溶存アミノ酸の利用はこれまで想定されてこなかった。本研究の成果は、「これまでの慣習的な栄養伝達経路の有り様」の変更を促すものである。
    日本学術振興会, 挑戦的萌芽研究, 北海道大学, 26650152
  • 表現型可塑性:生態学と分子発生学の統合的研究
    科学研究費助成事業
    2011年04月01日 - 2016年03月31日
    西村 欣也, 三浦 徹, 岸田 治, 道前 洋史, 北野 准
    北海道の固有種であるエゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の幼生は、捕食者生物、餌生物、同種幼生の存在に呼応して生態学的機能を有する表現型可塑性を示す。そのため、進化生態学、発生生物学を融合する研究の優れたモデル生物である。
    本研究では、エゾサンショウウオ幼生が捕食者生物存在下、餌生物存在下で可塑的に発現される形態変化について、幾何学的形態解析法を用いて定量的に明らかにし、その分子発生学的メカニズムを調べる出発点として形態変化と関連するゲノム情報の探索を行った。さらに、生息域全域を網羅する5地域集団間で、表現型可塑性に伴う形態変化の反応規範と、遺伝マーカーの変異を調べた。
    日本学術振興会, 基盤研究(A), 北海道大学, 23247004
  • 適応的な表現型可塑性間の環境依存的な配分に関する研究
    科学研究費助成事業
    2011年 - 2013年
    道前 洋史, 岸田 治
    理論的研究では最適な表現型が環境で異なる(トレードオフの関係がある)とき、すなわち表現型の発現や維持に環境特異的なコストがかかるからこそ必要なときにしか発現しない戦略、表現型可塑性が進化することを示してきた。ところが実証的研究では充分にこの理論は確かめられていない。本研究では表現型のベネフィットやコストを多様な環境で検証することが可塑性の進化の理解に欠かせないことを示した。
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北里大学, 23570036
  • 同所的種内変異が生み出す相互作用と群集レベルの効果
    科学研究費補助金(基盤研究(B))
    2012年 - 2012年
    岸田 治
    同じ種であっても個体によって、生活史や形、行動など様々な形質に違いが見られる。本研究では、同所的にいる同種個体の形質の違いが群集レベルでどのような意味を持つのかについて、両生類を中心とする池の群集をモデルとして、実験的に探索した。捕食者種の形質変異の効果として、ふ化タイミングやサイズの個体間変異が大きいと、共食いが生じサイズ変異が拡大することで、種間相互作用の構造が大きく変わることが分かった。被食者種においても、サイズが異なる同種個体同士が捕食者を介して間接的に関係しあうことが示された。一連の効果は群集の機能と動態に強く影響することから、生態学において形質変異を考慮することの意義が示された。
    文部科学省, 基盤研究(B), 北海道大学, 研究代表者, 競争的資金, 24370004
  • エゾヤチネズミ個体群の遺伝的空間構造形成に関わる個体数変動と分散行動の効果
    科学研究費補助金(基盤研究(B))
    2010年 - 2012年
    齊藤 隆, 石橋 靖幸, 岸田 治
    (a)個体群の周期変動と遺伝的距離の関係:石狩湾沿いにある連続した森林にさまざま距離間隔で8調査プロット(0.5ha)を設置し,エゾヤチネズミの標識-再捕獲調査を実施した.プロット間の距離は50-2000mで,さまざま距離間隔で個体群間の遺伝的距離と地理的な距離の関係,個体の分散行動を分析することができる.個体数が石狩地方よりも数倍大きく変動する根室市で石狩地方と類似の調査を行った.捕獲個体数は石狩で約300頭、根室で約500頭に達し,現在DNAを分析している.(b)大きなスケールの個体群構造解析:前課題で収集したエゾヤチネズミのサンプル(1360個体)のmtDNAの分析をほぼ終了し,現在,沿海州のサンプルを含めて地理系統学的な解析を行っている.(c)石狩湾個体群の解析結果:2009年の予備調査で採取したエゾヤチネズミのサンプル(162個体)のmtDNAを解析した結果,雌雄で集団構造に大きな違いがあることが分かった.メスの集団は500m以上離れると相互に遺伝的距離が大きな離れた個体群が見られく,比較的近距離から個体群の独立性が認められた.また,1.5km以上離れると遺伝的に類似していると見なされる集団は見られなくなった.一方,オスには個体群間の地理的距離と遺伝的な距離に明瞭な関係は認められず,個体群相互に遺伝的な交流がある適度保たれていた.これは,オスは良く分散するがメスは出...
    文部科学省, 基盤研究(B), 北海道大学, 連携研究者, 競争的資金, 22370006
  • 捕食者-被食者系の形質間相互作用とその進化学・生態学的意義
    科学研究費補助金(若手研究(B))
    2010年 - 2011年
    岸田 治
    エゾサンショウウオ幼生(捕食者)、エゾアカガエルのオタマジャクシ(被食者種1)、ミズムシ(被食者種2)、落葉(オタマジャクシ及びミズムシの餌)からなる生態系をモデルとして、個体の形質変化の生態学的・進化学的意義を探索した。この系では、サンショウウオはオタマジャクシがいるときに捕食に有効な大顎型の形態に変化すること、逆に、オタマジャクシはサンショウウオがいるときに頭部を膨らませた防御形態を発現することが知られている。1.形態変化の生態学的意義:相互作用の改変と生態系機能へのカスケード効果オタマジャクシの防御形態を操作した水槽実験により、「オタマジャクシが防御することで、サンショウウオが栄養価の低いミズムシを高頻度で食うようになり、生き残ったオタマジャクシが落葉の分解を促進することや、サンショウウオの変態が遅れること」を明らかにした。この研究により、被食者の防御適応が、捕食者の生活史や群集を構成する種の個体数に加え、生態系機能にまで影響することが明確に示された。2.形態変化の進化学的意義個体の形質変化が相互作用を変えるのであれば、それは群集構成種の形質選択にも作用すると考えられる。この仮説を検討するために、ミズムシの体サイズ分布に対するサンショウウオの選択圧がオタマジャクシの存在によって異なるのか、実験的に調べた。その結果、「オタマジャクシがいない場合に比べ、オタマジャクシがいる...
    文部科学省, 若手研究(B), 北海道大学, 研究代表者, 競争的資金, 22770011
  • 個体の可塑性と生物群集との相互関係の実証:両棲類幼生の形態変化に注目して
    科学研究費補助金(若手研究(スタートアップ), 研究活動スタート支援)
    2009年 - 2010年
    岸田 治
    変化する生物群集のなかで生物個体は形質をどのように変えるのか?その結果として個体群や群集レベルでどのような帰結がもたらされるのか?個体の応答性と高次の生態学的要素との相互関係の理解は、表現型可塑性研究の新しいムーブメントである。平成21年度は、1.この未開の領域において優先的に取り組まれるべき課題を明らかにするため、捕食者-被食者系の表現型可塑性に関する最近の研究の論点と成果をまとめた。その結果、(1)3種以上の相互作用系での個体の形質変化、(2)複数の誘導形質間の発現・機能上の関係性、(3)捕食者の可塑性による相互作用強度の変更、(4)捕食者と被食者の対抗性とその生態学的な影響、等のトピックについての理解が不足していることがわかった。そこでこれらについて理論的・実証的に研究する方法を提案した(以上は、総説論文として、Population Ecology誌に公表した)。2.次にトピック(4)に関する理論的研究を行った。捕食者と被食者の対抗的な可塑性の進化動態と個体群動態を数学的にモデル化し解析したところ、被食者が効果的な防御をもつときに捕食者と被食者の対抗的な可塑性が共進化しやすく、2種の個体群動態が安定的に持続することが分かった。3.最後に、個体の可塑性の群集生態学的影響を定量的に評価するためのモデル実験系を確立した。報告者はこれまでに可塑性研究の有効なモデル系として、エゾ...
    文部科学省, 若手研究(スタートアップ), 研究活動スタート支援, 北海道大学, 研究代表者, 競争的資金, 21870001
  • 捕食者と被食者の適応的な形態変化:表現型の可塑性と生物群集をつなぐ
    科学研究費助成事業
    2007年 - 2008年
    岸田 治
    捕食者-被食者相互作用における表現型可塑性の適応的機能と個体群生態学的意義についての理解を深めるため、エゾアカガエル幼生とエゾサンショウウオ幼生をモデルとした実験研究と、数理モデルを用いた理論研究を行った。
    1.種内の捕食-被食関係における対抗的形態可塑性の発見:エゾサンショウウオ幼生の高密度個体群が形態的二型を示すことを野外調査と野外操作実験で明らかにした。二型が共食い相互作用における対抗的表現型であること、つまり共食いに有利な型と、防御に機能する型からなることを実験的に示し、種内の食う-食われる関係で、個体が対抗的な形態可塑性を示すことを証明した。
    2.捕食者を共有する被食者2種の形質介在型の間接相互作用の検証:エゾアカガエル幼生とエゾサンショウウオ幼生の形態可塑性を実験的に操作し、2種の被食者が防御を発現することで、捕食者の摂餌選択性をかえ、互いの被食率を増加させていることを示した。
    3.共食いと体サイズ構造のフィードバック関係の検証:動物集団における共食いと集団中のサイズ構造の関係について、エゾサンショウウオ幼生の孵化コホートを対象として実験的に調べた。集団中の共食い頻度が、表現型可塑性による個体の形態的サイズ分化に強く依存すること、一方で、共食いが形態的サイズ分化を強化することを示した。さらに、共食い-サイズ構造の動的な相互作用が捕食者の存在下では生じにくいことを明らかにし、密度依存的な個体群動態の時間的・空間的変異について新しい説明を加えた。
    4.捕食者と被食者の適応的な表現型可塑性と個体群の安定性についての数理解析:数理モデルにより、個体群動態を安定化する捕食者と被食者の表現型可塑性の特徴について分析した。捕食者と被食者の表現型可塑性の機能が相互対抗的な場合に個体群が存続しやすく、特に被食者が優れた防御形質を有するほど、この安定化が促進されることを示した。
    日本学術振興会, 特別研究員奨励費, 京都大学, 07J05644
  • 表現型可塑性の共進化に関する実験生態学的研究
    科学研究費助成事業
    2005年 - 2006年
    岸田 治
    環境依存的な形態的可塑性について、エゾアカガエル幼生とそれを捕食するエゾサンショウウオ幼生をモデル生物とした野外調査・室内実験研究を行った。野外調査により、自然の池群集において2種の両生類幼生間の軍拡競争的形態発現がいくつかの環境条件下で生じていることを確かめた。カエル幼生に比べてサンショウウオ幼生のサイズが大きいとき、サンショウウオ幼生の密度が高いとき、他の相互作用種(上位捕食者や下位被食者)の密度が低いときに、2種の対抗的形態が強く発現する傾向にあった。これらの条件下では、サンショウウオ幼生による高い捕食圧が実現し、その結果として2種の形態反応が促進されていると考えられた。そこで、室内実験により、2種のサイズや密度、上位捕食者の存在の有無、下位のエサ生物量に応じて、2種の形態反応と2種の捕食-被食相互作用がどのように左右されるのか調べた。その結果、サンショウウオ幼生のサイズが大きいときや彼らの密度が高いときに、捕食されるカエル幼生の数が多く、生存個体の防御形態発現が強いことが明らかとなった。また、環境中に上位捕食者が存在するときやカエル幼生のエサ生物が多いとき、2種の捕食被食関係は緩和され、それに応じて対抗的な形態反応が抑制されていた。これらの結果は、エゾサンショウウオ幼生とエゾアカガエル幼生との間でみられる対抗的な形態変化は、2種の密接な相互作用が実現したときに発現されるものであり、それには生物群集内の他の生物種が深く関わっている可能性を示唆する。
    捕食者特異的な誘導形態発現とその柔軟性に関する最近の研究の成果を統合し総説としてまとめた。従来の捕食者誘導防御の進化条件に加えて、形態を一度変化させた後の柔軟性が可塑性の進化にとって重要であることを主張し、今後の研究の展望を述べた。
    日本学術振興会, 特別研究員奨励費, 北海道大学, 05J09035
  • Evolutionary Ecology of Phenotypic Plasticity in Amphibian Larvae.               
    競争的資金