景山 義之 (カゲヤマ ヨシユキ)

理学研究院 化学部門 物理化学分野助教
Last Updated :2025/06/07

■研究者基本情報

学位

  • 博士(学術), 東京大学, 2006年03月
  • 修士(学術), 東京大学, 2003年03月

プロフィール情報

  • 「分子集団として何かを自律的に行い続ける」ことを実現する研究を行っています。

    主な研究成果であるベシクル自己生産反応系や光駆動結晶の研究については、一見「よくある研究の一例だ」と思われがちです。しかし、前者は分子集合体レベルでの不可逆的自触媒プロセスを、後者は分子集合体としての自励振動力学系を実現した研究であり、これまでの化学研究と比較すると「見かけは似ていても、その本質は全く違う研究」という位置づけになります。分子集団の非線形挙動の学際的研究を通じ、「化学の新領域」や「化学成果の新たな出口」の創出を目指しています。

研究分野

  • 自然科学一般, 生物物理、化学物理、ソフトマターの物理
  • ナノテク・材料, 機能物性化学
  • ライフサイエンス, 生物有機化学
  • ナノテク・材料, 構造有機化学、物理有機化学
  • ナノテク・材料, 基礎物理化学

担当教育組織

■経歴

経歴

  • 2013年10月 - 2017年03月
    科学技術振興機構, さきがけ研究員
  • 2009年04月
    - 北海道大学大学院理学研究院 助教
  • 2007年04月 - 2009年03月
    東京理科大学薬学部 研究員, Faculty of Pharmaceutical Sciences
  • 2007年 - 2009年
    Researcher,Faculty of Pharmaceutical Sciences, Tokyo Univ. of Science
  • 2006年04月 - 2007年03月
    東京大学大学院総合文化研究科 研究員, Graduate School of Arts and Sciences
  • 2006年 - 2007年
    Researcher,Graduate School of Arts and Sciences, The Univ. of Tokyo
  • 2005年 - 2006年
    Graduate Student,Graduate School of Arts and Sciences, The Univ. of Tokyo

学歴

  • 2006年, 東京大学, 総合文化研究科, 広域科学専攻相関基礎科学系, 日本国
  • 2003年, 東京大学, 総合文化研究科, 広域科学専攻相関基礎科学系, 日本国
  • 2001年, 東京大学, 教養学部, 基礎科学科, 日本国

■研究活動情報

受賞

  • 2015年09月, 第9回バイオ関連化学シンポジウム講演賞               
    景山 義之
  • 2013年04月, 日本化学会, 第93春季年会優秀講演賞(学術)               
    景山 義之

論文

その他活動・業績

書籍等出版物

  • 〔主要な業績〕MDB技術予測レポート               
    景山義之, 自律的に物質を輸送する分子ロボットへの挑戦と課題
    日本能率協会MDB, 2023年10月13日, [分担執筆]
  • 〔主要な業績〕Photosynergetic Responses in Molecules and Molecular Aggregates
    景山 義之, (Chapter 26) Interplay of photoisomerization and phase transition events provide a working supramolecular motor
    Springer, 2020年09月, 英語, 27475860, [分担執筆]
  • 自然科学実験2019               
    景山 義之, C4 ものさしで測る分子の大きさと表面圧
    学術図書出版社, 2019年03月, 9784780606904, 11頁, 教科書・概説・概論, 授業用教科書, [分担執筆]
  • 〔主要な業績〕Molecular Technology volume 1: Energy Innovation
    景山 義之, 武仲 能子, 東口 顕士, (Chapter 8) Material Transfer and Spontaneous Motion in Mesoscopic Scale with Molecular Technology
    Wiley, 2018年07月, 9783527341634, 187-208, 英語, 11342187, [分担執筆]
  • 自然科学実験2018               
    景山 義之, C4 ものさしで測る分子の大きさと表面圧
    学術図書出版社, 2018年03月, 11頁, 日本語, 教科書・概説・概論, 授業用教科書, [分担執筆]

講演・口頭発表等

  • Submillimeter‐scale molecular‐based robots with self‐sustaining behavior
    Yoshiyuki Kageyama
    Workshop on Dissipative Processes in Molecular Systems, 2024年06月20日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    2024年06月17日 - 2024年06月21日, 42082235, [招待講演]
  • 〔主要な業績〕Synthesized micro-materials for self-sustainable works: Morphologies of active-molecule assemblies alter the apparent reaction kinetics               
    景山義之
    The 61st Annual Meeting of the Biophysics Society of Japan, 2023年11月15日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    2023年11月14日 - 2023年11月16日, 名古屋市, [招待講演], [国際会議]
  • 細胞サイズでの自己秩序挙動を示す分子集合体の化学
    景山義之
    第17回バイオ関連化学シンポジウム (Graduate Student Session), 2023年09月10日, 日本語, シンポジウム・ワークショップパネル(公募)
    2023年09月08日 - 2023年09月10日, 42082235, [招待講演]
  • 〔主要な業績〕Far-from-equilibrium behavior of ten-micrometer-scale artificial chemical assemblies ― Autocatalytic vesicular self-reproduction and light-powered crystalline self-oscillation
    景山義之
    Systems Chemistry Virtual Symposium 2023, 2023年07月10日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    2023年07月10日 - 2023年07月11日, フランス共和国, 27475905, [招待講演], [国際会議]
  • 〔主要な業績〕光駆動自励振動結晶—速度定数が変化する反応系が生み出す協奏的力学機能—
    景山 義之
    日本化学会第103春季年会 中長期テーマシンポジウム 「次世代分子システム化学のフロンティア―協奏的機能発現のメカニズム」, 2023年03月23日, 日本語, 口頭発表(招待・特別)
    2023年03月22日 - 2023年03月25日, 生命体の化学的模倣や、自律分子ロボットの実現などを目指し、機能性分子を集めた多分子系の、非平衡環境での力学的挙動がにわかに関心を集めるようになってきた。このような研究は、エネルギーの供給方向やタイミングなどの指図が付随しなくても、一定のエネルギー供給下で対象物の組成が継続的に変化し、結果として実効的な力学挙動を継続できるようになることで、初めて意義を持つようになる。このような「平衡から離れる振る舞い」は、対象物の組成が一定になる定常状態と対義の関係にある(が、現状では同義のものと捉えた論文が席巻している)。一定環境に置かれた系の分子組成は、揺らぎなどの効果を除けば、系内に介在する反応速度係数の比によって決まる。すなわち、「平衡から遠く離れる振る舞い」の実現には、反応速度係数がシステムレベルで適宜変化することが必須である。演者らの光駆動自励振動結晶では、光異性化が誘起する結晶相転移が分岐現象となって、光異性化の反応速度係数を変化させることで実現している。加えて、結晶の自由エネルギーが自律変動することと、それにより力学的な仕事が実現できるようになることを、併せて議論する。, 27475905, [招待講演], [国内会議]
  • 発動分子の階層化による自己秩序機能の創出
    景山義之
    「発動分子科学」成果報告会~分子の発動が拓く次世代の化学~ 日本化学会第103春季年会併催シンポジウム, 2023年03月22日, 日本語, 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等
    27475905
  • 〔主要な業績〕自律性を有した合成分子ロボットと実機能化のための課題
    景山義之
    新化学技術推進協会 電子情報技術部会 マイクロナノシステムと材料・加工分科会勉強会, 2022年12月13日, 公益社団法人 新化学技術推進協会(JACI)・電子情報技術部会・マイクロナノシステムと材料・加工分科会, 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等
    2022年12月13日 - 2022年12月13日, オンライン, 27475905, [招待講演], [国内会議]
  • 光で駆動する自励振動結晶 ― その仕組みと特徴
    景山義之
    第32回 非線形反応と協同現象研究会, 2022年12月03日, 非線形反応と協同現象研究会
    2022年12月03日 - 2022年12月03日, お茶の水大学, 27475905, [招待講演]
  • ナノ構造からの自律機能性材料の実現
    景山義之
    第26回VBLシンポジウム, 2022年11月24日, 名古屋大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー, 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等
    2022年11月24日 - 2022年11月25日, 名古屋大学, 27475905, [招待講演], [国内会議]
  • 化学反応で自律系を創るということと、そこから生まれる新視点               
    景山義之
    氷雪セミナー(日本分析学会・北海道支部), 2022年01月11日, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演]
  • Self-organization of repetitive transformations in tiny azobenzenes to realize autonomous mechanical function on a macroscopic scale
    景山義之, 池上智則, 武田定
    環太平洋化学国際会議2021, 2021年12月20日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    2021年12月15日 - 2021年12月20日, 27475905, [招待講演], [国際会議]
  • Shape change and work behavior of bistable self-oscillatory photochromic material in aqueous condition towards microrobot
    第21回名古屋国際数学コンファレンス, 2021年09月28日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    2021年09月26日 - 2021年09月29日, 27475912, [招待講演]
  • Mechanically “working” softcrystal under steady light irradiation               
    景山義之
    錯体化学討論会シンポジウム, 2021年09月16日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演]
  • やわらかい結晶のしなやかな光駆動自律運動
    景山義之
    第80回分析化学討論会, 日本分析化学会, 日本語, 口頭発表(招待・特別)
    2020年05月23日 - 2020年05月24日, 北海道教育大学札幌校(COVIDのため開催中止), 日本国, 27475905, [招待講演], [国内会議]
  • 両親媒性アゾベンゼン誘導体の集合体がみせる自己秩序型メカニカル運動               
    景山 義之, 池上 智則, 小原 一馬, 里永 慎之介, 佐藤 寛泰, 武田 定
    第68回高分子討論会, 2019年09月26日, 日本語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演], [国内会議]
  • 生命システムを有機化学で模倣する:分子集合体の自己複製と自律運動               
    景山 義之
    高分子研究会(鳥取), 2019年07月02日, 日本語, 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等
    [招待講演], [国内会議]
  • 化学で創る分子モーターと実働のための自己組織化               
    景山 義之
    分子モーター研究会, 2019年06月28日, 日本語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演], [国内会議]
  • Continuous Mechanical Motion of Layered Self -Assembly of Azobenzene Derivatives under Photo Stationary State               
    景山 義之
    日本化学会・アジア国際シンポジウム, 2019年03月18日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演], [国際会議]
  • Light-driven limit-cycle self-oscillation and autonomous swimming of azobenzene-assembly under photostationary state
    景山 義之
    Active Matter Workshop 2019, 2019年01月12日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    中野区, [招待講演], [国内会議]
  • Self-sustained dynamics of molecular assembly towards construction of autonomous molecular systems               
    景山 義之
    Hokkaido-Strasbourg Symposium Biotic and Abiotic Molecular Machines and Motors, 2018年11月14日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演], [国際会議]
  • 形態変化を続ける分子集合体の創出               
    景山 義之
    日本化学会北海道支部 室蘭地区講演会, 2018年10月09日, 日本語, 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等
    [招待講演], [国内会議]
  • Light-powered self-sustained mechanical motion of azobenzene crystal as the resultant of a couple of photoreaction and phase transition
    景山 義之
    第79回岡崎コンファレンス: Synthetic, Biological, and Hybrid Molecular Engines, 2018年08月31日, 分子科学研究所, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    岡崎市, [招待講演], [国際会議]
  • 〔主要な業績〕Self-oscillatory motion of molecular assembly with self-organization in non-equilibrium steady-state
    景山 義之
    International Symposium on Biofunctional Chemistry, 2017年12月15日, 日本化学会生体機能関連化学部会, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    宇治市, [招待講演], [国際会議]
  • Self-organization of molecular machine for autonomous macroscopic motion under non-equilibrium steady state
    景山 義之
    First MIRAI Seminar, 2017年10月18日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演], [国際会議]
  • 集団として動き続ける分子システムの創出 ― 生命の散逸性の模倣とそ こから生まれる機能
    景山 義之
    ChemBioハイブリッドセミナー, 2017年09月30日, 東京大学大学院工学系研究科化学生命専攻, 日本語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演], [国内会議]
  • 自己秩序的に動き続ける分子集合体の創出 — 散逸性とその機能               
    景山 義之
    北海道高分子若手研究会, 2017年09月09日, 日本語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演], [国内会議]
  • Design and creation of autonomous dynamics in self-assemblies               
    景山 義之
    The 3rd International Conference on Organic & Inorganic Chemistry, 2017年07月18日, 英語, 口頭発表(基調)
    [招待講演], [国際会議]
  • 定常状態でリミットサイクル振動を実現したアゾベンゼン含有分子集合体の光誘起メカニカル運動               
    景山 義之
    ソフトロボット:メカニカル材料 シンポジウム, 2017年05月27日, 日本語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演], [国内会議]
  • Auto-Oscillatory Flipping Motion of Azobenzene Containing Organic Co-crystal under Continuous Light Irradiation               
    景山 義之
    アジア国際シンポジウム(有機結晶), 2017年03月17日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演], [国際会議]
  • Organized Motion of Macroscopic Molecular Assembly Comprised of Azobenzene Derivatives under Light Irradiation               
    景山 義之
    HOKUDAI-NCTU International Joint Symposium on Nano, Opto and Bio Sciences, 2016年10月04日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演], [国際会議]
  • Macroscopically Working Artificial Molecular Motor: Steady and Autonomous Conversion of Light Energy to Mechanical Motion with Dissipative Self-Organization               
    景山 義之
    International Symposium on Pure and Applied Chemistry, 2016年08月17日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演], [国際会議]
  • Macroscopically Working Light-Powered Molecular Motor: Dissipative Self-Organization Resultant Oscillation               
    景山 義之
    The 12th HU-NU-MINS/MANA joint symposium, 2016年07月29日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演], [国際会議]
  • ヘテロ集積分子集合体の方向性をもった遊泳
    景山義之
    日本化学会春季年会講演予稿集, 2016年03月10日, 日本語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演], [国内会議]
  • Dissipative and Autonomous Motion of a Self-Assembly               
    景山 義之
    The 4th International Postgraduate Conference on Pharmaceutical Sciences 2016, 2016年02月28日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演], [国際会議]
  • Cooperative Deprotonation Induced Macroscopic Morphological Transformation of Multi-Component Molecular Assembly Actuated by Azobenzene- Photoisomerization               
    景山 義之
    International Conference on Small Science, 2015年11月06日, 英語, 口頭発表(招待・特別)
    [招待講演], [国際会議]

所属学協会

  • 高分子学会               
  • 日本化学会有機結晶部会               
  • 分子科学会               
  • ソフトマター研究会               
  • 「細胞を創る」研究会               
  • 複合系の光機能研究会               
  • 日本化学会生体機能関連化学部会               
  • 日本化学会               
  • Japanese Society for Cell Synthesis Research               

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 踊るケミカルAIの計算間違いを量る
    科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)
    2023年04月01日 - 2025年03月31日
    景山 義之
    日本学術振興会, 学術変革領域研究(A), 北海道大学, 23H04392
  • 発動分子素子の階層化による自己秩序機能の創出
    科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    2018年06月29日 - 2023年03月31日
    角五 彰, 景山 義之
    生体分子モーターは優れた運動効率、高い比出力を備えた生体由来の発動分子(生体発動分子)である。この発動分子を動力源としたアクチュエーターの開発が各国で盛んに行われている。しかし、依然として実用化への道のりは遠いのが現状である。その理由として発動分子の決定論的な動作が保障されていない、耐久性や熱安定性が低い、ダイナミクスを制御・操作する技術が確立されていないなどの要因がある。本研究では生体分子モーターに人工修飾を加えたハイブリッド型生体発動分子を創出・集積し、集団で機能するエネルギー変換素子の創成を目指す。併せて人工の発動分子の集団エネルギー変換系の構築に取り組み、時空間的階層性を有した分子運動系の基礎学理構築を目指している。本年度(平成 30 年度)には、二次元界面上での生体発動分子(キネシン)の運動発現に取り組み、生体発動分子をエラストマーやリン脂質などから構成されるソフトな二次元界面上に固定化する技術を確立させた。さらに領域内連携によりATPをエネルギー源とした生体発動分子(微小管)の機械的な運動を二次元界面上で発現させ、ロバストな運動のイメージング解析を確立させた。また実験環境下での生体発動分子、特にキネシンの効率的な駆動を実現するために、班員が有する特許(熱安定化変異体のスクリーニング法をもとに熱耐性キネシンの開発に着手した。
    同時に人工発動分子の集団エネルギー変換系の学理構築に向け、①既に構築している人工発動分子集合体の自律運動について数理科学者・物理学者との連携研究の開始、および②新たに構築する化学基質駆動型の人工発動分子システムの創出に向けた試料の合成と、その二次元界面への固定化に着手した。
    日本学術振興会, 新学術領域研究(研究領域提案型), 北海道大学, 18H05423
  • 光異性化分子の「動き」がつくる分子集合体の「動き」を数理モデルから解き明かす
    科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    2020年04月01日 - 2022年03月31日
    景山 義之
    日本学術振興会, 新学術領域研究(研究領域提案型), 北海道大学, 20H04622
  • 可逆な光異性化反応がマクロ構造変化で同期する自励振動現象の物理化学解析
    科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    2017年04月01日 - 2019年03月31日
    景山 義之
    物質自体の性質により光照射下で自発的に屈曲運動を繰り返す「アゾベンゼン誘導体含有薄膜状結晶」について、物理化学的あるいは化学物理的考察を推進することが、当該研究である。結晶であるにもかかわらず屈曲することに加え、光定常状態でその屈曲を繰り返す点で、研究大雨小の物質は他に類を見ない物質といえる。
    前年度に、アゾベンゼン誘導体(1)を成分とする結晶の暗所での構造解析に成功した。原子密度が疎な層と原子密度が密な層とが交互に積層した結晶構造から、原子密度が疎な相での光異性化が結晶の構造相転移を誘起すること、および原子密度が密な相が結晶の集積状態を保っていること、が推測された。
    今年度は、光照射下で形成するもう一つの結晶相の構造解析や過渡的変化の計測を目標に、独ポツダム大学との国際共同研究で、欧州放射光施設でのX線回折実験を試みた。しかし、一時的に形成する結晶を対象にしたX線回折実験は難しく、目標は達成できなかった。計測できなかった要因の一つは、光照射下で形成した屈曲した結晶が、単結晶ではなく、小さな結晶ドメインの集合体であるためではないかと考えている。
    この仮説は、構造の異なるアゾベンゼン誘導体(2)が形成する大きめの結晶の光照射下での運動を観察することで、信憑性を帯びてきた。大きめの結晶は、屈曲運動ではなく、波状運動をみせる。これは、結晶が単結晶である場合には説明しにくい、「伝搬」が働く現象である。
    すなわち、分子レベルでの可逆な光異性化が微視的な結晶の可逆な相転移を引き起こすこと、微視的結晶の可逆な相転移がマクロな結晶の可逆な構造変化を引き起こすこと、の二段階の自己組織化ダイナミクスが、この「光照射下で自律的に機械振動をみせる結晶」の中で起きていると推察された。これは、多くの化学者が漠然と興味を抱く「自己組織化」現象の基礎的かつ本質的理解を促す成果であり、継続的な研究展開が望まれる。
    日本学術振興会, 新学術領域研究(研究領域提案型), 北海道大学, 17H05247
  • 有機金属触媒の非対称運動で化学エネルギー誘起型の自律的マクロ運動を実現する
    科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    2017年04月01日 - 2019年03月31日
    景山 義之
    分子機械の構造変化を、熱力学の規律が働くマクロスコピックな継続運動へと変換するためには、空間的な対称性の破れが必要である。これに、時間的な対称性の破れ・反応の継続性が加わり、相や場で組織化することにより、マクロなレベルで自律的に動き続ける散逸分子システムを創出可能である。
    このコンセプトの確立を目的に、本研究課題では、化学反応で連続駆動する有機金属触媒を、自己配向性を有する液晶分子を用いて集積し、供給したエネルギーを消費しながら自律的に駆動する分子システムを創出する。この研究を通じて、上記仮説の証明と、ミクロとマクロをつなぐ物理的な関係を追究し、自律駆動デバイス・能動的デバイス創出にかかわる基礎学理を構築していく。
    平成29年度は、当初計画に従い、芳香族配位子を有したパラジウム触媒とシアノビフェニル系液晶分子を混合した液晶性触媒反応場を調製し、その反応場を利用した鈴木宮浦カップリング反応を行った。まずは、不斉炭素を持たない基質を用い、反応場の触媒活性を評価した。一般的な溶液系での反応と比較し、触媒反応効率の低下が起きたものの、目的のカップリング反応を進めることはできた。反応効率低下の理由は、反応が起こる表面が少ないこと、液晶分子自体の反応による目的反応の阻害、あるいは、触媒分子の構造変化自由度が液晶分子によって阻害された、などの原因が考えらえるが、三つ目の仮説の場合、触媒分子の構造変化が液晶分子の運動状態に影響を与えていることになる。このほか、基質の反応率に対して目的物の生成量が十分ではないなど、計画申請当初想定していた「研究上の困難点」が現れてきている。
    これに伴い、困難が生じた場合の対処法として計画していた、自己集積膜(SAM)などの組織化膜を用いた実験系の準備にも取り掛かり始めた。なお、困難点の発生も含め、研究はほぼ計画通りに進行している。
    日本学術振興会, 新学術領域研究(研究領域提案型), 北海道大学, 17H05346
  • 界面近傍の水と、そこから少し離れた水の運動状態を動的核分極NMR計測で比較する。
    科学研究費助成事業 若手研究(B)
    2016年04月01日 - 2019年03月31日
    景山 義之, 武田 定, 近藤 僚太, 李 ギョレ
    たんぱく質や細胞膜など、水中の高分子や分子集合体は、周囲の水との相互作用によって安定的な構造を保つとともに、機能発現においても、水との協同的な作用を利用しています。このような高分子・分子集合体の周りの水について、その流動性をはじめとした動的性状を計測する手法を向上させることが、本研究の目的です。
    この目的の下、自作計測装置の改良を行いました。また、光を当てると分子構造を変える機能的な計測用プローブの合成を達成しました。現在得られつつある計測結果について、今後は物理学者との共同研究によって解釈を検討し、分子集合体を取り囲む水の運動性状を明らかにしていきます。
    日本学術振興会, 若手研究(B), 北海道大学, 16K17849
  • ヘテロ集積分子集合体の方向性をもった遊泳
    さきがけ
    2013年10月 - 2017年03月
    景山 義之
    「光異性化による分子集合体の散逸自己組織化」を世界で初めて実現した。
    科学技術振興機構, 研究代表者, 競争的資金
  • 巨大自己集合体の規則的運動制御に向けた走査NMR顕微鏡による分子レベル動態解析
    科学研究費助成事業
    2014年04月01日 - 2016年03月31日
    武田 定, 景山 義之
    小さな分子が集まった巨大な分子自己集合体(数十~百μm)にアゾベンゼン誘導体を少量ドープして光照射を行うと,分子自己集合体が目に見える運動を行うことを,我々の研究室で見いだした。これは,分子レベルの構造や運動の変化が,協奏的・協同的な発展を遂げて巨視的な運動に至るものと考えられ,生体における分子の運動や変化の階層的発展とも関連して重要である。本研究では,分子レベルの状態の変化をin situで観測し,巨大な分子自己集合体のマクロな運動に発展する過程を調べるため,百μmの空間分解能を持つ「走査NMR顕微鏡」の開発を試みた。また,ESRとNMRを合体させた動的核分極によるNMR信号増強を行った。
    日本学術振興会, 挑戦的萌芽研究, 北海道大学, 26620001
  • 金属錯体のスピン転移と格子欠陥:固体高分解能NMRによるキャラクタリゼーション
    科学研究費助成事業
    2012年04月01日 - 2015年03月31日
    丸田 悟朗, 景山 義之
    金属イオンと有機物からなる固体物質のうちで、温度を上げ下げすると電子が(1)電子軌道の間か、(2)金属イオンと炭素原子の間か、(3)結晶内で規則正しく並んだ金属イオンの間か、を飛び移ってその磁気的性質を大きく変える物質について研究しました。
    電子が飛び移ると分子やイオンが少し変形するのですけど、この研究では、その変形の様子をNMRという装置で分析できることを示しました。
    さらにこの分析法を応用して、これまでの分析法では測定するのが難しかった、電子の飛び移りの頻度を測定することに成功しました。
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 24550003
  • 分子集合体を取り囲む水のレオロジーを計測する-水が介在する生命現象の理解に向けて
    科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究)
    2013年 - 2014年
    景山 義之
    細胞の主成分は水であり、その細胞で生命現象は発現しています。細胞膜の周りやたんぱく質は、水で取り囲まれています。この水の性質は、一般的な水とは異なります。そのことが、生体機能発現に関係しており、この特徴的な水の性質を分析・検討していく手法の開拓とデータの蓄積が求められます。
    一方、水の中で、特異な水の性質のみを選択的に分析するのは困難です。その一手法として動的核分極核磁気共鳴が注目されています。本研究では、その装置の製作を行いました。また、有機合成化学の技術により、人工の分子集合体を取り囲む水の信号を選択的に計測しました。今後、理論との融合により、分子集合体の水の運動性が定量化されていきます。
    文部科学省, 挑戦的萌芽研究, 北海道大学, 研究代表者, 競争的資金, 25620002
  • 螺旋状ミエリンにおけるプロトン協同低障壁マクロダイナミクスの作動制御
    科学研究費補助金(若手研究(B))
    2011年 - 2012年
    景山 義之
    本研究では、両親媒性分子によって形成されるミエリン形自己集合体の構造を、添加した機能性有機分子によって変化させることを目的としている。ミエリン形自己集合体内部において両親媒性分子は、弱い相互作用で規則的に配列している。そのため、集合体周辺のプロトンの活量や、添加された分子の性状変化によって、集合体の集積様式を変えることができ、ダイナミックな巨視的変化が観測されると予想される。 本年度は、オレイン酸から形成されるミエリン形自己集合体を、光・酸化還元活性を有する両親媒性アゾベンゼンおよびフラビン誘導体によって構造変化させた。このうち、両親媒性アゾベンゼンを10%含んだミエリン形自己集合体では、紫外光の照射によるミエリンの伸張挙動と、可視光の照射によるミエリンの巻き戻り挙動とが観察された。両親媒性アゾベンゼンを1%に減らした場合には、構造変化がゆっくり・長時間かけて進行した。これを光異性化反応速度を踏まえて検討したところ、この構造変化が、アゾベンゼンのトランスからシスへの一方向の光異性化によって単純に起こされているのではなく、集合体内でアゾベンゼンが光と熱によりトランス→シス→トランス→シスと繰り返し異性化する「分子モーター」によって引き起こされていると推察された。 大きさ1ミリメートルスケールの超分子を分子モーターで動作させる研究例は予想されるインパクトが高く、その綿密な検証が...
    文部科学省, 若手研究(B), 北海道大学, 研究代表者, 競争的資金, 23750142
  • オレイン酸を主成分とする螺旋状超分子の形成挙動に対する添加分子の役割の解明               
    笹川科学研究助成(学術)
    2010年04月 - 2011年03月
    景山 義之
    日本科学協会, 研究代表者, 競争的資金
  • 細胞内イオンを利用する分子集積に基づく新しい抗がんシステムの開発
    科学研究費助成事業
    2007年 - 2009年
    青木 伸, 北村 正典, 景山 義之
    アポトーシスは、固体の生命を維持するために、遺伝子によって制御された細胞死であり、不要になった細胞や有害な細胞を除去する現象である。アポトーシスの誘起機構の一つとして、ミトコンドリアから遊離したカスパーゼ-9がカスパーゼ-3を活性化する経路がある。しかし、がん細胞は、カスパーゼ-9と複合体を生成するタンパクであるXIAPが、カスパーゼ-9と複合体を生成して不活性化する防御機構をもっている。
    そこで本研究では、XIAPを認識するペプチドと金属イオンキレート部をもつ化合物(L-ペプチド)を設計、合成する。がん細胞内でbpy-ペプチドが金属イオンによって自己集積してM(L-ペプチド)を生成し、M(L-ペプチド)-XIAP複合体の生成によってカスパーゼ-9を遊離してアポトーシス誘導を行う。
    平成21年度は、平成20年度に合成した2,2'-bipyridyl(bpy)基を有するジペプチド体とモノペプチド体の合成に加えて、リンカーとしてbis(picolyl)amino(BPA)基とN,N'-bis(picolyl)ethylenediamine(BISPICEN)基を有する化合物の合成に成功した。これらのXIAP結合能を蛍光偏光法によって測定したところ、いずれの化合物もnMオーダーのIC_<50>値を有することが明らかになった。亜鉛イオンの効果を検討したところ、BPAリンカーを有する化合物において、亜鉛イオンの効果が認められた。亜鉛イオン存在下、非存在下での差は決して大きくはないが(Zn^<2+>非存在下で44nM、Zn^<2+>存在下で27nM)、さらに強いZn^<2+>キレーターを加えると、IC_<50>値がZn^<2+>非存在下の値に近づいたことなどから、Zn^<2+>との錯体生成がXIAPへの結合を増大させたことが示唆された。また、弱いながらもがん細胞に対するアポトーシス誘導も観測された。現在、これらの成果を発表するべく、論文投稿の準備中である。
    日本学術振興会, 挑戦的萌芽研究, 東京理科大学, 19659026
  • 新規Caged化合物を用いる光分解性ビオチン標識リンカーの開発
    科学研究費助成事業
    2006年 - 2009年
    青木 伸, 山田 泰之, 北村 正典, 景山 義之
    (+)-ビオチン(Btn)は、アビジン(Avn)と非常に安定な複合体を生成する。その解離定数Kdは約1fMであり、通常の抗原-抗体複合体の100万倍も強く、実質上不可逆である。本研究は、申請者らが発見したCaged化合物(8-quinolinyl sulfonates, QS)の光分解反応を利用することにより、光分解性Btn標識試薬の開発を目的とした。中性pH、常温という温和な条件下、光照射によってリガンド-レセプター複合体をintactな状態で回収し、特異的レセプターの同定、構造解析を行うための全く新しいBtn-Avnシステムを提供する。
    脳内神経伝達分子であるドーパミンを、光分解性QSリンカーを介してビオチンに結合した化合物(Biotin-Dopamine-HQ)の合成を行った。Biotin-Dopamine-HQと抗ドーパミン抗体(IgG)、および二次抗体(抗IgG抗体)を用いてELISAを行い、Avn、Biotin-Dopamine-HQ、IgG、抗IgG抗体の四者の複合体が生成することを確認した。さらにAvn、Biotin-Dopamine-HQ、IgGの三元複合体に光を照射し、リンカーが分解できることを確認し、分解後のDopamine-IgGの、Western blottingによる検出に成功した。以上の結果は、すでに論文発表された(Bioorg. Med. Chem. 2009, 17, 3405-3413)。
    また、上記の化合物もよりも長いリンカーを有するビオチン標識リンカーの合成にも成功した。同様にELISA、Western blottingを行ったところ、リンカーの延長は抗体との複合体形成、光分解にDopamine-抗体複合体の回収率に大きな変化はなかった。本結果についても、論文投稿の準備中である。さらに、本技術の基盤となるQS基質の光分解反応の反応機構についても詳細に検討し、論文投稿済みである。
    このように、本研究ではQS基質の新規光分解反応の発見、反応機構の解明を行い、それを光分解性Btn標識リンカーにまで応用した。現在、光分解性リポソームなどにも展開可能であり、今後が期待される。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 東京理科大学, 18390009

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