池田 清治 (イケダ セイジ)

法学研究科 法律実務専攻 民事法講座教授
高等教育推進機構教授
Last Updated :2024/12/06

■研究者基本情報

学位

  • 法学博士, 北海道大学

Researchmap個人ページ

研究キーワード

  • 民法

研究分野

  • 人文・社会, 民事法学

■経歴

委員歴

  • 2022年04月 - 現在
    札幌地方裁判所簡易裁判所判事推薦委員会, 委員, 政府

学内役職歴

  • 教育研究評議会評議員, 2016年12月15日 - 2018年12月14日
  • 教育研究評議会評議員, 2018年12月15日 - 2020年12月14日
  • 大学院法学研究科長, 2018年12月15日 - 2020年12月14日
  • 大学院法学研究科副研究科長, 2016年12月15日 - 2018年12月14日
  • 法学部長, 2018年12月15日 - 2020年12月14日

■研究活動情報

論文

  • 消費者庁・消費者委員会の設置、歩み、そして、課題               
    池田清治
    現代消費者法, 59, 109, 118, 2023年06月, [査読有り]
    日本語, 研究論文(学術雑誌)
  • 契約の成立               
    池田 清治
    新基本コンメンタール 債権2, 7, 14, 2020年10月
    日本語, 論文集(書籍)内論文
  • 契約交渉段階               
    池田 清治
    改正債権法コンメンタール, 954, 963, 2020年10月
    日本語, 論文集(書籍)内論文
  • 転貸借契約の契約条件について合意したにもかかわらず契約書への記名捺印を拒否した転借交渉者の責任の内容               
    池田 清治
    私法判例リマークス, 60, 34, 37, 2020年02月
    日本語, 研究論文(学術雑誌)
  • 借地上の建物の賃借人の地位               
    池田 清治
    法学教室, 456, 22, 25, 2018年09月
    日本語, 研究論文(学術雑誌)
  • 契約の成立               
    池田 清治
    詳解改正民法, 386, 394, 2018年06月
    日本語, 研究論文(学術雑誌)
  • 受信設備を設置した者は、番組を見なくても、NHKに受信料を支払わねばならないのか               
    池田 清治
    法学教室, 452, 44, 50, 2018年05月
    日本語, 研究論文(大学,研究機関等紀要)
  • 日本における契約締結上の過失理論の生成、展開、そして、課題               
    池田 清治
    民法研究, 2, 4, 23, 34, 2018年03月
    日本語, 研究論文(学術雑誌)
  • 履行不能の規律-プロセス変化の存否
    池田 清治
    ジュリスト, 1511, 22, 27, 有斐閣, 2017年10月
    日本語, 研究論文(学術雑誌)
  • 不法残留外国人労働者の逸失利益・慰謝料               
    池田 清治
    交通事故判例百選〔第5版〕, 116, 117, 2017年10月
    日本語, 研究論文(学術雑誌)
  • 契約締結過程の民事責任論と消契法3条
    池田 清治
    法学教室, 441, 17, 22, 有斐閣, 2017年06月
    日本語, 研究論文(学術雑誌)

その他活動・業績

書籍等出版物

  • 事例で学ぶ民法演習               
    池田 清治
    2014年, [共著]
  • 基本事例で考える民法演習2               
    池田 清治
    2014年, [単著]
  • 基本事例で考える民法演習               
    池田 清治
    日本評論社, 2013年, [単著]
  • 『民法学における古典と革新(藤岡康宏先生古稀記念論文集)』               
    成文堂, 2011年, [共編者(共編著者)]
  • 契約交渉の破棄とその責任               
    有斐閣, 1997年, [単著]

講演・口頭発表等

所属学協会

  • 日本消費者法学会               
  • 日本私法学会               

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 「契約」と「約束」―法心理学からのアプローチ―
    科学研究費助成事業
    2023年04月01日 - 2027年03月31日
    木下 麻奈子, 松村 良之, 池田 清治, 長谷川 真里, 前田 智彦, 森 大輔, 齋藤 宙治
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 同志社大学, 23H00750
  • 贈与契約の拘束力と効力-無償契約の性質決定と契約の解釈に関する比較法的研究
    科学研究費助成事業
    2019年04月01日 - 2023年03月31日
    池田 清治
    従前研究が乏しかった無償契約について、特にその代表例である贈与契約を素材としつつ、①無償性が贈与契約の拘束力にいかなる影響を及ぼすのか、②契約内容を解釈する際、無償であることがどのように機能するのか、という2つの観点から、比較法的検討を交えつつ考究し、それを踏まえた上で、③無償契約の拘束力及び効力の背景原理を究明し、これに基づく解釈論的及び立法論的提言をすることを目的とする本研究プロジェクトにあっては、令和3年度、基礎的・文献的研究に注力し、次の2つの貴重な知見を得た。
    第1は、諸外国においては、客観的に見れば、対価のないように見える契約であっても、「無償性の合意」という主観的概念を用いて、当該行為を「贈与ではない」と性質決定した上、要式性を克服する試みがされているが、日本では、学説にあっては「無償性の合意」が贈与の要件として語られているものの、裁判例においては全く機能していない、という事実である。これは「書面」ないし「履行」概念を拡張する要因として作用しているものと推察され、日本の裁判例を分析する際、1つのキーポイントとなる。
    第2は、贈与の解除権が相続されるのか、という問題視角を獲得したことである。贈与に公正証書を要求するフランスやドイツにあっては、その趣旨は単に贈与者を保護することだけでなく、贈与者の相続人を保護するという機能も有しているが、日本では「書面」という方式はもっぱら贈与者の注意喚起を目的とするものと理解されており、贈与者の相続人を保護するためのものとは考えられていない。そして、実際に裁判例を見るなら、贈与者の相続人がする解除の主張は、「書面」ないし「履行」の存在を理由にことごとく退けられている。相続人による解除の主張は被相続人の意思を踏みにじるものと考えられているためであり、これも「書面」ないし「履行」概念の拡張要因として位置づけられよう。
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 19K01360
  • 「法的社会化」概念による契約意識の再構成 ― 契約意識はどのように変わるか
    科学研究費助成事業
    2019年04月01日 - 2023年03月31日
    木下 麻奈子, 松村 良之, 池田 清治, 長谷川 真里, 前田 智彦, 森 大輔
    本研究は、法社会学で重要な研究課題とされてきた日本人の法意識について、実証的に検証するものである。本研究では、従来、法意識と呼ばれていた概念を社会科学的観点から再構成するために、社会心理学の態度理論を基に、新たに法態度という概念を用いる。法態度という概念は多元的な側面を有するが、この研究では、とりわけ契約・契約法に関わる法態度を中心課題として取り上げる。
    2021年度では、日本の人々が法的な社会環境に対して適応していく過程で、契約に関してどのような知識、価値、理解を獲得しているかを明らかにするために、まず理論モデルを構築した。その上で、社会調査、Web実験、インタビュー調査といった実証的なアプローチを用いて研究を遂行した。各班の活動は次のとおりである。
    A班(社会調査班)とB班(民事法学班) A班が中心となりB班と連携して、社会調査を行った。社会調査を行うに当たり、A班が中心となり、リサーチ・デザインおよび質問票を確定した。調査の概要であるが、母集団は日本全国の成人であり、サンプリングの方法は2段階抽出ランダムサンプリングである。調査では、人々の契約に対する態度の経年変化を先行研究と比較することにより検証した。
    C班(心理学班)とB班(民事法学班) C班が中心となり、前年度の予備実験を踏まえて、シナリオを用いた要因計画法に基づくWeb実験(本実験)を行った。Web実験では、B班とC班が連携して各種の社会要因を操作し、人々の契約に対する態度の形成について検討した。さらに小学生等を対象としたインタビュー調査を行い、契約に関する法態度の獲得・形成過程に焦点を当てた研究を行った。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 同志社大学, 19H01409
  • 履行利益、信頼利益、費用賠償の相互連関-日本、アメリカ、ドイツの比較研究
    科学研究費助成事業
    2016年04月01日 - 2019年03月31日
    池田 清治
    本研究の目的は、履行利益、信頼利益、費用賠償という3つの救済手段の相互関係を考究し、このことを通じて、どのような場合にいかなる範囲の賠償を認めるべきかという問いに対して、理論的で、かつ、実務的にも有用な法解釈を導くことにある。そして、この問題を鳥瞰する池田清治「日本における契約締結上の過失理論の生成、展開、そして、課題」(民法研究第2集4号23-34頁、2018年)という綱領的な論文を公表するとともに、個別的な問題に関するいくつか論稿を発表し、成果を上げた。
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 16K03381
  • 法の「熟達者」はいかにして可能か-ソクラテスメソッドの再構成を手がかりに-
    科学研究費助成事業
    2014年04月01日 - 2018年03月31日
    木下 麻奈子, 松村 良之, 長谷川 晃, 池田 清治, 長谷川 真里, 浅野 有紀, 村山 眞維, 佐藤 健
    本研究の目的は、法律家の技能の獲得過程と法律家の熟達過程およびその内容について、「メタ認知」の概念を手掛かりに、心理学の観点から明らかにすることである。本研究では、法的思考について法律専門家への聴き取り調査、司法試験合格者らへのインタビュー調査、一般人を対象とした法的思考に関する質問紙調査および実験計画法に基づくシナリオ実験、さらに法律学学習法に関する実験計画法に基づくシナリオ実験を行い、法的概念の獲得過程について明らかにした。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 同志社大学, 26285005
  • 契約の拘束力と「後悔する権利」-消費者の撤回権と贈与の撤回をつなぐもの
    科学研究費助成事業
    2013年04月01日 - 2016年03月31日
    池田 清治
    本研究の目的は、消費者契約における消費者の撤回権(クーリングオフ)の存在理由を考究し、このことを通じて、契約の拘束力の根拠を明らかにすることである。そのため、消費者の撤回権について、法学的な視点だけでなく、経済学的な視点からも考察を進め、また贈与契約を撤回する権利などとの比較も行った。さらに契約を解除した場合に解除者に課されるサンクションについても検討し、2014年11月に国立台湾大学(台北)で開催された国際シンポジウム(第4回東アジア民事法学学術シンポジウム)において報告するという成果を上げた。
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 25380093
  • 消費者のための市場秩序形成をめざして-行政的手法と司法的手法の相互連関-
    科学研究費助成事業
    2010年 - 2012年
    池田 清治
    本研究の目的は、消費者のための市場秩序を形成するための理論モデルを構築し、このモデルに基づいた政策提言を行うことにあり、行政的手法と司法的手法との関係、行政的手法における地域間格差の是正、司法的手法における実効的な集団的救済制度の構築、という3つの問題について検討を進めた。そして、「北海道消費生活基本計画」を策定するとともに、日本の消費者団体訴訟について国際シンポジウムで報告するという成果を上げた。
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 22530073
  • 競争秩序と消費者-消費者の目線に立った実効的市場ガバナンス制度の構築-
    科学研究費助成事業
    2007年 - 2009年
    池田 清治
    本研究は、競争秩序と消費者との関係について検討することを目的とし、具体的には、商品の特性に応じた規制方法、損害賠償の機能、規制の主体(消費者及び消費者団体)、という3つのテーマに則して検討を進めた。そして、消費用商品と投資用商品とでは異なった規制をすべきこと、損害賠償の実際の機能は多様であること、消費者個人のする差止請求については慎重な態度が求められるべきこと、という結論に至った。
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 19530061
  • 市場環境・生活環境の秩序形成における公私の協働-《公共圏》の実定法学的構造
    科学研究費助成事業
    2005年 - 2008年
    吉田 克己, 田村 善之, 長谷川 晃, 稗貫 俊文, 村上 裕章, 曽野 裕夫, 松岡 久和, 池田 清治, 和田 俊憲, 山下 龍一, 亘理 格, 瀬川 信久, 秋山 靖浩, 潮見 佳男, 伊東 研祐
    公正な競争秩序や良好な自然環境、都市環境を確保するためには、行政機関や市町村だけでなく、市民が能動的な役割を果たすことが重要である。要するに、公私協働が求められるのである。しかし、公私峻別論に立脚する現行の実定法パラダイムは、この要請に充分に応えていない。本研究においては、行政法や民法を始めとする実定法において、どのようにして従来の考え方を克服して新しいパラダイムを構築すべきかの道筋を示した。
    日本学術振興会, 基盤研究(A), 北海道大学, 17203007
  • 債権の流動化と譲渡禁止特約の効力-民法466条2項と468条2項との架橋-
    科学研究費助成事業
    2003年 - 2006年
    池田 清治
    本研究の目的は、債権の流動化に対する障害として理解されることの多い譲渡禁止特約につき、その意義と効力を根本的に再検討しようとするものである。
    ところで、譲渡禁止特約が債権の流動化に対する障害として把握される背景には、債権の流動化を一層推し進めるべきであるとの根本思想があるわけだが、実際にその根本思想が妥当であるか否かの検証はなされていないのではないか、というのが本研究の成果の1つである。すなわち、確かに商取引から生じる債権については、その流性が確保された方が社会経済的に望ましいかもしれない(ただし、その場合であっても、債務者の相殺期待をいかに取り扱うべきかという問題があることには注意を要する)。しかし、無償契約や消費者契約という生活世界に立脚する債権につき、その債務者を保護するとの観点から、譲渡禁止ないしそれに類似する法的保護(具体的には、譲渡後に発生した事由についても、それを抗弁としうること)を認めることは、むしろ望ましい政策である可能性があり、すると、債権の発生原因ごとの分析に進むべきこととなるはずなのである。
    本研究の第2の成果は、上記のうちの1特に消費者契約について検討を進め、特に団体訴権につき、2つのシンポジウムで報告を行ったことである(公表に備え、既に加筆・修正の作業も行っている)。そこでは、単に消費者契約そのものだけでなく、団体による差止請求や損害賠償請求といったスキームを通じて、消費者の目線に立った市場規制のあり方まで視野に入れられているのである。
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 15530055
  • 溶解する法システムの21世紀的統合に向けた法戦略-行政・市場・生活の比較研究-
    科学研究費助成事業
    2002年 - 2004年
    吉田 克己, 長谷川 晃, 瀬川 信久, 稗貫 俊文, 田村 善之, 潮見 佳男, 曽野 裕夫, 道幸 哲也, 亘理 格, 山下 竜一, 池田 清治, 村上 裕章
    本研究の目的は、現代社会を構成する政治=行政、経済=市場、生活=消費という3つのサブシステムの内部変化と外部変容(相互関係の変化)を、実定法学という観点から構造的・総合的に把握することである。
    共同研究を通じて、これら3つのサブシステム相互関係の変容を端的に表現するのが公私のクロスオーバーという現象であることが明らかとなった。また、そのような問題が集中的に現れる問題領域として、競争秩序と環境秩序があることも明らかになった。競争秩序の維持・確保は、その公共的性格のゆえに、伝統的に行政機関が担当すべきものとされてきた。ところが、近時、市民を主体とする民事法的対応の可能性が模索されている。このような動向に応じるためには、市民を主体とするものとして「公共性」を捉え返す必要があること、そして、競争秩序違反に対する損害賠償や差止を可能にする法理もまた、そのような観点から再構成されるべきことが解明された。さらに、競争秩序の形成に関して、上からでなく、下からの自生的秩序形成の可能性とその条件が検討された。競争論の観点からの民法学の原理論的考察も行われ、物権・債権の二分法に基礎には競争観念があることが明らかにされた。環境秩序に関しては、近時、理論的にも実践的にも重要な争点となっている景観問題などを素材として、公私のクロスオーバー現象が分析された。行政法の領域からは、公益、個別的利益および共同利益の相互関連が検討され、民事法の領域からは、差止を可能にする法理として、地域的ルール違反に対するサンクションとしての差止という法理が提示された。そして、刑法の領域からは、環境を保護法益として捉える場合のおける近代刑法原理の限界に関する分析が行われた。
    さらに、「憲法と民法」の相互関連という問題を通じて、公私の再構成に関する原理的な検討が行われた。
    日本学術振興会, 基盤研究(A), 北海道大学, 14202006
  • 民法理論の構造と展開に関する実証的研究-「パラダイム転換」論の意義・役割・限界-
    科学研究費助成事業
    2000年 - 2002年
    池田 清治
    本研究の目的は、法律学上の「理論」とはどのような構造を持ち、そして、どのように発展していくものであるのか、という問題を実証的に検討することであった。そして、そのさい、分析道具としては、科学哲学上の概念である「パラダイム転換」論を用い、また分析対象としては、法律学上の古典的問題を選び、具体的な検討を加えることとした。その結果、以下のような研究成果を得た。
    まず法理論の構造と発展に関する一般的論としては、第1に、理論の発展過程とは、ある理論が他の理論を説得する過程ではなく、他の理論の支持者が死に絶える過程であるとの知見を得た。これはクーンのいわゆるパラダイム転換論が法律学においても妥当性を持ちうることを意味している。また第2に、法律学上の理論が一般言明のみならず、実例や模範例を含んでいることは広く知られている事実であるが、科学における理論についても同様の理解があることが判明し(シュテークミュラーの理解)、理論の構造が学際的に共通性を有するものであることが明らかとなった。
    次に実証研究の観点から、幾つかの具体的な問題についても検討を加えた。なかでも最も詳しく検討したのは「債権譲渡と譲渡禁止特約」という間題であり、これは「債権譲渡と差押え」という問題から派生したものである。そして、譲渡禁止特約の効力に関するこれまでの議論の展開過程を実証的に検討し、古典的理解の背景とその後の変化の動因を探るとともに、相殺という関連問題にも検討を加え、解釈試論おも提示した。
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 12620040
  • 契約の拘束力の根拠に関する実証的研究-契約の性質決定についての日欧契約法の比較-
    科学研究費助成事業
    1998年 - 1999年
    池田 清治
    1 昨年度の日本における贈与法の研究を踏まえ、既に研究実施計画で予告したように、本年度は「私的自治論」の母国たるドイツの私的自治論に検討を加え、さらにその現代的病理現象ともいえる「約款論」にまで考察の歩を進め、次の知見を得た。
    (1)日本では、たとえば消費者保護の局面で、事業者が消費者に十分な情報を与えるべきことを論証するさい、「私的自治の復権」が語られることが多く、十分な情報に支えられた自己決定こそが「私的自治」であり、自己責任の基盤だと考えられている。しかし、ドイツの一部学説では、それは消費者をいわば「半人前扱い」し、「私的自治」に反することと理解される。つまり、自律した人間なら、情報は自分で収集すべきであるとされるのである。これは日本では強調されてこなかった興味深い知見である。
    (2)次にその「私的自治」が機能しない病理的現象とされる約款論については、従来、その対策ばかり論じられてきたが、それは「イノベーションに対する法的対応」という大きな位置づけを持つ問題で、世界の最先端を行く今後の日本社会では避けえないものであるから、約款に対する各種規制(立法、行政、司法、民間団体による規制)のあり方はモデル・ケースとしての意味があるとの知見をえ、かかる視角から(従来非難ばかりされ、真価が理解されていなかった)『石井・約款論』の再評価も行った。
    2 以上の知見を学界の共有財産とすべく、(1)については、池田清治「メディクス・私的自治と決別すべきか」(『私法学の再構築』213-246頁所収1999年)で、上記の見解を紹介し、(2)については、池田清治「石井照久・普通契約条款」(『民法学説百年史』443-447頁1999年)として公表した。
    日本学術振興会, 奨励研究(A), 北海道大学, 10720017
  • 民法解釈学における解釈方法に関する基礎的研究-判決文に現われた法的思考と解釈論との相互関係に関する実証的研究-
    科学研究費助成事業
    1995年 - 1995年
    池田 清治
    1 判決文に現われた法的思考と解釈論とをつなぐ、具体的問題としては、消滅時効と除斥期間の関係という古典的な問題を選び、そのなかでも、民法724条後段の期間制限に関する裁判例も網羅的かつ集中的に、判決文の視点から検討した。その結果、
    (1)右期間制限の性質、つまり、それを消滅時効と解するか、除斥期間と解するか、という点については、裁判例は相半ばしている(最判平成元年12月21日民集43巻12号2209頁は、これを除斥期間とするが、学説の批判が強い)。
    (2)ところが、判決文の視点から見るとき、ほとんどの裁判例は、期間制限を理由に、実体的審理に立ち入ることなく、請求を棄却しており、これは右期間を消滅時効と解するか、除斥期間と解するかにかかわりがない。
    (3)(2)の特徴は、通常の消滅時効では見られないものである(普通、裁判所は実体的審理を行った後、時効を持ち出す傾向にあることは、星野英一「時効に関する覚書」民法論集第4巻(昭和53年)167頁以下で実証されている)、
    との検討結果が得られた。ここから、右期間制限の性質を直接導き出すなら、飛躍があるが、通常の消滅時効との扱いの違いは明確にできたので、次に除斥期間込められている趣旨の析出を通じて、右傾向を解釈論に活かすための手掛かりは十分得られた。
    2 なお、かかる考察については、裁判官及び検事並びに弁護士との共同研究会である、札幌民事実務研究会において報告する機会を与えられ、724条の特徴はもとより、裁判実務での取り扱いや発想方法について多くの教示を得た。
    3 今後も、判決文という実体のあるものを素材に、より考察領域を拡大し、法的思考の特質を検討していきたい。
    日本学術振興会, 奨励研究(A), 北海道大学, 07852007
  • 現代契約法               
    競争的資金

担当教育組織