上野 貢生 (ウエノ コウセイ)

理学研究院 化学部門 無機・分析化学分野教授
工学研究院教授
Last Updated :2025/11/06

■研究者基本情報

学位

  • 博士(理学), 北海道大学

メールアドレス

  • uenosci.hokudai.ac.jp

Researchmap個人ページ

研究者番号

  • 00431346

Researcher ID

  • D-6710-2012

研究キーワード

  • 超高速分光
  • プラズモニクス
  • 光化学
  • 分析化学
  • Nano Fabrication
  • Near-Field Optics

研究分野

  • ナノテク・材料, 基礎物理化学
  • ナノテク・材料, 分析化学

担当教育組織

■経歴

経歴

  • 2019年04月 - 現在
    北海道大学, 大学院理学研究院 化学部門, 教授, 日本国
  • 2009年04月 - 2019年03月
    北海道大学, 電子科学研究所, 准教授
  • 2008年04月 - 2009年03月
    北海道大学, 電子科学研究所, 特任准教授
  • 2007年04月 - 2008年03月
    北海道大学, 電子科学研究所, 助教
  • 2006年04月 - 2007年03月
    北海道大学, 電子科学研究所, 助手

学歴

  • 1999年04月 - 2004年03月, 北海道大学, 大学院理学研究科, 化学専攻
  • 1995年04月 - 1999年03月, 北海道大学, 理学部, 化学科

■研究活動情報

受賞

  • 2025年03月, Science and Technology of Advanced Materials, Best Paper Award 2024               
    Hiroki Ago;Susumu Okada;Yasumitsu Miyata;Kazunari Matsuda;Mikito Koshino;Kosei Ueno;Kosuke Nagashio
  • 2024年09月, 光化学協会, 光化学協会賞               
    結合系プラズモニックナノ構造のコヒーレンス時間の制御と光化学反応に関する研究
  • 2024年02月, 日本分析化学会北海道支部, 北海道分析化学賞               
    制御されたナノ構造のレーザー分光分析化学に関する研究
  • 2015年03月, 北海道大学, 北海道大学研究総長賞(奨励賞)               
    上野 貢生
  • 2011年03月, 日本化学会, 日本化学会進歩賞               
    上野 貢生
  • 2010年09月, 光化学協会, 光化学協会奨励賞               
    上野 貢生
  • 2007年09月, 日本分析化学会, 日本分析化学会奨励賞               
    上野 貢生
  • 2004年02月, 日本分析化学会北海道支部, 北海道分析化学奨励賞               
    上野 貢生

論文

その他活動・業績

書籍等出版物

担当経験のある科目_授業

  • 分析化学II               
    北海道大学
    2021年04月 - 現在
  • 分子化学(光化学)               
    北海道大学
    2019年04月 - 現在
  • 分析化学I               
    北海道大学
    2019年04月 - 現在
  • 生体工学概論               
    北海道大学
  • ナノフォトニクス特論               
    北海道大学
  • バイオフォトニクス特論               
    北海道大学
  • ナノ工学基礎               
    北海道大学
  • 電気回路               
    北海道大学
  • 化学I               
    北海道大学

所属学協会

  • 日本分析化学会               
  • 日本化学会               
  • 光化学協会               
  • 応用物理学会               

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • ミートロニック(Mie-Tronic)光ピンセットの開発と光化学応用
    科学研究費助成事業
    2023年04月01日 - 2026年03月31日
    坪井 泰之, 中田 芳樹, 上野 貢生
    光捕捉用のレーザー光や光化学反応を生起する光の波長は可視域~近赤外域にあるので、シリコンを材料とするなら、100 nm ~ 200 nm程度のナノ構造を付与すればMie共鳴を誘起できる。フェムト秒レーザー超加工によりシリコン結晶表面に100nmスケールの周期的ナノ構造を形成した。特に、多光束ビーム干渉によるLaser Induced Periodic Surface Structure(LIPSS)構造が作製できた。電子線描画法により、様々なナノサイズのシリコン微粒子を様々なサイズのギャップで集積配置した構造体を作製中である。作製されたナノ構造は、電子顕微鏡によりその形状を観察し、FDTD法による電磁場空間分布シミュレーションを行い、Mie共鳴の光波長とその波長における光電場増強度を明らかにしている。
    これらを用いた光ピンセットの性能を詳細に検討している。このようなブラックシリコンの光学応答は,ナノニードルの長さと厚みの比(アスペクト比)に依存する。そして、アスペクト比はエッチング処理時間によりある程度制御できる。このような構造を有する表面近傍の電場増強度を電磁場解析により算出したところ、およそ4~5倍程度であった。これはプラズモンの電場増強度(~104)に比べ圧倒的に低い。一方で、ブラックシリコンへの非共鳴光への照射は、熱発生を伴わない大きな利点を有する。我々は、温度に応答して蛍光強度が変化する色素分子(2',7'-Bis(carboxyethyl)-4 or 5-carboxyfluorescein)を用いて、近赤外光(波長808 nm)照射に伴うブラックシリコンの温度上昇度を計測したところ、熱発生が無視できるほど小さいことを明らかにした。その結果、ナノ構造シリコン(ブラックシリコン)は強い捕捉能を持つことを理論・実験両面から実証した。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 大阪公立大学, 23K26487
  • ナノ物質の高速振動を利用したアフィニティーセンサーの構築
    科学研究費助成事業
    2023年04月01日 - 2026年03月31日
    上野 貢生
    本研究では、物質が吸着した際のコヒーレント音響フォノンシグナルの変化によるアフィニティーセンサーを構築することを目的としている。本研究を推進するためには、最適な周波数の音響フォノンを示す金ナノ構造の設計と物質が吸着した際に音響フォノンが変調される現象の原理を解明する必要がある。そこで、令和5年度は、過渡吸収測定システムの構築と種々の構造設計や構造サイズでコヒーレント音響フォノン計測を行って、その特性を系統的に明らかにすることに専念した。まず、パルス幅17 fsのフェムト秒チタンサファイアレーザーを2つのビームに分割し、ポンプ-プローブ測定系を構築した。金のキャリアを直接励起するためにポンプ光を400 nmとした。一方、プローブ光はプラズモン共鳴バンドの波長シフトに基づくエクスティンクション値の変化を読み取るため800 nmを用いた。また、ロックイン検出を行うことで、最もS/N比の高い金のキャリアダイナミクスとフォノン-フォノン散乱過程におけるコヒーレント音響フォノンシグナルが観測されることが明らかになった。構造の形状やサイズ依存性を測定したところ、プラズモン共鳴スペクトルが若干レーザーと離調している条件で最も音響フォノンシグナルのS/N比が向上することがわかった。異方性の形状を有する構造では、対称振動モードや呼吸振動モードなども同時に観測されるため、フーリエ変換により取り除くことはできるものの、本研究にとっては得られるビートシグナルがプラスに働くわけではないことから、異方性の無い単一構造が最適であることが明らかになった。音響フォノンシグナルの構造サイズ依存性が明確に観測された。しかし、周波数変化は構造サイズに対して系統的な変化であり、金の音速に由来することが確認された。また、原子層堆積装置を用いてアルミナを金の上に成膜すると音響フォノンシグナルの規則的な変化が観測された。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 23K26675
  • 2.5次元構造体の電子・光・エネルギー応用への展開
    科学研究費助成事業
    2021年09月10日 - 2026年03月31日
    上野 貢生, 長汐 晃輔, 大野 雄高, 松尾 吉晃
    研究代表者の上野は、長汐Gと共同で積層型グラフェンナノ構造を作製する技術を構築するとともに、A01班の吾郷Gと共同でグラフェンナノ構造を精緻に作製する方法論を見出し、中赤外波数域におけるプラズモンの分光特性を明らかにすることに成功した。また、光エネルギー変換デバイスを構築するため、A02班の宮田Gと共同で大面積に二硫化モリブデンの薄片を高密度にCVD合成する技術を構築した。
    分担者の長汐は、A01班の渡邊Gと共同で2.5次元構造を利用したフラッシュメモリーを構築し50nsでの動作を実証した。また、超短パルス電圧下でのトンネルバリアh-BNの高い絶縁破壊耐性がその起源であることが分かってきた。統計的な実験を実施することで層状物質の絶縁破壊に対する理解が深まると期待できる。
    大野は、A01班の櫻井Gと共同で高密度ニューロモルフィックチップの創製の研究を新たに開始し、その要素となるナノ積層メモリスタの構築を進めた。ナノ積層構造の骨格となるカーボンナノチューブとスマネンとの相互作用を電界効果トランジスタの特性から調べ、特に、一部の水素をフッ素に置換したモノフルオロスマネンによって、予想に反してカーボンナノチューブに電子がドーピングされることを見出し、カーボンナノチューブに対してスマネンの椀型構造の底面が特異的に吸着し、スマネンの分極によってドーピングが生じることが示唆された。
    松尾は、A02班の松本と共同で、グラフェンライクグラファイト(GLG)へのイオンの貯蔵挙動を調べ、黒鉛には挿入されないナトリウム、マグネシウム等の挿入に成功した。また、GLGの電気化学的アニオン挿入脱離挙動を調べ、これが黒鉛よりも高容量を示すことを明らかにした。さらに、GLGをリチウムイオン電池負極として用いた場合の高入出力特性は、グラフェン内に存在するナノ孔によるものであることを見出した。
    日本学術振興会, 学術変革領域研究(A), 北海道大学, 21H05237
  • 2.5次元物質科学の総括
    科学研究費助成事業
    2021年09月10日 - 2026年03月31日
    吾郷 浩樹, 岡田 晋, 宮田 耕充, 松田 一成, 越野 幹人, 上野 貢生, 長汐 晃輔, 町田 友樹, 高村 由起子, 櫻井 英博, 西堀 英治, 大野 雄高
    学術変革領域研究(A)「2.5次元物質科学:社会変革に向けた物質科学のパラダイムシフト」の領域研究を活性化するための活動を総括班で計画し実行した。
    (1)第1回領域会議として、キックオフミーティングを2021年11月に九州大学筑紫キャンパスにて開催し、領域内研究者が一堂に会することにより領域内の連携を深め、共同研究の推進へと繋げた。また2022年3月には第2回領域会議を新型コロナウィルス感染防止のためオンラインにて開催した。研究者の他にも研究室メンバーも参加し、共同研究の進捗状況を発表、招聘した領域アドバイザーや学術調査官から指導を受けた。他にもオンラインで5回の総括班ミーティングや全体会議、各支援グループにおいても活発にミーティングを実施することで、領域の活動を支える組織のフレームワークの構築に尽力した。
    (2)九州大学グローバルイノベーションセンターに領域事務局を設置、東京大学大学院工学系研究科にサイエンスコミュニケーターを1名雇用、WEBサイトの設置(https://25d-materials.jp/)、ニュースレター第1号・第2号の発行およびTwitterアカウントを開設、STAM誌へレビュー論文を投稿するなど、領域外への情報発信の基盤を整えた。
    (3) 領域内共同研究拠点設備の購入計画を策定・実施することで、共用設備の充実とその積極的な運営を行った。
    (4)公募班の受け入れ体制を構築し、12月に公募説明会を実施するとともに、視聴できなかった方のためホームページで動画を公開した。
    (5)2021年10月にGraphene Flagship、2022年2月に日中韓フォーサイト事業との共催で国際ワークショップを開催するとともに、国際連携セミナーも企画して国際共同研究の促進を図った。
    日本学術振興会, 学術変革領域研究(A), 九州大学, 21H05232
  • キラル遷移金属錯体触媒の可視光励起に基づく不斉合成反応の開発
    科学研究費助成事業
    2021年04月05日 - 2025年03月31日
    澤村 正也, 上野 貢生, 長谷川 淳也
    「可視光駆動型銅触媒不斉アリル位アシル化反応」の展開として、本年度は、アシルシランのα,β-不飽和ケトンおよびアルデヒドへの不斉共役付加反応の基質適用範囲の拡大、生理活性化合物類縁体の合成への応用、理論計算による反応機構の解明について重点的に研究を実施した。光励起状態反応機構の解明に向けては、長谷川グループ、上野グループとの共同研究の打ち合わせを対面会議とオンライン会議により複数回行い、毎回の議論の結果を昨年度から引き続き実施している理論計算に反映させた。理論計算の結果、アリル化反応の場合とは異なる励起状態活性種が生成することや励起3重項状態で炭素-炭素結合が生成する点でもアリル化の場合とはっことなる反応経路を通ることが示唆された。
    アルケンの可視光駆動クロロアミノ化反応、アルキルボレート、光触媒によるα,β-不飽和カルボニル化合物、ビニルホスホニウム塩3成分カップリング反応、光触媒によるトリアルキルホスフィンのP-1,2-転移[3+2]付加環化反応、光触媒によるビニルホスホニウム塩へのアルデヒドのC-H付加反応、光駆動白金触媒による1,2-ジケトンの極性転換アリル化反応などの光触媒関連反応や、異種二核錯体触媒によるアルキニルカルボン酸の7員環形成分子内ヒドロカルボキシル化反応ラクトン化反応やニッケル触媒によるフッ化アリールのホスフィニル化反応に関する研究でも成果をあげ論文発表を行った。
    日本学術振興会, 基盤研究(A), 北海道大学, 21H04680
  • ナノ共振器-プラズモン強結合を用いた高効率光反応システムの開拓とその学理解明
    科学研究費助成事業 特別推進研究
    2018年04月23日 - 2023年03月31日
    三澤 弘明, 笹木 敬司, 村越 敬, Biju V・Pillai, 上野 貢生
    高い量子収率を示すプラズモン誘起電子移動反応を実現するためには、1)強結合系積層ナノ電極の作製と2)局在プラズモン誘起電子移動反応機構の解明が鍵となる。平成30年度は、強結合系積層ナノ電極構造の作製とその分光特性の評価、および時間分解光電子顕微鏡による位相緩和時間の測定に注力した。
    位相緩和時間の計測から強結合系積層ナノ電極は、非強結合電極に比べて位相緩和時間が短いとの結果が得られ、Nat. Nanotechnol., 13, 953 (2018)に報告した。さらに、ナノ共振器長をより短くした積層ナノ構造電極では、金ナノ微粒子の局在プラズモンと反射膜として用いた金フィルムの伝搬型プラズモンとが強結合を形成し、それによって位相緩和時間を能動的に制御できることを初めて見出し、Nat. Commun., 9, 4858 (2018)に報告した。これらは本モーダル型強結合を理解する上で極めて重要な知見を与える意義ある成果であった。また、研究分担者である北大電子研の笹木教授と共同で任意の数の金ナノディスク構造を酸化チタン/金フィルム基板上に作製し、構造密度が強結合に与える影響を検討した。その結果、本モーダル型強結合においては、構造密度によって結合強度を能動的に制御できるとともに、光電変換効率の増強も可能であることを見出し、変換効率向上の糸口を掴んだことは意義深い。また、強結合が蛍光やラマン散乱といった光の放射に与える影響についても検討したところ、非強結合と比較して数倍の増強効果が得られること明らかにし、より高い光電場増強が実現できることを示した。さらに、研究分担者である北大理学研究院の村越教授と共同で光アノードにおける水の酸化反応の中間体をラマン分光により捕捉する実験系を構築した。平成30年度は、非結合系電極を用いて水の酸化反応の中間体が計測できることを実証した。
    日本学術振興会, 特別推進研究, 北海道大学, 18H05205
  • プラズモン誘起化学反応における時間効果の解明と光反応場の創製
    科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    2019年04月01日 - 2022年03月31日
    上野 貢生
    パルス幅17 fsのフェムト秒レーザーをビームスプリッターで2つのビームに分割し、光学遅延回路を含むマイケルソン干渉計により2つのレーザーパルスを同軸上に形成した。顕微鏡下で金ナノ構造の自己相関波形を計測するため、プリズムペア―を用いて分散補償を行い、対物レンズ下で最もパルス幅が短くなるように、BBO結晶からの第二高調波の自己相関波形を測定しながら最適化を行った。様々な構造間距離を有するナノギャップ金2量体構造や金ナノブロック構造の自己相関波形を金からの2光子発光を用いて計測したところ、構造周期によってプラズモンの位相緩和時間が変化することを明らかにした。これは、遠方場でのプラズモンのカップリングに起因しており、これまで位相緩和時間は数 fs以下と考えられてきたナノギャップ金2量体構造(ギャップ幅 5 nm)の位相緩和時間が5-6 fs程度と結合系プラズモニックナノ構造の構造設計次第では長寿命化できることを明らかにした。重要な点は、近接場増強が、プラズモンの位相緩和時間に大きく影響を及ぼしていることを明らかにした点である。一次元フォトニック結晶上に、上記と同じ設計のナノギャップ金2量体構造を作製して、分光特性を検討するとともに、近接場励起スペクトル計測や表面増強ラマン散乱計測を行ってみたところ、プラズモンとフォトニック結晶のストップバンドのバンド端が重なる波長で強い光電場増強を確認した。そこで、干渉型ポンプ&プローブ測定によりプラズモンの位相緩和ダイナミクスを計測してみたところ、自己相関波形のブロード化と顕著なビートシグナルが観測された。これは、フォトニック結晶や金ナノ構造だけでは観測されないことから、強いモード間のカップリングとプラズモン位相緩和の長寿命化を伴っている。このことから、プラズモンの長寿命化が近接場増強に密接に関連していることが明らかになった。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 19H02737
  • 結合系プラズモニックナノ構造による光圧の時空間制御
    科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    2019年04月01日 - 2021年03月31日
    上野 貢生
    ナノギャップ金2量体構造のナノギャップ領域に生じる勾配力によって誘起されるプラズモン誘起光圧を蛍光相関分光法により定量的に計測する方法論を確立した。粒径サイズが40 nmの蛍光性のポリスチレンビーズを用いて、蛍光相関分光計測を行ったところ、濃度から見積もられる共焦点光学顕微鏡のコンフォーカル体積内に存在するポリスチレンビーズの数と蛍光相関分光によって観測された蛍光ビーズの数が良い一致を示した。レーザー光強度依存性を測定したところ、0.1~0.6 KT程度の低いポテンシャル領域で高い直線性が得られることが明らかになった。さまざまなギャップ幅(0, 5, 10, 15, 20, 50 nm)を有するナノギャップ金2量体構造を作製し、ポテンシャルのギャップ幅依存性を検討したところ、ギャップ幅の減少とともにポテンシャルの増大が観測された。このことから、光電場の局在効果(光圧における空間の効果)を明らかにすることに成功した。一方、光圧における時間の効果を明らかにするため、プラズモンの寿命がポテンシャルに与える影響を検討した。ガラス基板上に構造周期が異なるナノギャップ金2量体構造アレイ(ギャップ幅は5 nmで統一)を作製し、プラズモンの寿命(位相緩和時間)をパルス幅17 fsのフェムト秒レーザーを用いた干渉型ポンプ&プローブ測定により測定したところ、構造周期によって散乱光のコンストラクティブ、およびディストラクティブな干渉により大きく寿命が変化することが明らかになった。そこで、蛍光相関分光によりポテンシャル計測を行ったところ、プラズモンの寿命が長い構造においてポテンシャルの増大が観測された。このことから、プラズモンの寿命が光圧に大きく影響を及ぼすことが明らかになった。
    日本学術振興会, 新学術領域研究(研究領域提案型), 北海道大学, 19H04667
  • プラズモン強結合系における電子状態の変調と光反応場への応用
    科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    2017年04月01日 - 2019年03月31日
    上野 貢生
    分子振動モードとプラズモンモードとの強結合が分子の振動状態だけではなく、電子状態にまで影響を及ぼすことを明らかにするために、平成30年度は赤外の幅広い波長域において高い光電場増強効果を示す金属ナノ構造体の構造設計を明らかにした。まず、可視波長域において光ナノ共振器と金ナノ微粒子のプラズモン共鳴がモード強結合を示して、幅広い波長において高い光吸収と光電場増強効果を示すことを明らかにした。特筆すべき点は、プラズモンの位相緩和時間が、モード強結合に基づくプラズモン状態の変調により変化することを明らかにした点である。この可視域におけるモード強結合の原理を利用して、赤外域に共鳴を示す構造設計に展開した。石英基板上に厚さ100 nmの金フィルムを成膜し、その上に厚さ450 nmの酸化チタン層を成膜することで、2400cm-1に共振を示すファブリ・ペロー共振器を構築した。その上に電子ビームリソグラフィー/リフトオフ法により赤外に波長選択的にプラズモン共鳴を示す金ナノチェイン構造を作製したところ、2000~4000cm-1においてモード強結合によりスペクトルが分裂する現象が観測された。また、金ナノチェイン構造の長さにより共鳴波長を変化させたところ、共鳴効率の増大により顕著に赤外光の吸収効率が増大することを吸収スペクトル測定から明らかにした。つまり、赤外の幅広い波長域で高い光吸収と光電場増強効果を示す構造が得られた。この構造に蛍光分子であるEosin Yを成膜したところ、Eosin YのOH伸縮振動と赤外モード強結合が強い相互作用を示し、蛍光寿命が赤外波長における光電場増強の大きさとともに顕著に且つ系統的に短くなること、そして解析の結果、赤外振動モードと光場の相互作用により無放射失活が大きくなることが示され、高次の電子状態に強く影響を及ぼすことが明らかとなった。
    日本学術振興会, 新学術領域研究(研究領域提案型), 北海道大学, 17H05245
  • 制御されたナノ空間を利用した光圧による物質捕捉と光化学反応場の構築
    科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    2017年04月01日 - 2019年03月31日
    上野 貢生
    ナノ物質を高効率にトラップするためには光を強く閉じ込めるナノ構造体の設計が重要である。本研究では、結合系プラズモニックナノ構造による高効率な光トラッピングと光反応場の構築を行った。金属/誘電体/金属の積層ナノ構造が、四重極子共鳴により高い光電場増強を示すことから、A03班の笹木グループと連携して蛍光ビーズを用いたプラズモンオプティカルトラッピング系を構築し、遠方場でのスペクトルでは観測されないダークな四重極共鳴モードによるオプティカルトラッピング特性を明らかにした。プラズモンオプティカルトラッピングの作用スペクトルを測定したところ、Fanoディップ波長より若干短波長域において直径100 nmの蛍光ビーズが強くトラップされることがわかり、当初の研究目標であるダークプラズモンによる高効率なオプティカルトラッピングの実証に成功した。また、金/誘電体/金ナノ構造の上下の構造のサイズ比により近接場結合の度合いを制御することでプラズモンの寿命を3倍長寿命化することに成功し、高効率な光反応場を構築した。また、金属ナノ構造/誘電体/金フィルム構造の構造設計により、種々の結合系プラズモニックナノ構造の創製に成功した。初めに、A03班の笹木グループと共同で、金ナノ微粒子/酸化チタン/金フィルム構造が、金ナノ微粒子の局在プラズモンと酸化チタン/金フィルム基板に誘起されるファブリ・ペローナノ共振器モードとのモード強結合を示すことや光化学反応を促進することを明らかにした。また、同様の金属ナノ構造/誘電体/金フィルム構造により金フィルム上の表面プラズモンと金ナノ構造の局在プラズモンがモード強結合を示すことを明らかにした。さらに、モード強結合系においてもプラズモンと結合する光学モードの寿命により、プラズモンの寿命を自在に制御することが可能であることを明らかにした。
    日本学術振興会, 新学術領域研究(研究領域提案型), 北海道大学, 17H05459
  • 金属を担持した光触媒系界面反応の高分解能in-situ計測
    科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    2015年04月01日 - 2018年03月31日
    上野 貢生
    本研究では、酸化チタン基板上に金ナノ粒子を担持することにより金ナノ微粒子から酸化チタン電子伝導帯へのホットエレクトロントランスファーを利用した光触媒反応系を構築した。各種分光法や透過電子顕微鏡を用いて光触媒反応過程を計測し、界面におけるホットエレクトロントランスファーのダイナミクスや正孔による反応機構について議論するとともに、高効率な光触媒の設計指針を明らかにした。
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 15K04589
  • 制御された金属ナノ構造による励起子ポラリトン素過程の追跡と反応場への応用
    科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)
    2015年04月01日 - 2017年03月31日
    上野 貢生
    平成28年度は、ポルフィリンのJ会合体分子をアルミニウムナノ構造体近傍に配置すると、ポルフィリンのSoret帯とQ帯の波長でそれぞれプラズモンと強結合を示し、分散カーブにおける半交差な振る舞いと結合振動子モデルによる解析に加えて、励起スペクトルの測定からSoret帯およびQ帯のそれぞれの強結合系でハイブリッド準位の形成に基づくスペクトル変調が観測された。このことから、電子状態が変調していることを実験的に明らかにすることに成功した。特筆すべきは、Soret帯とQ帯の2つの波長域において電子状態の変調によるスペクトルの広帯域化がそれぞれ観測され、太陽光の幅広い波長をアンテナする光反応場として有用であることを示した。
    同様の考え方を結合プラズモニック系にも適用した。複雑な形状の金dolmen構造(結合プラズモニック構造)はスペクトルが分裂することが知られており、これまで双極子モードと四重極子モード間の干渉(ファノ共鳴)に基づいてスペクトルに凹みが生じ、スペクトルが分裂すると考えられてきた。本研究では、波長可変レーザーと光電子顕微鏡を用いて金dolmen構造における光電子放出の作用スペクトルを測定したところ、強結合に基づいてハイブリッド準位が形成されたこと、そしてハイブリッド準位の形成に基づきスペクトルが分裂することを明らかにした。したがって、電子状態や振動状態の変調、そして禁制遷移モードのダイナミクスを明らかにするという観点、そして電子状態の変調による光吸収波長の広帯域化、禁制遷移モードが示す高い光閉じ込め効果によって創出される有用な光反応場の構築という観点から、強結合に基づいて電子状態を変調し高効率な光化学反応場を構築する当初の目的を達成した。
    日本学術振興会, 新学術領域研究(研究領域提案型), 北海道大学, 15H01073
  • 高効率な光捕集・局在化を可能にする光アンテナの開発とその太陽電池への応用
    科学研究費助成事業 基盤研究(S)
    2011年04月01日 - 2016年03月31日
    三澤 弘明, 村越 敬, 上野 貢生, 村澤 尚樹, 押切 友也, 上原 日和, ルカルメ オリビエ
    局在プラズモンを示す金ナノ構造を光アンテナとした光電変換系において、水が酸化的に分解して酸素が発生することを明らかにした。また、光電気化学重合反応を用いて本水分解が金ナノ構造/半導体基板/水の接触するナノ空間で生起することを明らかにした。これらの成果を人工光合成へ展開し、可視光による水の完全分解、並びにアンモニア合成にも成功した。一方、独自に開発した超高速時間分解光電子顕微鏡を活用し、四重極子プラズモンや局在プラズモンと分子系との強結合状態を利用した光アンテナが高い光閉じ込め機能を有することも明らかにした。さらに、ホール移動層に酸化ニッケルを用いた全固体プラズモン太陽電池の創出にも成功した。
    日本学術振興会, 基盤研究(S), 北海道大学, 23225006
  • 10nm-nodeに向けた非接触光リソグラフィー技術の開発
    科学研究費助成事業 若手研究(A)
    2011年04月01日 - 2014年03月31日
    上野 貢生
    金や銀などの局在表面プラズモン共鳴を示す金属ナノ構造が光をシングルナノメートルの微小な空間に局在化させることが可能な特徴を利用して、ポジ型フォトレジスト膜上にナノパターンを高精細に転写露光するナノ光リソグラフィー技術を構築した。その結果、未踏の10 nm-nodeの非接触光リソグラフィー技術の原理検証を達成することに成功した。
    日本学術振興会, 若手研究(A), 北海道大学, 23686026
  • ナノギャップ金属構造を利用した赤外・テラヘルツ光検出システム
    戦略的な研究開発の推進 戦略的創造研究推進事業 さきがけ
    2010年 - 2013年
    上野 貢生
    ナノギャップを有する金属ナノ構造を用いて、従来とは全く異なった原理で動作する赤外・テラヘルツ(THz)波を周波数選択的に検出する光センサーを構築することを目的とします。数nm以下のナノギャップ金属構造が示す高い光電場増強に基づく急峻な電場勾配を利用して、輻射力による高分子ゲルの体積相転移を誘起し、MEMS技術を利用した光の物理的計測方法を確立して赤外・テラヘルツ波の検出に応用します。
    科学技術振興機構, 北海道大学, 研究代表者
  • 金属ナノ構造によるアップコンバージョンシステムの構築
    科学研究費助成事業 若手研究(B)
    2008年 - 2010年
    上野 貢生
    構造間距離が数nmのナノギャップを有する金属ダイマー構造を精緻に作製し、プラズモンの共鳴エネルギー移動の本質を光学特性や種々の計測、および時間領域差分法により詳細に明らかにした。また、通常では起こらないエネルギーの低い近赤外光照射によって発光や光電流を観測することに成功し、当初の計画通り、研究を達成することに成功した。
    日本学術振興会, 若手研究(B), 北海道大学, 20710068
  • ナノ光リソグラフィーによる金属ナノパターン作製技術の開発
    戦略的な研究開発の推進 戦略的創造研究推進事業 さきがけ
    2007年 - 2010年
    上野 貢生
    シングルナノメートルの加工分解能を有するナノ光リソグラフィー技術を開発し、プラズモニックデバイスやナノ電気回路として動作する金属ナノパターンを作製する技術を確立します。高い光電場増強を示すナノギャップ金構造をフォトマスクとして、近赤外光による局所的なフォトレジストの非線形光反応を誘起し、高分解能リソグラフィーを実現する従来とは異なる動作原理に基づいた光加工技術を開発します。
    科学技術振興機構, 北海道大学, 研究代表者
  • 金属ナノ構造を用いた光局在場の創製と光化学反応への応用
    科学研究費助成事業 特定領域研究
    2007年 - 2010年
    三澤 弘明, 上野 貢生, 村澤 尚樹
    我々は、照射された光を高効率に分子に吸収させる「光の有効利用」という新しい概念を光化学の研究に導入した。光と分子を強く結合させ、光の有効利用を可能にする光反応場として、局在プラズモン共鳴によって高い光電場増強効果を示す金属のナノ構造体に着目した。金属ナノ構造が示す光電場増強効果は、分子の光励起を高効率に誘起し、微弱な光によるフォトレジスト材料の空間選択的な2光子重合反応を実現した。また,金ナノ構造を配列した酸化チタン電極を用いた光電気化学測定により、可視・近赤外光を光電変換できることも明らかにした.
    日本学術振興会, 特定領域研究, 北海道大学, 19049001
  • ナノギャップ金属構造が示す光電場増強機構の解明
    科学研究費助成事業 若手研究(スタートアップ)
    2006年 - 2007年
    上野 貢生
    ガラス基板上に電子線リソグラフィー/リフトオフ技術により、可視域から近赤外領域にプラズモン共鳴バンドを有する金ナノ構造の作製を行った。作製した金ナノ構造は、縦方向と横方向の長さが同じ(アスペクト比:1,厚みは40nmと一定とした)で、構造のサイズのみ10nm(一辺)ずつ変化させることにより、単一ピークのプラズモン共鳴スペクトルが約20nmずつ波長シフトする設計とした(構造サイズが大きくなると、共鳴スペクトルは長波長シフト)。作製した構造体に、センター波長800nmのフェムト秒レーザービーム(〜10μW)を集光照射し、得られた金構造からの2光子励起発光強度を計測した。金2光子励起発光強度は、構造のサイズが140nmの時に最大となり、金ナノ構造の厚みを30,20,10nmと薄く設定して作製すると、発光強度が最大となる構造体のサイズが、120nm,80nm,60nmと小さくなることが明らかになった。これは、金ナノ構造の厚みが薄くなると、プラズモン共鳴波長は長波長シフトすることから、構造サイズが小さい構造において光電場増強がより大きく誘起されたものと考えられる。以上の結果から、金2光子励起発光強度は、入射レーザー光の波長とプラズモン共鳴スペクトルのピーク波長が一致するときに最大となることが明らかになった。一方、表面増強ラマン散乱(SERS)強度は、入射レーザー光の波長では最大とならずに、散乱光波長と入射光波長の中間にプラズモン共鳴バンドを有する金ナノ構造体で最大となることが明らかになった。これまでのSERS分光法に関する理論的研究から、SERS強度は入射光電場強度だけではなく、散乱光輻射場における電磁的な増強効果においてもシグナルが増大することが示唆されているが、本研究では実験的に散乱光の輻射効率がSERS強度に及ぼすことを明らかにすることに成功した。
    日本学術振興会, 若手研究(スタートアップ), 北海道大学, 18850001
  • 金属ナノ周期構造を用いた高感度DNAアレイチップの開発
    科学研究費助成事業 基盤研究(B)
    2005年 - 2007年
    三澤 弘明, 上野 貢生
    ガラスなどの固体基板上に電子線リソグラフィー/リフトオフ技術により、金属ナノ周期構造をシングルナノメートルの加工分解能で作製する技術を確立した。作製した金ナノ構造のプラズモン共鳴スペクトルが、構造体表面の誘電率変化に対して鋭敏に応答する光学特性を利用して、DNAのハイブリダイゼーションを共鳴スペクトルの波長シフトにより系統的にセンシングすることが可能であることを明らかにした。また、上記の方法だけでなく、金属ナノ構造がプラズモン増強により構造表面に光電場を著しく増大(入射光電場強度の〓10^5倍増強)させる効果を有する特徴を利用して、表面増強ラマン散乱(SERS)分光法を用いた化学/バイオセンサーチップの構築を行った。本研究では、金2光子励起発光計測、表面増強ラマン散乱計測、ならびに金属ナノ構造の光学特性とコンピューターシミュレーションによる金属構造の電場強度プロファイル解析を組み合わせることにより、金属ナノ構造の設計が光電場増強に及ぼす効果を詳細に明らかにし、高い電場増強を示す構造設計の最適化を導き出すことに成功した。また、半導体加工技術により金属ナノ構造を精密に作製することによってはじめて、ピリジンなどのSERS活性分子で、SERS強度がバルクに比べて10^<10>倍増強することを再現性高く観測することが可能であることを明らかにした。さらに、金属ナノ周期構造基板をレーザー干渉露光法により大面積に作製する方法論を示し、本成果により色素分子をラベルしなくてはならない従来型のDNAチップとは全く異なる検出原理に基づいた信頼性が高く、また低コストで迅速な遺伝子診断を可能にするDNAチップデバイスの開発が近い将来アウトプットされるものと期待される。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 17360110
  • 集積化マイクロチャンネルチップを用いた新規分析システムの構築
    科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
    2004年 - 2006年
    上野 貢生
    マイクロチャンネルチップ内に機能を集積するために、金属ナノ構造体による局在表面プラズモンを用いた分析システムの構築を行った。ガラス基板上に電子線リソグラフィー/リフトオフ技術を用いることにより数10nm〜数100nmサイズの金属のナノ構造体を作製した。局在表面プラズモンの光学特性は、構造体のサイズや形状、あるいは周囲の誘電率や構造間距離などによって鋭敏に変化する。そこで、本研究では、この原理を利用することによる分析システム構築の一例としてDNAチップの創製を試みた。構造体上にDNA分子を固定してハイブリダイゼーションを誘起することにより、反応に基づく誘電率変化から局在表面プラズモンのスペクトルがシフトし、高感度にDNAを検出可能な新しい発想のマイクロアレイチップを構築すること可能である。実験では、構造体へのDNA分子の固定化は3'末端にチオール基を有する合成ヌクレオチドを金構造体との共有結合により行い、一本鎖DNAを固定化した構造体上にターゲットDNAのバッファー溶液を滴下することによりハイブリダイゼーションを誘起したところ、ハイブリダイゼーション前後において金属ナノ構造体のスペクトルの顕著なシフトが観測された。また、作製した金属ナノ構造体を用いて、表面増強ラマン散乱分光法による計測システムの構築を行った。ラマン散乱測定は、振動分光法であり分子分析能力が高いため定性的な分析チップを構築することが可能である。特に、金属構造体の構造間距離がナノメートルオーダーで近接した場合、ギャップ内に存在する分子のラマン散乱強度が著しく増強されることが知られているが、その原理を再現性高く計測するのは従来の微粒子を集積する方法では困難であった。本研究では、微細加工による構造体制御によりラマン散乱増強の近接場効果やプラズモンバンドと励起レーザー光波長の関係について詳細に明らかにすることに成功した。
    日本学術振興会, 特別研究員奨励費, 北海道大学, 04J08871
  • マイクロ電気化学チャンネルチップを用いた微小化学システムの構築
    科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
    2001年 - 2003年
    上野 貢生
    電極内蔵型ポリマー基板マイクロチャンネルチップ(流路幅100μm、深さ20μm)の作製を行った。作製した電極チップを用いてピレン分子を一段階でシアノ化する化学反応をマイクロチップ中で行い、その特徴について明らかにした。本研究では、ラージスケールの反応をアセトニトリル-水の混合溶媒系で行う場合とマイクロチップ中で反応を同様の混合溶媒系で行う場合およびマイクロチップ中で油水界面を反応場として用いた場合の3種類の実験により比較検討を行った。反応スキームは、電極上で電解生成されたピレンカチオンラジカルがシアン化物イオンと求核置換反応して、1-シアノピレンが生成するものと考えられる。ラージスケールの反応では、一時間反応後GC-MSの測定から原料であるピレンはほぼ消費され、新たに生成物であるシアノピレンが41%、副生成物としてジシアノピレンが14%生成することが確認された。一方、同様の条件でマイクロチャンネルチップ中において電解反応を行った場合、最適流速条件でチャンネルチップ中の溶液の滞留時間1分ほどで生成物が60%副生成物が4%生成することがわかった。生成物の収率の向上はマイクロチップ中で効率良く電解反応が行われたためであるが、生成物の選択率がチップ中のほうが向上したところがマイクロチップ反応の特徴的な点である。一方、油水界面反応では生成物の相(有機相)をチャンネル出口において分離することが可能であるため、油水界面反応-溶媒抽出系により反応の自動化が行うことが可能であることを明らかにした。また、油水界面反応では物質移動の数値シミュレーションや顕微分光測定による反応中間体の追跡により、反応の律速段階の理解や反応速度論的な研究に応用が可能であることを示し、マイクロチップを用いた化学システムの構築と幅広い化学研究に展開が可能であることを実験的に明ちかにした。
    日本学術振興会, 特別研究員奨励費, 北海道大学, 01J10952
  • 金属ナノ構造の物理・物理化学とその化学的応用               
    競争的資金
  • Physics and Physical Chemistry of Metal Nanostructures, and Its Chemical Application               
    競争的資金

産業財産権