竹内 康浩 (タケウチ ヤスヒロ)
文学研究院 人文学部門 表現文化論分野 | 教授 |
Last Updated :2025/05/14
■研究者基本情報
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J-Global ID
■経歴
経歴
■研究活動情報
受賞
- 2022年08月, 財団法人新潮文芸振興会, 第21回小林秀雄賞
出版社・新聞社・財団等の賞 - 2019年02月, アメリカ探偵作家クラブ, エドガー賞ノミネート
マークX―誰がハック・フィンの父を殺したか
竹内 康浩 - 2015年02月, 福原記念英米文学研究助成基金, 福原賞(研究助成部門)
マーク・トウェインのトラウマ的経験と作品の諸相
竹内 康浩 - 1993年, 日本英文学会, 日本英文学会新人賞
ポー解読:穴と反転
竹内康浩, 日本国
論文
- エドガー・アラン・ポーの探偵小説と完全犯罪
竹内康浩
北海道アメリカ文学, 39, 2, 27, 2023年08月, [査読有り], [招待有り]
研究論文(学術雑誌) - デュパン対ホームズ対アーチー:トウェインの探偵小説の闇
竹内康浩
マーク・トウェイン 研究と批評, 21, 34, 40, 2022年06月, [招待有り]
研究論文(学術雑誌) - A Hidden Murder in Edgar Allan Poe's "'Thou Art the Man'"
Yasuhiro Takeuchi
Mississippi Quarterly, 73, 4, 527, 548, Project Muse, 2021年, [査読有り]
英語, 研究論文(学術雑誌) - The Imbalanced Trade for Salvation: Money in Flannery O’Connor’s Wise Blood
TAKEUCHI Yasuhiro
Mississippi Quarterly, 72, 2, 233, 252, Johns Hopkins University Press, 2019年, [査読有り], [国際誌]
英語, 研究論文(学術雑誌) - Gatsby’s Green Light as a Traffic Signal: F. Scott Fitzgerald’s Motive Force
TAKEUCHI Yasuhiro
F. Scott Fitzgerald Review, 14, 198, 214, Penn State University Press, 2016年11月, [査読有り]
英語, 研究論文(学術雑誌), F. Scott Fitzgerald's use of vehicles in The Great Gatsby constitutes more than just a symbolic motif: cars, trains, boats, and other means of transportation structure the plot, providing the narrative with motive force and mobility. Characters are brought together and torn apart through changes to the scenario, when vehicles actually start and stop. The characters' ephemeral relationships start with their riding in the same vehicle, and end-or are brought back to reality-when the vehicle comes to a halt. Within this structure, the novel's central motif, the "green light," acts as a traffic signal, giving Gatsby the go-ahead to move onward to create the short-lived world founded upon his belief in mobility. Appropriately, the appearance of Gatsby's natural father following the final crash, a symbolic accident denoting the end of his dream, indicates what Gatsby had essentially tried to " move" all along: his unchangeable breeding and past. This article taps into the possibility of reevaluating time and breeding-the conventional themes in Fitzgerald's novel-from the perspective of literal vehicle mobility, which provides important structure to Nick's narrative. - Tracking Twain: The Unfulfilled Pursuit in Mark Twain’s Detective Fiction
TAKEUCHI Yasuhiro
American Literary Realism, 48, 2, 166, 182, University of Illinois Press, 2016年01月, [査読有り], [国際誌]
英語, 研究論文(学術雑誌) - 負債という祝福:Flannery O’ConnorのWise Bloodにおける救済のエコノミー
竹内 康浩
英文学研究支部統合号, 7, 7, 16, 一般財団法人日本英文学会, 2014年12月, [査読有り]
日本語, 研究論文(学術雑誌) - 霧の中で起きたこと:「筏の章」はなぜ『ハックルベリー・フィンの冒険』から削除されたのか
竹内 康浩
英文学研究支部統合号, 6, 7, 16, 一般財団法人日本英文学会, 2013年12月, [査読有り]
日本語, 研究論文(学術雑誌) - Twain’s Trauma and the Unresolved Murder of Huckleberry Finn’s Father
TAKEUCHI Yasuhiro
Literary Imagination, 15, 3, 259, 274, Oxford University Press, 2013年11月, [査読有り]
英語, 研究論文(学術雑誌) - A Fascination with Corpses: Mark Twain's "Shameful Behavior"
TAKEUCHI Yasuhiro
The Midwest Quarterly, 54, 2, 202, 217, Pittsburg State University, 2013年01月, [査読有り], [国際誌]
英語, 研究論文(学術雑誌) - ライ麦畑に泳ぐ魚(イクトュス)
竹内康浩
『もっと知りたい世界の名作シリーズ3 ライ麦畑でつかまえて』 ミネルヴァ書房, 2006年, [招待有り] - The Zen archery of Holden-Caulfield (Character from The 'Catcher in the Rye' by J.D. Salinger)
TAKEUCHI Yasuhiro
ENGLISH LANGUAGE NOTES, 42, 1, 55, 63, Duke University Press, 2004年09月, [査読有り]
英語, 研究論文(学術雑誌) - Salinger's the catcher in the rye
Yasuhiro Takeuchi
Explicator, 60, 3, 164, 166, 2002年01月01日, [査読有り]
英語, 研究論文(学術雑誌) - The Burning Carousel and the Carnivalesque: Subversion and Transcendence at the Close of The Catcher in the Rye
TAKEUCHI Yasuhiro
Studies in the Novel, 34, 2, 320, 336, Johns Hopkins University Press, 2002年, [査読有り]
研究論文(学術雑誌) - 解放する掟--『ハックルベリー・フィンの冒険』における人間を消す三つの方法
竹内康浩
『読み直すアメリカ文学』 研究社, 1996年, [招待有り] - 乗り物と替え玉:The Great Gatsbyを動かす法則
竹内 康浩
英文學研究, 70, 1, 35, 47, 一般財団法人日本英文学会, 1993年09月, [査読有り]
日本語, 研究論文(学術雑誌)
その他活動・業績
- 魚眼図 勝利は過大評価されている
竹内康浩, 北海道新聞夕刊, 2023年02月10日 - 魚眼図 身から出たさび
北海道新聞, 2022年11月22日, [招待有り] - 魚眼図 小林秀雄賞までの道のり
北海道新聞夕刊, 2022年09月26日, [招待有り] - 魚眼図 やってはいけないこと
竹内康浩, 北海道新聞, 2022年07月12日, [招待有り] - 魚眼図 サローヤンは泣かせる
竹内康浩, 北海道新聞, 2022年05月10日, [招待有り] - 魚眼図 犯人はお前だ
竹内康浩, 北海道新聞, 2022年03月01日, [招待有り] - 北の文化
竹内康浩, 朝日新聞, 2022年01月20日, [招待有り]
記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) - 魚眼図 じらされる人
竹内康浩, 北海道新聞, 2021年12月10日, [招待有り] - 銃声――サリンジャーの残した謎
竹内康浩, 新潮 10月号, 1401, 167, 175, 2021年09月, [招待有り]
記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) - 魚眼図 節約の夏
竹内康浩, 北海道新聞, 2021年08月06日, [招待有り] - 魚眼図 偶然の魔力
北海道新聞, 2021年06月11日, [招待有り] - 魚眼図 高校生と金子みすゞを読む
竹内康浩, 北海道新聞, 2021年04月12日, [招待有り]
記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) - 書評 ルイザ・メイ・オルコット著 大串尚代訳 『仮面の陰に』
竹内康浩, 北海道新聞, 2021年04月11日, [招待有り]
書評論文,書評,文献紹介等 - 魚眼図 幸福の蝶
竹内康浩, 北海道新聞, 2021年02月15日, [招待有り]
記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) - 魚眼図 コロコロ
竹内康浩, 北海道新聞, 2020年12月04日, [招待有り] - 魚眼図 壊れた冷蔵庫
竹内康浩, 北海道新聞, 2020年10月02日, [招待有り] - 書評 マーク・トウェイン著 里内克巳 訳 『〈連載版〉マーク・トウェイン自伝』
竹内康浩, 図書新聞, 2020年08月, [招待有り]
書評論文,書評,文献紹介等 - 魚眼図 北大を知らぬ北大生
竹内康浩, 2020年07月10日, [招待有り]
記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) - 魚眼図 機械翻訳
竹内康浩, 2020年05月18日, [招待有り]
記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) - 書評 秋元孝文著 『ドルと紙幣のアメリカ文学』
竹内康浩, アメリカ文学研究, 56, 94, 99, 2020年03月, [招待有り]
書評論文,書評,文献紹介等 - 魚眼図 最後の手紙
竹内康浩, 北海道新聞, 2020年03月, [招待有り], [筆頭著者]
記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) - 魚眼図 サリンジャー没後10年
竹内 康浩, 北海道新聞 夕刊, 2019年12月, [招待有り]
日本語, 記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) - 魚眼図 「基礎英語」礼賛
竹内 康浩, 北海道新聞 夕刊, 2019年10月, [招待有り] - 北の文化
竹内 康浩, 朝日新聞, 2019年10月, [招待有り]
日本語, 記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) - 魚眼図 『星の王子様』降臨
竹内 康浩, 北海道新聞 夕刊, 2019年08月, [招待有り] - 読書日和 見田宗介著『宮沢賢治:存在の祭りの中へ』
竹内 康浩, 共同通信社, 2019年08月, [招待有り]
日本語 - 魚眼図 犬と恐妻家
竹内 康浩, 北海道新聞 夕刊, 2019年06月, [招待有り]
英語, 記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) - 書評 Paula Harrington and Ronald Jenn, Mark Twain & France: The Making of a New American Identity (U of Missouri P, 2017)
竹内 康浩, マーク・トウェイン 研究と批評, 18, 33, 35, 2019年06月, [招待有り]
日本語, 書評論文,書評,文献紹介等 - エドガー賞候補 妄想の3ヶ月
竹内 康浩, 北海道新聞 夕刊, 4, 4, 2019年05月, [招待有り]
日本語, 会議報告等 - 書評 『サリンジャー』
竹内 康浩, 日本経済新聞, 2015年07月, [招待有り]
日本語, 書評論文,書評,文献紹介等 - 深読み三一二研究室
竹内 康浩, 文學界, 69, 6, 151, 152, 2015年05月, [招待有り]
日本語, 記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) - マーク・トウェイン没後100年
竹内 康浩, 北海道新聞, 7, 7, 2010年04月, [招待有り]
日本語, 記事・総説・解説・論説等(商業誌、新聞、ウェブメディア) - 書評 『クラフツマン・サリンジャーの挑戦 サリンジャーなんかこわくない――テキストの重層化とポストモダン的試み』
竹内 康浩, 英語青年, 150, 7, 2004年07月, [招待有り] - 翻訳書書評 J・D・サリンジャー作/村上春樹訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』
竹内 康浩, 英語青年, 149, 5, 315, 315, 2003年05月, [招待有り]
書評論文,書評,文献紹介等 - John Thomas Irwin, The Mystery to a Solution: Poe, Borges, and the Analytic Detective Story Baltimore, The Johns Hopkins U.P., 1994, xxiii+482 pp.
竹内 康浩, 英文學研究, 72, 2, 304, 309, 1996年01月31日
一般財団法人日本英文学会, 日本語
書籍等出版物
- 〔主要な業績〕Poe's Perfect Crimes: Hidden Plots in the Dupin Stories and Others
Yasuhiro Takeuchi
McFarland, 2025年02月20日, 1476696004, 169, [単著] - 〔主要な業績〕Mark X: Who Killed Huck Finn's Father?
Yasuhiro Takeuchi
Routledge, 2019年02月28日, 0367248352, 246, 英語, [単著] - 悩める人間:人文学の処方箋
竹内 康浩, 仁平 尊明, 書くべきか、書かざるべきか:マーク・トウェインの悩み
北海道大学出版会, 2017年06月21日, 4832934007, 257, 107-141, 日本語, [共著] - 〔主要な業績〕The Catcher in the Rye (Critical Insights)
Dewey, Joseph
Salem Pr Inc, 2011年09月15日, 9781587658372, 351, 英語, [分担執筆] - 〔主要な業績〕J. D. Salinger's The Catcher in the Rye (Bloom's Modern Critical Interpretations)
Bloom, Harold
Chelsea House Pub, 2009年01月01日, 9781604131833, 215, 英語, [分担執筆] - The Catcher in the Rye (Bloom's Guides)
Bloom, Harold
Chelsea House Pub, 2007年01月15日, 9780791092965, 128, 英語, [分担執筆]
講演・口頭発表等
- エドガー・アラン・ポーの探偵物語と完全犯罪
竹内康浩
日本アメリカ文学会北海道支部大会特別講演, 2022年12月17日, 口頭発表(招待・特別)
[招待講演] - 文学を探偵デュパンみたいに読むならば
竹内康浩
UHB大学講演, 2022年05月24日, 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等
[招待講演] - ポーとドイルを読むトウェイン
竹内 康浩
日本マーク・トウェイン協会第25回全国大会, 2021年11月06日, シンポジウム・ワークショップパネル(指名)
マーク・トウェインはエドガー・アラン・ポーのデュパン物語を激賞する一方で、新星コナン・ドイルのシャーロック・ホームズものはお気に召さなかったようだ。トウェイン自身に探偵小説家への憧れがあったことは疑い得ない。『トム・ソーヤの冒険』も殺人事件とその解決を巡る物語だし、『まぬけのウィルソン』もそうだ。最高の探偵小説を書きたいという野心が常にくすぶっていた。だからホームズの物語を読んだとき、してやられたと思ったのかもしれない。だが、A Double Barrelled Detective Story (1902)で、ホームズを作中人物として登場させ、自らの探偵(役を担う人物)と対決させたとき、そこにあったのは単なるドイルへの嫉妬心やライバル心だけだったのだろうか。より本質的な理由――事件の解決方法への不満――があったのではないか。トウェインが考えた正当な解決方法の裏に血縁の主題へのこだわりがあったことを、ポーとドイルの探偵たちの手法と比較しながら確認していきたい。, [招待講演] - ハックルベリー未解決殺人事件の深層
竹内 康浩
東北学院大学英語英文学研究所学術講演会, 2015年06月20日, 日本語, 公開講演,セミナー,チュートリアル,講習,講義等
[招待講演], [国内会議]
共同研究・競争的資金等の研究課題
- 戦後アメリカにおけるサリンジャーの隠遁と創作の意義――遺稿の受容に向けて
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
2020年04月 - 2024年03月
竹内 康浩
令和3年度は、令和2年度に引き続き、パンデミックのためにアメリカ合衆国における調査・資料収集が困難となったため、国内において調査可能な資料の収集および研究を行うと同時に、さらには現時点である程度解明された研究成果の一部を、新潮社より『謎ときサリンジャー』(共著)のなかで発表することができた。
その中で特に、日本の代表的仏教研究者であり、かつサリンジャーが強い影響を受けたことが知られている鈴木大拙の著作、あるいはサリンジャーが強い関心を持っていた禅仏教一般に関わる資料に基づいて、主にサリンジャーの短編作品について調査研究を行った成果を発表した。なかでもとりわけ、短編作品「テディー」において引用された芭蕉の二つの俳句の解釈について、鈴木大拙の芭蕉論が影響を与えている可能性を論じた部分は、新しい発見であるだけでなく、今後のサリンジャー研究に寄与するものと思われる。その中で中心的に議論をしたサリンジャーの時間観は、さらに広く文化的・哲学的文脈の中でよりよく理解できる可能性があり、その点においては、あらたな課題が明らかになったと言うこともできるであろう。鈴木大拙の思想も様々な影響下において生まれてきたのであるから、それは当然の課題でもある。
また、以上述べた研究成果(『謎ときサリンジャー』)に対する社会的な反応は大きく、複数の全国紙において書評されただけでなく、さまざまなメディア(週刊誌・月刊誌・ラジオ・ウェブ等)において、学者・翻訳者・批評家・芸能人など多くの文化人が概ね好意的なコメントを寄せている。
日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 研究代表者, 20K00407 - 国家の罪から個人の罪へ――マーク・トウェインの創作原理の解明
科学研究費
2016年04月 - 2019年03月
竹内 康浩
日本学術振興会, 研究代表者, 競争的資金 - アメリカ文学における象徴
日本学術振興会海外特別研究員
1997年02月 - 1999年01月
日本学術振興会, 競争的資金
社会貢献活動
メディア報道
- Book News 「謎とき エドガー・アラン・ポー」竹内康浩著
2025年05月13日
日刊ゲンダイ
「謎とき エドガー・アラン・ポー」竹内康浩著
推理小説の元祖・ポーは「モルグ街の殺人」などの自作について「どこがすごいのだろうね?」と言ったが、実は自信をもっていたのだろう。推理小説は作家が出題者であり解答者でもあるが、その1人2役が問題なら、謎を作る人と解く人を分ければいいと。作家は事件の謎を提出するだけで、謎解きは読者に任せねばならないと考えて、「犯人はお前だ」を書いた。
ラトルボローの町でシャトルワージーという人物が殺される事件が発生する。この作品の最後に犯人が自白して事件は解決したように見えるが、著者はこの自白は、実は自白ではなかったと考える。
ポーの作品に隠された「巧妙な完全犯罪」を解明する。
(新潮社 1815円), [新聞・雑誌] - 〈読書ナビ 訪問〉 「文学探偵」ポーのたくらみ暴く 取材・中村公美
2025年05月04日
本人以外
北海道新聞
「文学探偵」 ポーのたくらみ暴く
著者は北大大学院教授で、アメリカ文学を専門にする研究者。本書は「推理小説の始祖」として知られるエドガー・アラン・ポーが死の5年前に発表した「犯人はお前だ」を軸に、読者に挑戦するかのようなポーのたくらみを説得力ある文章で証明していく。
新作では文体のトリックを指摘しながら、文中で示された人物とは別の真犯人をあぶり出す。さらに「のこぎり山奇談」「アッシャー家の崩壊」などの作品にも踏み込み、その真相を解き明かす。
著者は文学作品に隠された真実を見破る論文や著書を複数発表し「文学探偵」の異名を持つ。前作の共著「謎ときサリンジャー」(新潮選書)では、主人公の自殺とされる結末の陰にあるトリックを見破り、小林秀雄賞を受賞したほか、アメリカ探偵作家クラブ賞の評論・評伝部門で日本人初の最終候補となった。
「視線をずらしてもう一度読み込むこと、ほかの人物との関係に注目することで、新たな発見が生まれる」と証明のこつを明かす。
「何かを純粋に楽しむ没入感が文学や芸術の素晴らしさ」と考える。「だからこそ、本を読むことで得がたい幸福感を味わうことができる。僕も含めて、一部の人にとって(本は)この世にとどまっていられるよりどころなのかもしれません」
本書も含め、著書では「死」というテーマに向き合ってきた。そこには「死や罪など、解決が難しい問題に向き合い続けるのが文学者」という思いがある。
1965年愛知県生まれ。その後道内に移り小学校4年までオホーツク管内美幌町、恵庭市で過ごす。東大卒。朝日新聞記者を経て東大大学院人文科学研究科修士課程修了。東大助手、ジョンズ・ホプキンズ大客員研究員、奈良女子大助教授を経て2008年から現職。
記者から研究者に転身したのは「自信を持って語れる分野をみつけ、取材するよりされる側になろうと思った」から。宮沢賢治の作品を愛する。「いつか英語圏の人たちに賢治の作品の魅力を伝えることができたら」と考えている。
( 中村公美 ), [新聞・雑誌] - 書評「真相自ら見抜く楽しみ『謎ときエドガー・アラン・ポー』新潮選書」評者・宮部みゆき
2025年04月27日
読売新聞
[新聞・雑誌] - 書評「精読が新しい物語を描き出す 『謎ときエドガー・アラン・ポー』竹内康浩著」評者・平戸懐古(翻訳家)
2025年04月27日
産経新聞
精読が新しい物語を描き出す 『謎ときエドガー・アラン・ポー』竹内康浩著
<書評>評・平戸懐古(翻訳家)
2025/4/27 09:00
「モルグ街の殺人」(1841年)で密室殺人を名探偵デュパンの分析で解決させ、推理小説という一大ジャンルの始祖となった19世紀アメリカの作家エドガー・アラン・ポー(09~49年)。しかし彼は「作者自身が解くために編んだ謎を解いてみせたからって、どこが凄いのだろうね」とはしごを外すような発言も残している。ポー自身が目指した推理小説とは、作者が作った謎を自分で解く出来レースではなく、作者対読者の真剣勝負だったのではないか。
これまでマーク・トウェインやJ・D・サリンジャーの作品の謎に挑んできた米文学者の著者は、今回こうした見通しに立ち、従来ポーによる推理小説のパロディーと軽視されてきた「犯人はお前だ」(44年)という短編を、ポー渾身の真剣勝負として再評価する。題名のとおり殺人事件の犯人が暴かれる本作には、しかし発表から180年ものあいだ看過されてきた「もうひとつの殺人」が隠されており、ポーは周到に手掛かりを書き込んで、この「完全犯罪」を見破るよう、読者に挑戦しているのだという。
本書は前半をまるまるこの一作の精読に充て、これまで検証を免れてきた細部の矛盾を吟味することでポーの真剣勝負に応え、ほころび出てきた完全犯罪の全貌を明らかにする。さらに後半では、この前半で練り上げた「オリジナルとコピーのすり替え」という図式を応用し、ポーの代表的な推理小説や怪奇小説まで斬新に再解釈してみせる。
「犯人はお前だ」全文訳が載っているので、本作を未読の読者でも、著者と同じ素材を元に議論をたどることが出来る。一度読んだはずの物語が、言葉一つ一つに注目することで、まったく新しい物語へと変貌する―推理小説と文学研究に共通する面白さを存分に味わえる一冊である。あえて著者とは別の細部に注目するのも一興だろう。本書が実践するように、物語を丹念に読み込む行為は、そのまま新しい物語を描き出す行為につながっているのである。, [新聞・雑誌] - 書評『謎ときエドガー・アラン・ポー』評者・千街晶之
2025年04月26日
小説宝石
[新聞・雑誌] - 書評「真犯人は誰か――ポーが試みたメタフィジカルな分析」評者・加藤安沙子
2025年04月26日
図書新聞
「こんなことを言えば途方もない妄想家だと思われるでしょうが、どうやら私はエドガー・アラン・ポーの未解決殺人事件を発見し、その謎を解いてしまった気がするのです」。竹内康浩の『謎ときエドガー・アラン・ポー――知られざる未解決殺人事件』は、探偵小説の書き出しを彷彿とさせる文言で幕を開ける。本書はエドガー・アラン・ポーの短編小説「犯人はお前だ」(以下「犯人」と表記)を分析し、語り手が読者に提示する表向きの事実とは別の真相が潜んでいる可能性を検討する論考である。ポーの「犯人」はこれまで推理小説のパロディーとされ、喜劇的推理小説として理解されてきた。しかし竹内は「犯人」をポーの読者に対する知的勝負の誘いであると捉え、その謎解きに挑んでいく。
第一章では、語り手が自身をギリシャ神話において探偵と犯人の一致の権化とされているオイディプスになぞらえていることに着目し、「犯人」における本当の殺人者は作中で説明されるグッドフェローではなく語り手であるという説が打ち出される。ここから竹内は「犯人」のうちに散りばめられた小さな違和感の欠片を丁寧に拾い集め、小説のうちでは明かされないが語り手こそが真犯人である、という説を裏打ちする証拠を提示し、検討していく。竹内は語り手が「怪しい」こと、すなわち信頼できない語り手であることを指摘し、「犯人」は語り手が読者を騙しきることを目指した完全犯罪の物語であると主張する。… - 「注目の一冊 謎ときエドガー・アラン・ポー(竹内康浩著) 文学研究、極上の娯楽に」評・阿部公彦(東京大学教授)
2025年04月12日
本人以外
共同通信
山陰中央新報、沖縄タイムズ、北國新聞, [読書]文学 謎ときエドガー・アラン・ポー 竹内康浩著 研究を極上の娯楽に変換
・・・・
ところが竹内はこの結末を完全にひっくり返し、真犯人が別にいると示す。議論は徹底的に理詰めで、詰め将棋の手順のように隙がなく、読み終わってみると今まで少々残念に思えた作品が、急に輝きを放って見える。読解の哲学も開陳され、読むときに重要なのは、井戸を掘るように細部にこだわることではなく、むしろ少し距離を置いて複数部分の類比構造を捉えることだと説かれる。
・・・・
文学研究を極上のエンターテインメントに変換する「竹内マジック」の到達点である。
(阿部公彦・東京大教授)
(写図説明)新潮選書・1815円/たけうち・やすひろ 1965年愛知県生まれ。米文学者、北海道大教授。共著「謎ときサリンジャー」で小林秀雄賞, [新聞・雑誌] - 書評「『謎ときエドガー・アラン・ポー』 読者も騙す巧緻に仕組んだ挑戦」 評・鴻巣友紀子(翻訳家)
2025年04月05日
毎日新聞
読者も騙す巧緻に仕組んだ挑戦
著者三冊目の謎とき本だ。小説には、読者から見ると作者が書いたと思ったことが書かれておらず、作者が書いたはずのないことが書かれている――そういうことがあるのだと実感させられたのが『謎ときサリンジャー』だった。
著者が今回挑むのは、ポーの五編の推理小説のなかでも最も奇妙とも言える「犯人はお前だ」の謎である。本職の探偵が出てこない本作は筆致がコミカルで、シャトー・マルゴーの木箱から死体が飛びだすなどのこけおどし的トリックもあり、ミステリのパロディと捉えられることさえある。
あるとき町の金持ちが行方不明になり、乗っていた馬だけが手負いで帰ってくる。金持ちには放蕩(ほうとう)者の甥(おい)ペニフェザーがおり、状況と物的証拠から伯父殺害の犯人とされる。探偵役となったのは被害者の親友の人格者グッドフェローである。, [新聞・雑誌] - 書評 「著者、そして二百年前からの挑戦状:『謎ときエドガー・アラン・ポー』」評・ 阿津川辰海(小説家)
2025年03月27日
本人以外
文藝春秋社
週刊文春 4月3日号
読者の気づかないうちに「未解決殺人事件」が起こっている…推理小説の中に200年前に隠された“エドガー・アラン・ポーからの挑戦状”
阿津川辰海が『謎ときエドガー・アラン・ポー』(竹内康浩 著)を読む, [新聞・雑誌] - 竹内康浩インタビュー: ポーが仕掛けた完全犯罪の謎を解く
2025年03月07日
週刊読書人
1-2面, アメリカ文学者・北海道大学大学院文学研究院
教授の竹内康浩さんが『謎ときエドガー・アラン
・ポー知られざる未解決殺人事件』(新潮社)を
上梓した。本書は、推理小説の始祖であるポーの
短編「犯人はお前だ」に記されているものの、二
世紀近く気付かれることのなかった殺人事件の真
相と、その読解からポーの創作原理に迫る文学評
論。刊行を機に、竹内さんにお話を伺った。
※本インタビューは「犯人はお前だ」(2面に
要約掲載)の核心に触れています。 (編集部), [新聞・雑誌] - 書評「『謎ときエドガー・アラン・ポー』「探偵のいない推理小説」から「謎のない犯罪小説」へ 評・法月綸太郎(推理作家)
2025年03月
波
「まえがき」によれば、本書の著者は「エドガー・アラン・ポーの未解決殺人事件を発見し、その謎を解いてしまった気がする」という。この手の「真説」ほど当てにならないものはないが、謎の発見者が「バナナフィッシュにうってつけの日」に埋め込まれた叙述トリックを看破した文学探偵(新潮選書『謎ときサリンジャー―「自殺」したのは誰なのか―』を参照)で、アメリカ探偵作家クラブ賞の評論・評伝部門で初の日本人最終候補になったこともある竹内康浩氏なら話は別である。
百八十年越しの真相が語られるのは、推理小説の始祖ポーが死の五年前に発表した「犯人はお前だ」。「喜劇的推理小説の嚆矢」かつ「推理小説のパロディー」と見なされてきた作品だが、従来の評価に飽き足らない著者は前半の四章を費やしてポーの意図を探り、「マトリョーシカ人形のような入れ子構造」を見いだす。ネタバレになるので詳しく触れられないけれど、巻頭に収録された全文訳の邦題が人口に膾炙した「おまえが犯人だ」の逆になっているのは、物語構造の反転を強調するためだろう。そこからポーの創作原理、すなわち「二項の間に鏡像関係を作り、オリジナルとコピーを入れ替える」という詐欺師めいた手口を察知するくだりはまさに文学探偵の独擅場で、すれっからしの読者でも期待を裏切られることはない。
疑わしい記述として竹内氏は「幻のワインの会話」をめぐる矛盾に注目、これを語り手の捏造と断じている。興味深いのは河合祥一郎氏による2022年の新訳「おまえが犯人だ」(角川文庫『ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人』所収)でも、同じ会話が問題視されていることだろう。河合氏は会話の状況から「探偵兼語り手である人物の正体」を推理して、翻訳の文体に反映させたという。竹内説が物語の構造分析を重視するのに対して、河合訳は語り手のキャラクターを前面に押し出したといってもいい。その結果、前者が拾い上げた矛盾や齟齬は、後者では慇懃無礼な執事キャラの語り口に回収され、ユーモア探偵小説としての効果を強調する方向に作用する。ファルス(喜劇)作家としてのポーを念頭においた訳で、同じ作品の解釈でもこれだけ印象が異なるのは珍しい。
だがむしろ筋金入りの推理小説マニアほど、精緻な読みに裏打ちされた竹内説の論理のアクロバットに魅了されるのではないか。先に記した「マトリョーシカ人形のような入れ子構造」は「読者への挑戦」で知られるアメリカ探偵小説の巨匠エラリー・クイーンの作風に先んじているし、本書中にも言及のある平石貴樹氏の論文「『アッシャー家の崩壊』を犯罪小説として読む」(1985年の本格推理長編『だれもがポオを愛していた』所収)で示された操りの図式を受け継いで、さらに深化させているからだ。
後半の四章は基本原理の応用編で「のこぎり山奇談」や「ウィリアム・ウィルソン」、あるいは「黒猫」等の読解を通して鏡像(双子)関係とオリジナル/コピーの反転図式が多角的に跡づけられていく。「のこぎり山」論に当時の最新発明だった銀板写真に関する注釈が挿まれるのは、「複製技術時代の芸術」(W・ベンヤミン)が背負わされた近代の条件と無関係ではないだろう。さらに竹内氏によれば、謎解きを読者に委ねるというアイデアが不発に終わり、失望したポーが「探偵のいない推理小説」から「謎のない犯罪小説」への退行を余儀なくされた可能性もあるという。犯罪の化身として解読不可能な本に擬される「群集の人」の老人と、完全犯罪をなしとげながら理不尽な自白衝動に取り憑かれて破滅する「天邪鬼」の語り手が、「犯人はお前だ」の入れ子構造を腑分けした分身同士だとすると、推理小説史の特異点である「倒叙形式」のルーツもそこらへんの間に潜んでいるのかもしれない。
最後に蛇足ながら、本書を通読して気になった点をひとつ。著者は第六~七章で「モルグ街の殺人」「盗まれた手紙」を取り上げ、名探偵デュパンの「分析=鏡像」とアナロジー(類推)について考察しながら、なぜかシリーズ第二作「マリー・ロジェの謎」を黙殺している。だが本書の趣旨に従うなら、現実の未解決事件に挑んだ「マリー・ロジェ」こそ、詐欺師めいたポーの手口が最も顕在化した作品ではないか。というのも、実在のメアリー・ロジャーズ事件を小説化するに当たって、ポーはニューヨークの事件(実話)よりパリの事件(創作)が先に発生したと主張して、オリジナルとコピーの時系列を強引に入れ替えているからである。これまでデュパンをシリーズ化するための苦肉の策(もしくは推理の不備へのエクスキューズ)と見なされてきた不自然な形式が、実はポーの創作原理の根幹に関わっているとしたら……。, [新聞・雑誌] - ステイホームのお供に! 2021年の傑作ミステリーはこれだ!【前編】<編集者座談会>
2022年02月01日
本人以外
文藝春秋
本の話
https://books.bunshun.jp/articles/-/6923?page=5, [インターネットメディア] - 声優・斉藤壮馬さんが選ぶ、大人の好奇心をくすぐる3冊とは?【読書から広がる学び】
2022年01月
本人以外
集英社
BAILA 2月号
[新聞・雑誌] - 書評 謎ときサリンジャー 編集部が薦める一冊 杉本健太郎評
2021年11月
本人以外
月刊日本 12月号
[新聞・雑誌] - ”探偵”が迫る名作の真相 評・佐藤友哉(作家)
2021年10月31日
本人以外
埼玉新聞
[新聞・雑誌] - 定説に疑問 本のプロが絶賛「謎ときサリンジャー」
2021年10月28日
本人以外
新文化
注目!この本, 『謎ときサリンジャー』担当編集者北本壮氏の言葉を紹介, [新聞・雑誌] - 探偵のように工夫に光をあて、謎へ踏み込む 評・川口晴美(詩人)
2021年10月26日
本人以外
婦人公論 11月9日号
……ミステリーの探偵が捜査するように、著者らはサリンジャーが作品に張り巡らした表現の細かな工夫に光をあて、それらを手掛かりに謎へ踏み込んでいく。
禅の公案や芭蕉の俳句にまつわるエピソードも丹念に解き明かしながら、サリンジャー文学を貫く時間感覚、死者と生者との関係性に迫った緻密な論理展開は、鳥肌立つほどスリリングな読み心地。青春を超えた普遍的な文学と思索の世界が目の前に開かれる。, [新聞・雑誌] - 【ブックハンティング】サリンジャーの壮大な「企み」に挑んだ、文学探偵コンビの名推理 評・円堂都司昭
2021年10月24日
本人以外
新潮社
Foresight
名探偵、みなを集めて「さて」といい。ミステリー小説でありがちな場面をめぐるそんな言葉があるが、J・D・サリンジャーの愛読者なら『謎ときサリンジャー 「自殺」したのは誰なのか』の前に集まったほうがいい。著者の竹内康浩と朴舜起が探偵コンビとなり、この作家の「バナナフィッシュにうってつけの日」に関し意外な真相を語ってくれる。それを皮切りにサリンジャーによるサーガ(物語群)の世界全体の見え方を変えてしまうのだ。..., [インターネットメディア] - 書評 謎ときサリンジャー
2021年10月23日
本人以外
北日本新聞
読者も、そしてこの書評を書いている私のようなプロも、結局何も読んじゃいなかったのだと。 探偵が真相を明かした瞬間、世界の見方が一変するように、あなたの小説観..., [新聞・雑誌] - 書評 謎ときサリンジャー 評者 平山瑞穂(作家)
2021年10月20日
朝日新聞社
週刊朝日 2021年10月29日号
週刊図書館, [新聞・雑誌] - 【書評】「読む」という創造的行為でサリンジャーの小説を「書き直す」 【評者】鴻巣友季子(翻訳家)
2021年10月20日
本人以外
週刊ポスト 2021年10月29日号
... 有名なsee more glass(「もっとグラスを見なさい」とも聞こえるし、「シーモア・グラス」にも聞こえる)という言葉遊びの真意は? 「おまえの星々を出してくれ」という「シーモア序章」の台詞の意味はなにか? また、サリンジャーにとって、「義足」がどんな役割をもっているのか? 阿波研造の弓道術、オイゲン・ヘリゲルの『弓と禅』、そして芭蕉の句や鈴木大拙の俳句論へ(芭蕉とはバナナの葉のことだ)。
そこには生と死の固定観念を覆すような境地が待っている。「読む」という創造的行為でもって、小説を「書きなおす」とはこういうことだと実感した。, [新聞・雑誌] - 書評 謎ときサリンジャー
2021年10月10日
デーリー東北新聞
ミニ書評, [新聞・雑誌] - 書評 謎ときサリンジャー 慶応大非常勤講師・小泉由美子 評
2021年10月10日
本人以外
産経新聞
...本書の射程はサリンジャー文学全般におよぶ。序章から全4章にわたり一連の「グラス家のサーガ」作品、『ナイン・ストーリーズ』末尾を飾る作品「テディ」および『ライ麦畑でつかまえて』(51年)も入念に咀嚼(そしゃく)する。その筆致は、合理や論理にとらわれ「因果の囚人」として生きざるをえない人間像を喝破し、松尾芭蕉の俳句、阿波研造の禅弓術、8月死去した精神病理学者の木村敏(びん)を経由して「生き残ってしまった者」が死者といかに「出会い直せるか」をも問い続ける。だが、われわれもみな少なからず、この世に残されたバディーのように醜く凹んだ体をかかえ、重く足を引きずるように生きていかねばならない「呪い」に縛られているだろう。サリンジャー作品未読の者も、長年読み続けてきた玄人も、本書をその道標の一つに、サリンジャー文学の仄(ほの)暗い深淵(しんえん)にあらためて誘われよう。こんにちほど、その言葉に耳をすますにうってつけの時代はない。(新潮社・1650円), [新聞・雑誌] - 書評 謎ときサリンジャー
2021年10月09日
本人以外
日刊ゲンダイ
本の森, ... 綿密かつ巧緻な読解によって、次々と謎の扉を開いていく叙述はスリリングかつ刺激的。小説を読むことの愉悦を余すことなく伝えてくれる。 <狸>, [新聞・雑誌] - 書評 謎ときサリンジャー 「実は禅小説 華麗な手際で」評・早稲田大学教授 都甲幸治
2021年10月09日
本人以外
日本経済新聞
朝刊読書面, ……
この仮説を立証するために作者たちは、サリンジャーの複数の作品の細部に注目しながら丹念に読み込む。一つ一つの作品を見ているだけではわからないことも、文学探偵たる竹内と朴のコンビは、類まれな注意力と論理的思考力で見つけ出す。本書の読者は2人の華麗な手際を存分に楽しめるだろう。
ただしこの本の長所はそれだけではない。謎解きの暗号表として用いられる鈴木大拙の著作や、阿波研造の禅弓術、松尾芭蕉の俳句など、サリンジャーに大きな影響を与えた人々への著者たちの深い理解が本作を優れたものとしている。視覚に頼らず音に耳を澄ますとき、弓と的は一つの存在となり、そのとき生死の境も消える。あるいは芭蕉とは英語ではバナナであり、したがってバナナフィッシュとは芭蕉魚のことである。これら一つ一つの気づきは読者を興奮させてくれる。……, [新聞・雑誌] - 書評 謎ときサリンジャー 評・学習院大学教授 中条省平
2021年10月07日
文學界 11月号
文學界図書室, [新聞・雑誌] - 書評 謎ときサリンジャー 評・作家 乗代雄介
2021年10月07日
週刊文春 10月14日号
文春図書館, ...だから、シーモアの拳銃自殺に他殺の可能性を見た上で、他作品も踏まえた証拠を突きつけて前述の読みを際立たせる手際に、悔しさを覚えながらページをめくった。「頭蓋骨」を介して「銃声」や「水の音」はともかく「ビー玉遊び」にまで繋がるのには興奮した。結局、読み終えて残ったのは、嫉妬ではなく感謝の念だった。この賢明で鮮やかな謎ときを足がかりに、読者は小説に込められた別の謎も検討することができるだろう。..., [新聞・雑誌] - 書評 謎ときサリンジャー 翻訳家・鴻巣友季子 評
2021年10月02日
毎日新聞
朝刊読書面, 衝撃の問い、創意に富む綿密な考証
「バナナフィッシュにうってつけの日」の結末をめぐる、壮大で驚くばかりに緻密な考察の書である。「この短編にはこんなことが書かれていたのか!」と、読者は一ページごとに瞠目(どうもく)するだろう。...
1391文字, [新聞・雑誌] - <書評>謎ときサリンジャー 慶応大学名誉教授・巽孝之 評
2021年09月26日
本人以外
北海道新聞
禅に造詣 作品の深層再解釈
評 巽孝之(慶応大名誉教授)
戦後の米国を代表し、今も世界各国で人気を博す作家J・D・サリンジャー。しかし、作品の深層には思いもよらぬ秘密が隠されていたのではないか。こんな問いかけから、本書は驚くべき作家像を描き出す。
……
だが、本書はラストシーンの「青年」(the young man)が本当にシーモアその人なのかどうか、その点から疑いをかける。最大のヒントは同作品が収められる短編集のエピグラフにもなっている禅の公案だ。「両手の鳴る音は知る。片手の鳴る音はいかに?」。この場面にはもう一人の人物がいたのではないか。そして、まさにこの銃声こそがサリンジャーが傾倒する禅で言う「隻手の声」であり、旧来の因果関係に基づいた読みを粉砕する瞬間だったのではないか、と著者たちは精緻にしてスリリングな読みを展開していく。
本書は他にも鋭利な洞察に満ちている。サリンジャーを禅にも造詣の深かった俳人から再解釈する時、もともと芭蕉という植物はバナナを指すことが強調されるのはほんの一端にすぎない。文学作品を読むことの知的快楽にあふれた一冊である。(新潮選書 1650円)
<略歴>
たけうち・やすひろ 1965年生まれ。北大大学院教授。専門は米文学。2019年のエドガー賞の評論・評伝部門で候補になった/ぼく・しゅんき 1992年生まれ。北大大学院文学院博士課程3年, [新聞・雑誌] - ‘The Catcher in the Rye’ at 70, with digressions
2021年09月19日
本人以外
Valley News
『ライ麦』出版70年についてのコラムで、日本での『ライ麦』の影響に関してコメント。, [新聞・雑誌] - ブックソムリエ 「謎ときサリンジャー―「自殺」したのは誰なのか―」を紹介
2021年09月16日
ニッポン放送
垣花正あなたとハッピー!
番組ゲストコメンテーター中瀬ゆかり氏による「謎ときサリンジャー―「自殺」したのは誰なのか―」の紹介, [テレビ・ラジオ番組] - 対談=竹内康浩・阿部公彦 「分からない」を愉しむ文学評論
2021年09月03日
週刊読書人
[新聞・雑誌] - 書評 謎ときサリンジャー 評・作家 恩田陸
2021年09月
新潮社
波 9月号
世界最高峰のミステリ賞〈エドガー賞〉の評論・評伝部門で日本人初の最終候補となった竹内康浩が弟子とともにサリンジャーの世界を読み解いた『謎ときサリンジャー―「自殺」したのは誰なのか―』が刊行。本作を読んだ作家の恩田陸さんがサリンジャーについて語った書評。, [新聞・雑誌] - エウレカ!北大 小説に潜む謎解き明かす
2021年07月14日
読売新聞
[新聞・雑誌] - オンライン授業「集中できる」
2020年05月18日
本人以外
読売新聞
[新聞・雑誌] - 知の達人たち 物語の深層に潜む謎を追究
2019年07月30日
朝日新聞
[新聞・雑誌] - エドガー賞逃すも思い出に
2019年05月01日
朝日新聞
[新聞・雑誌] - エドガー賞発表へ 式典「楽しみたい」
2019年04月24日
読売新聞
[新聞・雑誌] - 竹内さんエドガー賞ノミネート 半田市図書館特別コーナー
2019年04月14日
中日新聞
[新聞・雑誌] - ‘Hiroshima Boy’ Gets Edgar Nomination
2019年02月06日
The Rafu Shimpo
Books Entertainment, In the Best Critical/Biographical category, “Mark X: Who Killed Huck Finn’s Father?” by Yasuhiro Takeuchi (Taylor & Francis-Routledge) was nominated along with “The Metaphysical Mysteries of G.K. Chesterton: A Critical Study of the Father Brown Stories and Other Detective Fiction” by Laird R. Blackwell, “Dead Girls: Essays on Surviving an American Obsession” by Alice Bolin, “Classic American Crime Fiction” of the 1920s” by Leslie S. Klinger, and “Agatha Christie: A Mysterious Life” by Laura Thompson.
In the summer of 1876, Mark Twain started to write “Adventures of Huckleberry Finn” as a detective novel surrounding the murder of Huck’s father, Pap Finn. The case is unresolved in the novel as it exists today, but Twain had already planted the clue to the identity of the killer.
It is not the various objects ostentatiously left around Pap’s naked body; they are not the foreground of the scene, but actually the background, against which a peculiar absence emerges distinctively ― Pap’s boots, with a “cross” in one of the heels, are gone with his murderer.
The key to the mystery of Twain’s writings, as Takeuchi’s book contends from a broader perspective, is also such an absence. Twain’s persistent reticence about the death of his father, especially the autopsy performed on his naked body, is a crucial clue to understanding his works. It reveals not only the reason why he aborted his vision of Huckleberry Finn as a detective novel, but also why, despite numerous undertakings, he failed to become a master of detective fiction.
Takeuchi is professor of American literature at Hokkaido University, in Sapporo. He is the author of four books published in Japanese, on J.D. Salinger, Mark Twain, and poet Misuzu Kaneko, and of scholarly articles published in American Literary Realism, Studies in the Novel, and Literary Imagination, among others. He is a recipient of the Young Scholar Award of the English Literary Society of Japan for his article (in Japanese) “Deciphering Poe.”, [新聞・雑誌] - ほっとニュース北海道
2019年01月25日
NHK
[テレビ・ラジオ番組] - エドガー賞候補「非常にうれしい」
2019年01月24日
読売新聞
[新聞・雑誌] - 天声人語
2018年11月18日
朝日新聞
[新聞・雑誌]