工藤 岳 (クドウ ガク)

地球環境科学研究院 環境生物科学部門 陸域生態学分野特任准教授

研究者基本情報

■ 学位
  • 博士(環境科学), 北海道大学
■ URL
researchmap URLホームページURL■ ID 各種
研究者番号
  • 30221930
J-Global ID■ 研究キーワード・分野
研究キーワード
  • 高山生態系
  • フェノロジー
  • 気候変動生態学
  • 繁殖生態学
  • 植物生態学
  • Reproductive Ecology
  • Plant Ecology
研究分野
  • ライフサイエンス, 生態学、環境学
■ 担当教育組織

経歴

■ 経歴
経歴
  • 1994年 - 2000年
    北海道大学大学院地球環境科学研究科助手 助手
  • 1994年 - 2000年
    Research Associate
  • 2000年
    - 北海道大学大学院地球環境科学研究科助教授 助教授
  • 2000年
    - Associate Professor
委員歴
  • 2009年 - 2013年
    日本生態学会, 全国委員, 学協会
  • 2007年
    日本生態学会, 英文誌編集員, 学協会

研究活動情報

■ 受賞
  • 2020年03月, 日本生態学会, 日本生態学会賞
    工藤岳
  • 1997年03月, 日本生態学会, 日本生態学会宮地賞
    工藤岳
■ 論文
■ その他活動・業績
■ 書籍等出版物
  • Structure and Function of Mountain Ecosystems in Japan
    工藤 岳
    Springer, 2016年, [共編者(共編著者)]
  • 高山植物学 高山環境と植物の総合科学
    共立出版, 2009年
  • 登山道の保全と管理
    古今書院, 2008年
  • 生態系と群集をむすぶ
    京都大学学術出版会, 2008年
  • Ecology and Evolution of Flowers
    Oxford University Press, 2006年, [共著]
  • 森林の科学—森林生態系科学入門—
    朝倉出版, 2005年
  • 高山植物の自然史:お花畑の生態学
    北海道大学図書刊行会, 2000年
  • 大雪山のお花畑が語ること:高山植物と雪渓の生態学
    京都大学学術出版会, 2000年
■ 主な担当授業
  • 植物生態・多様性生物学特論Ⅱ, 2024年, 修士課程, 環境科学院
  • 大学院共通授業科目(一般科目):自然科学・応用科学, 2024年, 修士課程, 大学院共通科目
  • 北方生態系の生物多様性基礎論, 2024年, 修士課程, 環境科学院
■ 所属学協会
  • 日本生態学会
  • 種生物学会
  • The Society for the Study of Species Biology
■ 共同研究・競争的資金等の研究課題
  • 地域集団の遺伝的多様性と気候変動へのレジリエンス:高山植物を用いた地域間比較
    科学研究費助成事業
    2022年04月01日 - 2026年03月31日
    工藤 岳; 和久井 彬実; 和田 直也; 甲山 哲生; 矢吹 哲夫
    大雪山サイトでは、ウスユキトウヒレン、ハクサンボウフウ、ヨツバシオガマ、コガネギクの開花時期とパフォーマンス(花茎高、花序サイズなど)、結実率、種子食害率のモニタリングを行った。また、対象種の花粉媒介昆虫の観察を行った。立山サイトでは、ハクサンボウフウ、ヨツバシオガマ、コガネギクについて同じくパフォーマンス、結実率、種子食害率の計測を行った。
    立山室堂周辺で、50 m x 50 mグリッドごとに遺伝解析用の葉のサンプリングを行い、5種合計620個体のサンプルを得た(前年度からの累計は1095個体)。これにより、設定した調査区の約2/3の区画でサンプリングを完了した。また、これまでにシーケンスデータが得られていた大雪山の5種合計2555個体についてジェノタイピングを完了し解析を行った。その結果、複数種で共通する空間遺伝構造が確認され、高山植物の遺伝的多様性が雪解け時期とポリネーターの季節活性によって形成される可能性が強く示唆された。
    約100 haの調査地を対象に、22年及び23年の無積雪期(10月)に撮影したドローンRTK空撮画像より地表面のデジタル標高モデル(DEM)を、23年の積雪期(4月)に撮影したRTK画像より積雪面のDEMを作成し、調査地の積雪深を推定した。さらに、人工衛星画像(PlanetScope)を用いた解析により、23年における消雪日の推定や調査地において優占するハイマツの被覆度を明らかにした。
    22年度に大雪山5個体群、立山4個体群で採取したハクサンボウフウの種子について、発芽試験を行った。大雪山の個体群については、冷暗所で2か月程度置くと発芽した。一方で、立山の個体群の種子は、冷暗所で2か月置いてもほとんど発芽せず、明環境に移した後に順次発芽した。大雪山と立山間で、ハクサンボウフウの発芽特性が異なっている可能性が考えられた。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 23K23958
  • 地域集団の遺伝的多様性と気候変動へのレジリエンス:高山植物を用いた地域間比較
    科学研究費助成事業
    2022年04月01日 - 2026年03月31日
    工藤 岳; 和久井 彬実; 和田 直也; 甲山 哲生
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 22H02695
  • 固着性生物の種内変異が種間共存に及ぼす影響の長期観測に基づく解明
    科学研究費助成事業
    2018年04月01日 - 2021年03月31日
    甲山 隆司; 金子 正美; 野田 隆史; 相場 慎一郎; 工藤 岳; 久保 拓弥
    陸上植物や沿岸付着動物のような、固着性生物では、定着環境の変異に対応して個体間変異が大きい。同じ固着性の他種と共存するメカニズムと、種内個体間変異がどのよおうに関係するかは未解明の課題である。本研究は、森林樹木・低木・沿岸フジツボを対象に、継続観測データに基づいて、種内の生活史変異を解析した。個体間変異の時間積算が、種レベルの回転率の遅速トレードオフをもたらし、共存に貢献することを見出した。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 18H02504
  • フェノロジカルミスマッチの発生メカニズムと送粉系機能への影響評価
    科研費
    2017年04月 - 2020年03月
    工藤 岳
    日本学術振興会, 研究代表者, 競争的資金
  • 気候変動による急速な高山植生変化の検出とそのメカニズム解明のモデル構築データ解析
    科学研究費助成事業
    2015年04月01日 - 2019年03月31日
    矢吹 哲夫; 金子 正美; 工藤 岳; 星野 仏方; 原 登志彦; 田中 成典; 蛯名 邦禎; 田中 歩
    気候変動(地球温暖化)によって生じている可能性の高い大雪高山生態系の遷移(レジームシフト)のモデル解析をフィールド現場での測定及び生態系回復実験のデータと照合しつつ定量的なモデル解析を行なった。初期土壌水分量を積雪量で除した値等複数の無次元パラメータを用いて、ササ刈取りによる翌シーズンの初期土壌水分量の経年変化(上昇)を理論解析し、それに伴う高山植生の安定相の相構造変化をグラフを使ってシミュレーション解析することで、ササ刈取り前の土壌水分量とササ刈取り最中のシーズン最初の初期土壌水分量の測定値から、高山植生が安定的に回復するまでに必要なササ刈取りの継続年数を推定する方法論を見出した。
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 15K00524
  • ハナバチ送粉系の生態系機能の解明:植物群集の開花構造と形質進化
    科研費
    2015年04月 - 2019年03月
    工藤 岳
    日本学術振興会, 研究代表者, 競争的資金
  • 植物群集における双翅目ポリネーターの生態系機能評価:訪花行動と花粉流動の解析から
    科学研究費助成事業
    2015年04月01日 - 2018年03月31日
    石井 博; 工藤 岳; 丑丸 敦史
    双翅目ポリネーターの割合が異なる植物群集間で、花形質の組成を比較した。その結果、翅目ポリネーターの割合が多く、結果としてポリネーターの多様性が小さい地域ほど、植物群集における花形質の多様性も低くなる傾向が見出された。一方、ポリネーターの体表花粉及び柱頭付着花粉の分析からは、双翅目ポリネーターに受粉を依存している植物種であっても、膜翅目ポリネーターに受粉を依存している植物種とほぼ同等に、同種植物種の花粉を受け取っていることが示された。また、双翅目訪花者にも色の好みが存在し、それが種類ごとに異なることがわかった。これらの結果は、双翅目ポリネーターの送粉機能が高いことを示唆するものであった。
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 富山大学, 15K07216
  • 気候変動による高山お花畑消失メカニズムの解明
    科研費
    2012年03月 - 2016年03月
    工藤 岳
    日本学術振興会, 研究代表者, 競争的資金
  • 高山生態系の特性を利用した、送粉ネットワーク構造の解析
    科学研究費助成事業
    2011年04月28日 - 2015年03月31日
    石井 博; 工藤 岳; 丑丸 敦史
    北アルプス高山帯の送粉群集を解析した結果、ネスト構造とモジュール構造が認められた。しかし、ネスト構造は種の観察数の偏りによってもたらされており、モジュール構造ではモジュールに当てはまらないリンク(相互作用が観察された訪花者と植物の組み合わせ)が多く存在した。そこで、訪花者と植物種を一定の基準でグループ分けし、各グループの訪花昆虫種が、数個の植物種グループを訪花すると仮定して解析したところ、説明できないリンクの数が激減した。この結果は、送粉群集を新しいネットワークモデルで説明することが妥当であることを示唆している。
    日本学術振興会, 若手研究(B), 富山大学, 23770017
  • 開花フェノロジー構造の形成メカニズム:送粉系生物間相互作用の機能評価
    科研費
    2011年04月 - 2015年03月
    工藤 岳
    日本学術振興会, 研究代表者, 競争的資金
  • 気候変動に対する森林帯ー高山帯エコトーンの多様性消失の実態とメカニズム
    環境研究特別推進費
    2009年04月 - 2012年03月
    工藤 岳
    環境省, 研究代表者, 競争的資金
  • 気候変動に対する高山植物群集動態の定量化とそのメカニズムの解明
    科研費
    2009年04月 - 2012年03月
    工藤 岳
    気候変動に伴う環境変化が高山植生変化を引き起こしている現状の評価と、そのメカニズム解明を目的とした。ササの分布拡大や土壌乾燥化により、高山植物の多様性が急速に低下し、高山植生が衰退する実態とその原因を解明した。植生変化と広域スケールの環境変化の定量化手法の開発し、チシマザサとハイマツの分布変化の定量化との広域スケールでの土壌水分変化を解析した。さらに、急速な植生変化が生じる状況についての数理モデルによる予測を行った。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 研究代表者, 競争的資金, 21370005
  • ポリネーション競争を反映した花粉流動と植物の繁殖様式の進化
    科学研究費助成事業
    2007年 - 2008年
    亀山 慶晃; 工藤 岳
    高山生態系では雪解け時期を反映した連続的な開花現象が認められ、傾度に沿って花粉媒介者や近縁他種との関係が変化する。北海道大雪山系におけるツガザクラ属植物では、雪解け傾度に沿って雑種第一代が優占する広大な交雑帯が形成されており、雑種と親種の間で花粉媒介者を巡る競争が生じていた。親種の受粉成功は開花時期や年によって大きく変動し、繁殖成功(他殖率)に多大な影響を及ぼしていた。
    日本学術振興会, 若手研究(B), 19770009
  • 電熱線大規模埋設実験による落葉広葉樹林生態系の温暖化に対する応答の解明
    科学研究費助成事業
    2007年 - 2008年
    日浦 勉; 工藤 岳; 笠原 康裕; 彦坂 幸毅
    1、ミズナラの最大光合成速度は温暖化処理によって変化しなかったが、窒素含量は低下したため窒素利用効率は上昇した。イオン交換樹脂法によって土壌中の無機体窒素量がどのように変化したかは現3定量中である。
    2、葉中の窒素含量の低下と硬さの指標が上昇したため、植食性昆虫による食害は低下した。
    3、ミズナラの堅果生産量は枝の温暖化処理によって3〜5倍に上昇した。そのメカニズムは今のところ不明である。
    4、土壌中のバクテリアの量や組成は2年間の実験では変化が見られなかった。
    5、林床植物の総植被率は、林冠閉鎖が完了する6月中旬に最大となり、その後低い値で安定する傾向が見られた。林床に到達する光エネルギーとの対応関係が示された。夏緑性植物の地上部生育開始時期は、温暖化により早まる傾向が見られたが、その程度は種により異なっていた。一方で、秋の生育終了時期には明瞭な違いが認められなかった。すなわち、生育初期に温暖化の効果が大きいことが示された。半常緑性植物のオシダの越冬葉は、温暖区ではほとんどが冬の間に枯死していた。これは、温暖区では積雪がほとんどないため凍害による損傷が強かったためと考えられた。さらに、当年シュートの伸長は温暖区で遅くなる傾向が見られた。越冬葉の損失により、新葉生産のための養分や資源転流がなくなったことが影響していると予測される。土壌温暖化による積雪環境の変化は、冬期の越冬環境を変化させ、植物の生育にマイナスの効果をもたらす可能性が示唆された。
    以上の結果より、温暖化が植物にもたらす影響は、種や生活形により多様であることが示された。温暖化の影響予想には、個々の植物が有する生理特性を考慮する重要性が示された。
    日本学術振興会, 萌芽研究, 北海道大学, 19657007
  • 鮮苔類の地球環境変化に対する応答について
    科学研究費助成事業
    2007年 - 2008年
    工藤 岳; JAGERBRAND Annika K.; JAGERBRAND AnnikaK.
    北海道の亜高山帯から高山帯にかけて分布する鮮体類(シモフリゴケ・タチハイゴケ・イワダレゴケ)を指標にし、生育環境や標高の違いに対する成長応答と生理活性を現地調査ならびに室内実験により計測した。2年間に及ぶ野外での成長解析の結果、温度変化に対する成長の感受性は、種間・個体群間で大きく異なっていた。例えば、森林帯に主な分布域を持つタチハイゴケは、温度増加に対して伸長生長を増加させる傾向があった。一方で、高山帯に主な分布域を持つシモフリゴケは、高温域で生長の低下が見られた。また、北海道内に広く分布するタチハイゴケを6つの山域で比較した結果、成長速度、分枝パターン、蛍光光合成活性(Fv/Fm比)、窒素含有量いずれにも地域間で違いが見られたが、標高変化に対する感受性は様々であり、明瞭な傾向は認められなかった。室内実験により同一環境で生育させても、鮮体類の温度応答は山域により異なり、遺伝的な差異の存在が示唆された。冷温帯から寒帯地域にかけて広く分布する鮮体類の成長応答を詳細に計測した研究例は、これまでに非常に少ない。本研究成果は、気候変動に対する鮮苔類の応答を予測する際に、個体群あるいは地域固有の応答を考慮する重要性を示唆するものである。以上の研究成果は、現在3つの学術論文として投稿準備中である。また、気候変動に対する鮮苔類の応答についての総説を投稿中である。
    日本学術振興会, 特別研究員奨励費, 北海道大学, 07F07727
  • 日本と北米大陸における第3紀起源ユリ科(広義)植物の比較生活史研究
    科学研究費助成事業
    2006年 - 2008年
    大原 雅; 林 一彦; 工藤 岳; 工藤 洋; 北村 系子
    日本と北米大陸に現在隔離分する広義のユリ科植物の中でも、日本の近縁種に関して、これまで詳細な生活史研究が行われてきた生態的背景がわかっている種群を対象に、繁殖様式ならびに個体群構造に関する、詳細な野外調査と分子マーカーを活用した遺伝解析を行った。その結果、さまざまな種群について有益なデータを得ることが出来た。特に、カタクリ属(Erythronium)、スズラン属(Convallaria)、バイケイソウ属(Veratrum)に関しては、繁殖特性に関わる集団間ならびに集団内の他殖率の変異性、および個体群統計遺伝学の側面から、種子繁殖と栄養繁殖の寄与に関して、環境と生活史形質の変異の関係を明らかにすることが出来た。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 18405010
  • 長期モニタリングと個体群統計遺伝学による植物個体群の存続可能性の評価と保全
    科学研究費助成事業
    2004年 - 2006年
    大原 雅; 工藤 岳; 高田 壮則; 和田 直也; 亀山 慶晃
    本研究は、植物個体群の存続可能性(viability)を、個体群統計学的(demographic)側面と遺伝学的(genetic)側面の両側面を考慮することで評価することを目的として行った。具体的には、低地から高山帯のさまざまな環境に生育する多様な植物群を対象に、それらの存続可能性を以下の内容に関する研究を行った。
    1.これまで各研究者が蓄積してきた、多様な環境に生育するさまざまな種に関する貴重な長期個体群モニタリング・データ(5年〜23年)を集約し、正確な個体群統計学的情報を整理する。
    2.個体群動態調査に基づく各個体の時間的・空間的情報をもとに、生活史段階の異なる各個体(実生、未成熟個体、成熟個体)を対象として酵素多型ならびにAFLP解析を行い、集団の遺伝的構造を把握する。
    3.統計学的情報と遺伝学的情報を集約した数理モデルを構築し、個体群の存続可能性を定量的に評価する。
    4.本研究で行う長期モニタリング調査法、遺伝解析法、数理解析法の一連の解析による「植物個体群の存続可能性評価法」に関するマニュアル作成を行う。
    これまで多年生植物の個体群に関しては、長期モニタリングに基づく正確な個体群動態に関するデータの欠如していた。また遺伝学的側面に関しても、種内にみられる遺伝的多様性のパターンを解明することが中心であった。本研究により、個体群を各種の生活史を反映したさまざまな個体の集合として捉える概念が確立し、多様な環境に生育する植物個体群の存続可能性に関する正確な評価を行うことが可能になった。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 16370007
  • 花粉散布様式から見た虫媒花植物の繁殖戦略と交配システムの再評価
    科学研究費助成事業
    2003年 - 2005年
    工藤 岳; 大原 雅; 石井 博
    本研究は、植物の多様な繁殖システムをポリネーションの見地から解明することを目的とした。
    植物の花蜜分布がポリネーターの行動に及ぼす影響を、人工花序を用いた屋内実験により調べた.様々な花蜜分布に対するマルハナバチの花序内移動パタンと滞在時間を詳細に記録して解析した結果、花蜜分配様式は昆虫の行動に強く作用し、その影響は花序形態により変化することが示された。すなわち花蜜分泌様式は、花粉散布戦略であることが示された。
    野外実験では以下の事柄について調べた。1.花色変化するウコンウツギへのマルハナバチの訪花様式を解析し、花色変化は植物の花粉散布であることを解明した。2.盗蜜型と正当訪花型のマルハナバチがエゾエンゴサクの繁殖成功に及ぼす影響について解析し、花序内性配分様式が個体群間で異なることを見いだした。3.開花時期が自殖率や花粉親多様度に及ぼす影響を高山植物キバナシャクナゲ個体群で調べた。季節的な訪花昆虫の行動の違いは、送粉効率や生産種子の遺伝的多様度に大きく影響することが示された。4.森林性植物で種子生産の制限要因を調べた。春植物は一般に高い結実率を達成しているが、マルハナバチ媒花はハエ媒花植物に比べて結実率の年変動が大きかった。初夏に開花する植物は一般に結実が低く、光資源により結実が制限されていた。林床が暗くなってから開花結実する夏〜秋咲き植物は一般に結実率が高いが、ハチ媒花植物は花粉制限を受け易かった。光環境に応じた開花フェノロジーグループ毎に共通の結実特性が認められた。5.クローナル植物スズランを対象として繁殖戦略に関わる調査を行った。人工交配実験の結果、同一クローン内の花序間の受粉ではほとんど種子は結実しなかった。また、結実率は近隣にある和合花粉を持つ異なるクローンの花数により大きく左右されていた。クローン成長の程度は、花粉媒介者を誘引する花密度に影響を及ぼし、和合花粉の供給効率や種子繁殖を通じた個体の繁殖成功に影響を及ぼすことが示された。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 15370006
  • 無季節環境下での個葉・シュート特性のトレードオフと植物生活形多様性
    科学研究費助成事業
    2002年 - 2004年
    甲山 隆司; 寺島 一郎; 工藤 岳; 高橋 耕一; 鈴木 英冶; 東 正剛; 北山 兼弘
    熱帯山地は、温度と乾燥のストレスもかかりにくい、植物にとってもっとも恒常的な環境であり、植物の生活形多様性が高い。そこでは、適応的分化を反映する明瞭な生理機能レベルのトレードオフが存在すると推測される。本研究では、個葉およびシュートモジュールレベルのトレードオフが、同じ地域の恒常的な環境下での多様化を促進しているという仮説に立って、葉およびシュートの生理機能の分化を解析した。本研究が主対象としたのは、西ジャワ州のハリムン山国立公園であり、対照として、屋久島の照葉樹林においてもセンサスも行なった。
    ハリムンでは、110種の葉寿命の観測を3年間にわたって行なった。葉の窒素利用効率は、葉の原形質成分と細胞壁成分に分けて分析し、葉の寿命と、葉の構造維持にかかわると想定される細胞壁成分の窒素分画の増加について分析を行なう。着生大型シダのオオタニワタリや、つる性ヤシ科のロタンなどでは、詳細な成長解析を実施した。種間で、当年葉展開時の水分配や、生活形によるシュート間の分配制御の違い、肥大成長とシュート伸長成長のあいだの分配を観測して、種間・生活形間の分化の適応をあきらかにした。
    屋久島では、116種の葉試料について、葉齢分布、LMA,C/Nの分析を行い、予測した1年葉以上の種での窒素含量と葉寿命の無相関を、生活形にまたがって検出した。照葉樹の葉配置に認められる疑似輪生配置と二列生配置の二系について、シュート形態と葉特性との対比が存在することもあきらかにした。
    日本学術振興会, 基盤研究(A), 北海道大学, 14255003
  • 多雪環境における高山植物集団の時空間的動態の解析と地球環境変化の影響予測
    科学研究費助成事業
    2001年 - 2003年
    大原 雅; 高田 壮則; 和田 直也; 工藤 岳
    本研究は高山生態系における雪解け時期の変動が、そこに生育する植物個体群の時空間的動態ならびに遺伝的構造に及ぼす影響を定量的に評価し、さらに、得られた結果をもとに、数理モデルを用いて変動環境における植物個体群の動態を予測することを目的として行った。野外調査ならびに室内遺伝実験は、大雪山、立山、ロッキー山脈の3地域に関して行った。
    大雪山では、さまざまな高山植物個体群間で、交配システム変異と花粉散布による遺伝的交流の程度を明らかにするために、アロザイム分析ならびにマイクロサテライト遺伝子を用いた種子の遺伝解析を行った。その結果、いずれの種においても局所個体群は遺伝的に分化している傾向が認められ、遺伝構造は地理的距離もしくは雪解け傾度の影響を受け、階層的に構築されている傾向が示された。
    立山では、周北極要素の高山植物・チョウノスケソウについて,立山の一ノ越個体群と水晶岳の個体群について,10酵素18遺伝子座でアロザイム分析を行った。その結果,両個体群ともすべての遺伝子座において,変異が全く無いことが分かった。また,立山一ノ越個体群において花の形質を調べたところ,北極圏の個体群に比べて雌しべに対する雄しべへの投資比が高いことが分かった。
    ロッキー山脈では、カタクリ(Erythronium grandiflorum)を対象に、消雪時期の変動と集団間・集団内の遺伝的分化を調査した。酵素多型分析の結果、高山性カタクリ集団において消雪時期の不均一性が開花フェノロジーを変動させ、花粉流動を妨げることにより、遺伝的構造を生じさせることが明らかになった。
    このほか、野外生態調査と平行して、多年生植物の動態を記述する数理モデルに関する研究を行い、密度依存性がある動態の場合の環境変動に対する集団の応答を評価する方法を新たに開発した。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 13440226
  • 冷温帯林の送粉系ネットワーク機能の解明
    科学研究費助成事業
    1999年 - 2002年
    戸田 正憲; 工藤 岳; 日浦 勉
    本研究では「樹木開花量の年変動により送粉者個体群が年変動し,それにより送粉者を共有する林床植物の結実率も年変動する」という仮説を証明するために次の3項目について調査し,以下の知見を得た。
    1.虫媒性樹種の開花量:マルハナバチ利用樹種8種を含む,約20種の樹木の開花量の年変動を定量化した。とくに開花量の年変動が大きいアオダモについてはその繁殖システムを明らかにした。またハクウンボクについては光合成産物のトレースを行い,非繁殖シュートから繁殖器官への転流が開花量決定に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
    2.マルハバチの個体数:森林調査区においては,春期の越冬女王の個体数(標識再捕獲法による)は彼女らが生まれた前年の樹木開花量と,ワーカー個体数(ウィンドウトラップ採集法による)は当年の樹木開花量とそれぞれ同調した年次変動パタンを示した。マルハナバチと樹木開花量の垂直分布の季節変化パタンから,マルハナバチが林冠木の開花量と関連して飛翔空間を決定することが示唆された.森林と草原におけるワーカー個体数の季節変化から,コマルハナバチの草原と森林の利用割合が季節変化しないが,オオマルハナバチは季節によりいずれか一方の生息地に特化するという生息地利用における種間の違いが認められ,これが両者の年次変動パタンの違いに関連していることが示唆された。
    3.林床性草本の繁殖成功:10種の繁殖特性と結実成功を4年間評価し,エゾエンゴサクを含む林床性植物の繁殖システムの概要を評価できた。また,光環境の異なる林縁と林内での林床植物の結実率を比較することにより,資源制限と花粉制限の影響を相対的に評価した。
    本研究により初めて温帯林で送粉系の年次変動が定量的に記述され,上記の仮説が部分的に支持された。このことは,送粉系の動的側面を適切に評価するためには長期的モニタリングがきわめて重要であることを示唆する。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 11440223
  • 森林における炭素バランス
    科学研究費助成事業
    1999年 - 2001年
    甲山 隆司; 田中 教幸; 東 正剛; 岩熊 敏夫; 工藤 岳; 大崎 満
    2001年度には,既設の森林プロットの再測を実施した.3年間の樹高・幹直径関係の推移を測定している幌内川河畔林では,まだ明瞭な方向的推移を得るには至っていない.18年生と45年生の二次林での初期生長を,ミズナラ・イタヤカエデとカラマツ(植林樹)について,樹幹解析によって比較解析したところ,種間で応答挙動が違うことが示唆された.落葉分解観測については,ミズナラがすでに終了しているが,イタヤカエデとオオイタドリ(遷移初期種)について,幌内川河畔林内および有珠山の遷移初期植生で比較観測を実施した.
    森林土壌から放出される二酸化炭素の空間的なばらつきや時間的な変動の詳細を明らかにすることを目的として空間スケールの異なる4つのサイトを設営し,内部に等間隔の100個の格子点上でチャンバー法による土壌CO_2フラックスの季節変化を2001年6月から11月まで毎月観測した.その結果,大きくばらつくフラックスの値は正規分布で近似できることがわかった.CO_2フラックスの季節変動の大きさは全ての観測点で一定の傾向を持っているとは限らず,また観測地点によって最大10〜40倍の差が見られた.季節変動から求めた温度係数Q10は約2〜9,平均値約5.2という値を示した.
    土壌分解系の機能を探る目的で,冷温帯、温帯、暖温帯の広葉樹林と針葉樹林において,落葉・土壌・土壌動物のδ15Nとδ13Cを求めた.安定同位体比には,落葉<土壌<土壌動物の関係が見られ,土壌動物の中でも落葉食者よりも肉食者で大きな値を示した.土壌中の安定同位体比は,δ15Nとδ13Cのいずれも南方ほど高く,有機物の分解速度植物を介した炭素や窒素の流れが速いことを反映していた.
    モデル研究では,既存モデルの適用と,シュートモジュール機能モデルの定量化を実施した.米国モンタナ大学テラダイナミクスシュミレーション研究グループの開発したBIOME-BGCモデルを苫小牧タワーサイトに導入し,水・炭素・窒素の循環と貯蔵を日間隔でシュミレートした.ほぼ妥当な純一次生産速度に対して,現存量が実測推定に対して過少に出る傾向があった.葉・シュートレベルの生態生理過程から,個体と個体群の挙動を記述するモデル(PipeTree)は,北方性モミ属個体群を想定したデータマッチングを行い,今まで報告されてきた自己間引きにともなう変化など個体群過程を再現するのに成功した.
    日本学術振興会, 特定領域研究(B), 北海道大学, 11213203
  • 東南アジア多雨林生態系の地球環境変化に対する応答
    科学研究費助成事業
    1998年 - 2000年
    甲山 隆司; 工藤 岳; 中静 透; 鈴木 英治; 大崎 満; 小林 繁男; 東 昭雄; 柴田 英昭; TURNER Ian
    東南アジアの熱帯低地多雨林は,有機物蓄積量でも,一次生産速度においても,もっとも巨大な生態系である.この自然生態系は人間活動により急激に変貌しつつあり,さらに大気二酸化炭素濃度の上昇と気候変化に対応して生態系諸機能の加速的変化を遂げつつある.したがって,熱帯多雨林の変化過程を高い精度で追跡観測することは,地球環境の変化を予測していく上できわめて重要な課題である.本調査は,すでに典型的な気候極相である低地混交フタバガキ林および貧栄養な立地上に成立する内陸泥炭湿地林・ヒース林に設定されている永久調査区を対象として,森林動態パラメータの変化を観測し,熱帯低地多雨林における有機物空間パターンの変容過程を抽出することを目的とした.
    主なフィールド調査は,ボルネオ島南部中央カリマンタン州のヒース林と泥炭湿地林で実施した.同州都パランカラヤ市周辺に散在する保護区域内のヒース林と泥炭湿地林に設置した1ヘクタール規模の永久調査区を調査対象として,一連の環境・森林生態系調査を実施した.とりわけ,1997年のエルニーニョによる乾燥影響が把握できるデザインとなった.
    また,すでに1992年来設定している西カリマンタン州ランダック川中流部のスリンブの混交フタバガキ林の追跡データから,森林のギャップ動態・サイズ分布動態を再現するモデルを提出した.さらに,本研究では,マレーシア領サバ州のキナバル山の植生と,サラワク州での予備調査,またブルネイ領のタセック・マリンブン保護地における泥炭湿地林の調査区設営など,ボルネオ島の森林タイプを広くカバーする野外調査を実施した.
    これら永久調査区の同時追跡データによって,きわめて急速に進行している森林の人為的な衰退が,ボルネオ熱帯林のポテンシャルに及ぼしつつある影響が,今回のセンサスと今後のその継続によって的確に把握できるものと考えている.
    日本学術振興会, 基盤研究(A), 北海道大学, 10041152
  • 生存戦略としての高山植物の種子発芽特性の評価
    科学研究費助成事業
    1998年 - 1999年
    工藤 岳
    北海道大雪山系の高山帯で,高山植物実生の発生時期と生存パターンについての調査を2年間行った。また,現地で採取した10数種の種子を用いて実験室内で発芽試験を行い,発芽の温度特性を比較した。野外での観察の結果,雪解けの早い風衝地植物群落では生育シーズンを通しての発芽が認められたのに対して,雪解けの遅い雪田植物群落では雪解け直後に発芽が集中していた。風衝地では生育シーズン初期の乾燥による死亡と越冬期の死亡が高かったが,雪田環境では発芽実生の死亡率は低かった。実験室での様々な温度制御下での発芽試験の結果、風衝地植物の発芽は種内においても様々な温度特性を示したのに対して,雪田植物の発芽はある温度域に集中していた。また,一般に風衝地植物の発芽開始積算温度は雪田植物に比べて低い傾向が認められた。これらの傾向は,風衝地から雪田まで広い分布域をもつミヤマキンバイの個体群間でも認められた。以上の結果より,風衝地は植物にとって変動環境にあり,生育シーズン初期の乾燥や冬季の死亡率が実生の定着を制限していることが推測された。早く発芽した実生は乾燥による死亡の危険性が高いが,長い生育期間を確保できるために根茎の発達がよく,冬季の死亡の危険性が低いというトレードオフの関係が認められた。このような環境では,発芽時期に変異を持たせる危険分散によって,実生集団の絶滅確率を低くするような発芽パターンが適応的であると考えられる。異なる積雪環境にある個体群間では,発芽特性に作用する選択圧が異なっていることが本研究によって示唆された。
    日本学術振興会, 奨励研究(A), 北海道大学, 10740355
  • ボルネオ多雨林生態系の地球環境変化に対する応答
    科学研究費助成事業
    1997年 - 1997年
    甲山 隆司; 工藤 岳; 田中 教幸; 高橋 英紀; 東 正剛; 岩熊 敏夫
    本研究は,IGBP-GCTEのコアリサーチ「モンスーンアジア陸域生態系における地球変化のインパクト」(TEMA)の熱帯低地多雨林観測体制を担う目的で行なった.TEMAの観測体制は,熱帯低地雨林生態系のステーションが欠けていた.本研究は,インドネシア・マレーシアとの共同研究としてボルネオにおけるTEMAステーションの整備・立ちあげを行なった.気候的極相である低地混交フタバガキ林生態系とともに,内陸泥炭湿地林および海岸湿地林といった地形的・土壌的成因による貧栄養生態系にも調査ステーションを設けて,低地生態系の全体像を把握することに重点を置いた.ボルネオ島南部の内陸低地には木質泥炭が深く堆積する特殊な森林生態系が広く分布する.中央カリマンタン・パランカラヤ市近郊のラヘイ地区およびその周辺に設営したステーションでは,泥炭湿地林と,泥炭が欠落した珪砂質栄養土壌上のケランガス林に森林調査プロットを設営し,毎木調査と同定のための標本採取の他,リタートラップと分解実験のためのリターバッグ(葉および細枝)も設置した.さらに土壌のガス交換特性を調べるために,採気による温室効果ガスの測定を開始した.また,広域の集水域特性をみるために,パランカラヤからタンジュンプティ国立公園にかけての陸水学的予備センサスを行なった.
    また,並行してマレーシア・サバ州タビン保護区に海岸湿地林生態系のステーションを設置し,すでにTEMA観測が進行しているキナバル山でもプロットの再測定と,特に高標高地域の植物の繁殖過程を行なった.2月上旬にはTEMA共同研究をひとつの柱とした札幌のシンポジウムに参加するとともに,3月中旬に開催されたGCTE-LUCC国際会議に出席してTEMAの成果を発表し,今後の観測体制について討議した.
    日本学術振興会, 国際学術研究, 北海道大学, 09041196
  • 北方林の林床多年生草木群集の多様性を支える生活史シンドローム
    科学研究費助成事業
    1996年 - 1997年
    甲山 隆司; 工藤 岳; 植村 滋; 大原 雅; 佐藤 利幸; 露崎 史朗
    北海道の低標高域に残存する北方混交林は、その緯度帯の森林植生としては植物種多様性が高い系である。本研究では、北海道の北方混交林を対象に、多年生草本の種多様性が維持されるメカニズムを解き明かすことを目的とした。
    前年度に引き続き、札幌市東郊の野幌森林公園内と、北海道大学苫小牧演習林内およびその近郊を中心に調査を継続した。苫小牧では2年間の林床草本群集のフェノロジーについてデータを蓄積し、融雪と林冠の展葉開始の年変動にともなって、積算受光量を一定に調節するような季節性の変化が存在することを見いだした。さらに季節に沿った各部分重の間の相対生長関係を6種について追跡調査し、種差が少なく葉に多くを分配するパターンを記録した。繁殖に注目した調査としては、一回繁殖型植物のオオウバユリ個体群の空間パターンを継時的に解析した。また、あらたに円盤接触法を考案して、葉群の垂直構造の定量的解析を行なった。選択的な採食圧にともなう群集の変化の解析を、夏季の馬の林間放牧系で調査した。さらに、対象地域の広域分布特性を空間スケール依存性として把握するために、シダ植物群について分析を行なった。
    以上の基礎調査で明かにした群集パターンに基づいて、共存する種間の形態、繁殖持性、季節戦略、そして微環境のあいだのシンドロームについて、考察を行なった。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 08454247
  • 訪花昆虫と植食性昆虫の季節性が高山植物の繁殖成功に及ぼす効果について
    科学研究費助成事業
    1995年 - 1995年
    工藤 岳
    高山植物の開花・結実フェノロジーと繁殖成功との関係を,訪花昆虫や種子食害昆虫の季節性の効果に着目し調査した.北海道大雪山系の雪田で,雪解け時期の異なる4箇所に20×20mの調査プロットを設定し,セリ科多年生草本のハクサンボウフウの開花・結実状況を,5月下旬から10月上旬まで定期的に観察した.プロット間で雪解け時期は6月上旬から8月下旬と大きく異なり,ハクサンボウフウの開花時期も7月中旬から9月中旬までと大きく異なっていた.
    雪解け時期の早い場所では,開花時期の気温が低く,訪花昆虫の活性が低くために結実が花粉不足によって制限されていた.また,双翅目昆虫の幼虫による果実の食害が頻繁に観察された.雪解けが中程度の場所では,開花期の訪花昆虫の活性が高く,種子の食害も非常に低いために,高い種子生産を示していた.一方,雪解けの遅い場所では,受粉成功は高いが種子成熟期間が制限されているために,ほとんど結実できなかった.以上の結果より,雪解け時期の違いによって引き起こされた開花フェノロジーの変異は,種子生産成功度に大きく影響することが示された.
    ハクサンボウフウは,同一個体上に雄花と両性花を持つ雄性両全同株(andromonoecy)である.プロット間で各個体の両性花と雄性花の構成比を比較したところ,雪解けの遅いプロットほど両性花の割合が高くなっていた.このような性表現の変異は,それぞれのハビタットにおける訪花昆虫の活性や生育期間の制限に起因していると考えられる.雄器官・雌器官を通しての繁殖成功度が変化するときの最適両性/雄性花生産比を求めるESSモデルを作り,実際の野外データに当てはめたところ,モデルを支持する傾向が得られた.
    以上得られた成果のうち,野外データについてはOpera Botanicaに掲載予定であり,モデルの当てはめについて現在論文作成中である.
    日本学術振興会, 奨励研究(A), 北海道大学, 07740591
  • 高山植物の積雪に対する反応と適応
    科学研究費助成事業
    1990年 - 1990年
    工藤 岳
    日本学術振興会, 奨励研究(特別研究員), 北海道大学, 02954013