小野寺 康之 (オノデラ ヤスユキ)

農学研究院 基盤研究部門 応用生命科学分野准教授

研究者基本情報

■ 学位
  • 博士(農学), 北海道大学
■ URL
researchmap URL■ ID 各種
研究者番号
  • 80374619
J-Global ID■ 研究キーワード・分野
研究キーワード
  • ホウレンソウ
  • 雌雄性
  • 植物育種
  • 性染色体
  • 性決定機構
  • 性決定遺伝子
  • 植物育種・遺伝
  • in situハイブリダイゼーション
  • 遺伝解析
  • ポジショナルクローニング
  • BACコンティグ
  • 雄性不稔
  • 植物
研究分野
  • 環境・農学, 遺伝育種科学
■ 担当教育組織

研究活動情報

■ 論文
■ その他活動・業績
■ 主な担当授業
  • 農業生物学特論, 2024年, 修士課程, 農学院
  • 農業生物学特論演習, 2024年, 修士課程, 農学院
  • 生殖生物学, 2024年, 学士課程, 農学部
  • 応用生命科学実験, 2024年, 学士課程, 農学部
  • 応用生命科学概論, 2024年, 学士課程, 農学部
■ 共同研究・競争的資金等の研究課題
  • Alphafold2によるタンパク質立体構造変異情報を駆使した育種・進化研究の新展開
    科学研究費助成事業
    2023年06月30日 - 2026年03月31日
    平川 英樹; 小野寺 康之
    現在、多型解析に基づく育種形質、栽培化形質および適応形質などの原因遺伝子の同定に向けた研究が行われているが、その特定までに至るには困難なことが多い。その理由の一つとして、発現されたタンパク質が最終的に形質に影響を与えるにも関わらず。アミノ酸残基の変異がタンパク質の機能や活性に与える影響に関する視点からの評価軸が欠けていることが挙げられる。ゲノム網羅的な多型解析で検出される膨大な数のSNPの中から有力な原因遺伝子の候補を絞り込む上で、この新たな視点を加える意義は大きい。非同義置換が生じたアミノ酸残基の立体構造上の位置を特定し、立体構造から予測された機能部位に含まれるものをタンパク質の機能・活性に直接的に影響を与える「高次機能的SNP」として定義する。今年度の実績としては、ホウレンソウについて各国の品種におけるゲノムワイドなSNPを調べ、トマトについては、栽培種と野生種におけるSNPを調べ、さらに、dwarf遺伝子における機能的SNPをMicro-Tomにおいて検出した。アブラナ属作物については、染色体レベルで解読された植物種をNCBIのGenomesデータベースにおいて調べ、それらの中から作物を選出し、今後、高次機能的SNPに関する解析を行う。検出された「高次機能的SNP」について、種間・種内変異や形質変異、栽培地域との関連性の検証を通じて、栽培化や育種および適応進化に寄与した遺伝子を迅速に同定し、効率的な育種に役立つ研究基盤を構築する。
    日本学術振興会, 挑戦的研究(萌芽), 公益財団法人かずさDNA研究所, 23K18039
  • 作物の機能的SNP情報の整備および有用遺伝子同定への利用
    科学研究費助成事業
    2022年04月01日 - 2026年03月31日
    平川 英樹; 小野寺 康之; 増田 税
    遺伝子機能に直接的に影響を及ぼしうる「機能的SNP」を多様な作物について明らかにし、次世代シークエンサーから得られる膨大な量のSNPの中から形質に関連性があると考えられるものを絞り込むことで、原因遺伝子の同定を目指す。さらに、優良形質などの選抜の高精度化を行い、育種の効率化を図るため、本研究では「機能的SNP」に関する情報基盤の整備を行なう。総務省統計局で公表されている作付面積と収穫量が多い31植物種を含むNCBIから入手した201植物種のゲノムデータのうち、遺伝子が公開されている119種について実施したUniProtKB、Araport、EggNOGに対する配列相同性解析の結果およびRGAuguryを用いたストレス耐性遺伝子候補の検索結果を集約したアノテーション表をGene Curation DS(https://fgi.kazusa.or.jp/gcds/)から公開した。「機能的SNP」の開発に関しては、トマトとホウレンソウを対象として実施し、世界各国でシークエンスされた様々な品種(系統)についてのリシークエンスデータを用いてSNPを検出した。ホウレンソウについては、ホウレンソウの高精度なゲノム配列を解読し、ペプチドの予測を行っている。また、「機能的SNP」を整備するため、遺伝子予測を進めている。一方、キュウリモザイクウイルス黄斑系(CMV-Y)に対する抵抗性系統と感受性系統に対する接種試験を行ない、「機能的SNP」の有用性を調べる。そのために、CMV-Y抵抗性形質が分離する系統03-009の抵抗性株および感受性株を用いてQTL-seq解析を行い、抵抗性遺伝子座をマップした。さらに、同座に関する精密マッピングを行い、「機能的SNP」情報を活用して、抵抗性候補遺伝子を絞り込んだ。
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 公益財団法人かずさDNA研究所, 23K23586
  • 作物の機能的SNP情報の整備および有用遺伝子同定への利用
    科学研究費助成事業
    2022年04月01日 - 2026年03月31日
    平川 英樹; 小野寺 康之; 増田 税
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 公益財団法人かずさDNA研究所, 22H02321
  • ホウレンソウゲノム情報を活用した生殖関連形質制御遺伝子の同定
    科学研究費助成事業
    2021年04月01日 - 2024年03月31日
    小野寺 康之
    1.ホウレンソウの生殖関連形質制御遺伝子を効率的に同定するための環境整備として、これまでに構築したホウレンソウゲノム配列品質の高度化を試みた.Hi-Cリードを用いて、ドラフトゲノムアセンブリのスキャフォールディングを行い、さらにはSNP連鎖地図情報(Hirakawa et al. 2021)を用いて6本のPseudomoleculesから構成されるリファレンスゲノム配列(全長 875.6 Mb, BUSCO complete 95.8%)を構築した.このリファレンスゲノム配列を用いて、以前実施した系統間交雑後代(F2世代)の形質(雌性率)およびSNP情報を用いてQTL解析行なった結果,これまでに第2および第3連鎖群から同定されたQTL qFem2.1およびqFem3.1に加えて、第6連鎖群からQTL qFem6.1が同定された.また,QTL間の交互作用に基づいて,qFem3.1領域に間性決定を担う主働遺伝子(M)が座乗し,qFem2.1およびqFem6.1領域にはMに対する変更因子が座乗することが示唆された.
    2.低雌花率間性系統03-336および雌雄異株系統03-009間のF2世代から,マーカーを用いて間性主働遺伝子(M)優性アレルのホモ接合体(MM株)を72個体選抜し,これらの雌花率を調査した.その結果,qFem2.1領域にMに対する変更因子が座乗することを支持する.さらに,F3世代を用いた解析からも,同様の結論を支持する結果が得られた.
    3.先行研究(Hirakawa et al. 2021)において同定した抽苔性制御QTL qBt3.1およびqBt3.2領域に座乗するFTホモログの発現を調査した.その結果,QTL qBt3.1に座乗するコピーの発現が日周変動を示すことが判明し,先行研究(Abe et al. 2014)とは異なる結果が得られた.
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 21K05525
  • ホウレンソウにおける雄性化/雌性化抑制の分子機構解明
    科学研究費助成事業
    2018年04月01日 - 2021年03月31日
    小野寺 康之; 星野 洋一郎
    ホウレンソウは雌雄異株植物として知られるが,間性株(雌雄異花同株)も見出される本研究では雄性因子(Y)と間性因子(M)の候補遺伝子の同定および発現・機能解析を試みた. RNAseq解析によって,Y候補遺伝子(Y-orf)が同定された.Y-orfはSpinacia属全体で雄株に固有な遺伝子であり,雄株茎頂の髄状分裂組織および形成層で発現していることが判明した.一方,M候補遺伝子は,葯および胚珠で特異的に発現することが判明した.しかしながら,シロイヌナズナおよびタバコにY-orfおよびM-orfを導入したが,両遺伝子が雌性化抑制の機能を持つことを示唆する明確な証拠は得られなかった.
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 18K05609
  • ホウレンソウ性決定遺伝子座の構造決定および進化過程の解明
    科学研究費助成事業
    2014年04月01日 - 2017年03月31日
    小野寺 康之; 近江戸 伸子; 星野 洋一郎
    ホウレンソウはアカザ科の雌雄異株として知られるが,間性株も見られる.雌雄の決定は性染色体(XY)に座乗する遺伝子ペア(YおよびX) に支配される.間性発現を支配する遺伝子(M)は,Y座と約12 cM隔てて連鎖している.本研究では,ホウレンソウ性染色体をカバーする108 cMの分子連鎖地図を構築した.次いで,Y座に連鎖する220個の遺伝子を同定し,これらの一部は組換え抑制領域に座乗している可能性を示す証拠を得た.アカザ科のテンサイゲノムとの比較から,ホウレンソウの性決定遺伝子はペリセントロメア領域に座乗している可能性が示された.間性遺伝子座乗候補領域を約25 kbpに絞り込んだ.
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 26292001
  • ホウレンソウにおける性決定遺伝子コード候補領域の絞り込み
    科学研究費助成事業
    2011年 - 2013年
    小野寺 康之
    ホウレンソウからは,雄株および雌株の他に雌雄双方の機能を備えた間性株も見出される.これらの多様な「性」はホウレンソウにおける効率的F1採種に必要な受粉制御技術を確立する上で重要な形質である.本研究では,性決定遺伝子座の構造解析を試みた.
    先ず,Y遺伝子座の解析からは,この遺伝子座を含む周辺領域は減数分裂期の相同組み換えが抑制された雄特異的領域であることが示唆され,この領域は少なくとも840 kbp以上である可能性が示された.さらに,この領域の一部の配列を決定した結果,大部分が新規のレトロエレメントで占められていた.その一方で,タンパク質コード候補遺伝子は僅かに4個しか見出されなかった.
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 23580001
  • 作物における生殖様式の多様性をもたらす機構の解析
    科学研究費助成事業
    2009年 - 2011年
    三上 哲夫; 小野寺 康之
    アカザ科作物のテンサイおよびホウレンソウはそれぞれ遺伝的均一化をもたらす自家受精を妨げる仕組として細胞質雄性不稔(CMS)および雌雄異株性を発達させた.本研究では,それぞれの仕組みに注目して,植物における生殖様式の多様性をもたらす機構の解明を試みた.
    テンサイのOwen型CMSをもたらすタンパク質preSATP6はミトコンドリア内膜でホモ多量体を形成する.本研究では,稔性回復核遺伝子として同定されたRf1の翻訳産物はRF1-preSATP6複合体の形成を通じてpreSATP6ホモ多量体の総量を減少させることによって,花粉稔性回復をもたらしている可能性を示した.さらに,ハマフダンソウを含むテンサイ近縁野生種において,Rf1座は少なくとも16種のアレルが分化していることを明らかにした。Owen CMSとは由来を異にするCMS系統における雄性不稔発現メカニズムの解析と併せて,Rf1座の多様なアレルの進化機構を解析するのが次の課題となる。
    ホウレンソウと同じSpinacia属の植物種S. turkestanicaおよびS.tetrandraにおける性型を調査した結果,いずれもホウレンソウと同様に雌雄異株の植物であることを見出した.しかしながら,S.tetrandraの一部のアクセションはホウレンソウおよびS. turkestanicaの雄株が共通して持っているDNA配列(雄特異的DNA)を欠くことが判明した.さらに,このS. turkestanicaアクセションはホウレンソウとは異なる葉緑体ゲノム配列を有することも明らかにした.すなわち,Spinacia属は少なくとも2つのグループによって構成されており,性決定遺伝子座あるいは性染色体の構造が分化している可能性が示された.
    日本学術振興会, 基盤研究(B), 北海道大学, 21380001
  • ホウレンソウにおける間性形質の遺伝的決定機構の解明
    科学研究費助成事業
    2008年 - 2010年
    小野寺 康之
    ホウレンソウは雌雄異株として知られているが,雌雄両方の機能を備えた間性株(雌雄同株)も頻繁に見出される.これまでに同定してきた間性遺伝子がSO4と名付けられた核マイクロサテライトマーカーと密接に連鎖(4.3cM)していることを見出した.さらに,SO4は雌雄性を決定づける一組の対立遺伝子(XおよびY)から1.6cMの距離に座乗していることも判った.即ち,本研究によって間性遺伝子およびY遺伝子は密接な連鎖もしくは対立関係にあることが明らかになった.
    日本学術振興会, 基盤研究(C), 北海道大学, 20580001
  • テンサイ雄性不稔性原因遺伝子と花粉稔性回復遺伝子の相互作用解析
    科学研究費助成事業
    2006年 - 2010年
    久保 友彦; 三上 哲夫; 小野寺 康之
    細胞質雄性不稔性(CMS)は、140種以上の被子植物で認められる形質で、ミトコンドリアゲノム上のCMS原因遺伝子(S)がミトコンドリア機能不全を引き起こすことにより花粉不稔が発生すると説明されている。CMSでは他器官に影響を及ぼすことなく花粉形成過程が阻害されるが、これには花粉形成が高度にミトコンドリア依存であることが関係している。一方、核稔性回復遺伝子(Rf)はSの作用を打ち消すことができる。本研究では、テンサイからクローニングしたS因子であるpreSatp6と、Rfの一つであるRf1との相互作用を検討した。その結果、両者が翻訳産物レベルで相互作用することを明らかにした。相互作用はRf1が発現する葯に限定され、その結果preSATP6ホモオリゴマーの高次構造が変化する。この高次構造の変化はRf1強制発現により再現することができた。CMS発現の解明を目的として、CMS株で発現低下する遺伝子を215個収集した。また、シロイヌナズナRNAポリメラーゼの触媒サブユニット遺伝子のT-DNA挿入変異は母性遺伝できないが、一定の頻度で花粉を介して次世代に伝達される現象を見出した。ホウレンソウの雄性決定遺伝子と間性決定遺伝子は同一連鎖群に座乗しているが対立関係には無いことを明らかにした。さらに、ホウレンソウBACライブラリーを作成した。
    日本学術振興会, 特定領域研究, 北海道大学, 18075001
  • ホウレンソウ性決定遺伝子の同定
    科学研究費助成事業
    2006年 - 2007年
    小野寺 康之
    ホウレンソウには雄花のみを着生させる雄株および雌花のみを着生させる雌株に加え、雌花と雄花あるいは両性花が様々な比率で混成する多様な間性が見出される。
    これまでの研究で、我々は花器形態に基づいて5種類の間性自殖系統を雌雄異花同株および雌花両性花同株の二つのタイプに分類できることを明らかにした。さらに、雌花形成割合(雌性率)および各間性形質の遺伝様式に基づいて、これらの間性系統の性型を4型(I型〜IV型)に分類した。本研究では、これまで解析に用いてきた間性系統の中で最も雌性率が低く、雌雄異花同株タイプに属する系統(03-336)が示す1型間性の発現を支配する遺伝子の同定を試みた。
    03-009♀x03-336によって得られたF1個体を雄株(系統03-009:XY)と交配してBC1世代を作出し、2007年4月から6月にかけてこのBC1集団を北海道大学構内のビニールハウス内で育成した。当該F1集団および前述のBC1集団のおよそ半数からY遺伝子マーカーが検出されたことに加えて、それらの全ての個体が雌性率0%(雄株)を示したことからY遺伝子はI型間性の発現を支配する遺伝子に対して優性もしくは上位性を示すと結論づけた.さらに、このBC1世代(169個体)において,雄株:間性株:雌株=2:1:1の比に適合する分離が生じていることも判明した(x^2検定,ρ=0.372).雌雄決定遺伝子XおよびYに加えてI型間性遺伝子としてM遺伝子を想定することによって,雄株:間性株:雌株=2:1:1(XY;Mm:XY;mm:XX;Mm:XX;mm=1:1:1:1)の分離が当該BC1世代で生じることが説明できる.
    日本学術振興会, 若手研究(B), 北海道大学, 18780001
  • テンサイ細胞質雄性不稔の機構解析における新展開
    科学研究費助成事業
    2004年 - 2007年
    三上 哲夫; 久保 友彦; 小野寺 康之
    テンサイの細胞質雄性不稔性の発現機構を明らかにする目的で、雄性不稔の原因ミトコンドリア遺伝子の作用を抑え、稔性回復に働く核遺伝子Rf1のクローン化と翻訳産物の特徴づけを中心に研究を進めた。得られた成果は次の通りである。
    1. 雄性不稔分離集団を用いたマッピングにもとづいて、Rf1座を第III連鎖群の260kb領域に絞り込んだ。この260kb領域をカバーするBACクローンとコスミドクローンを選び、全塩基配列を決めた。
    2. その結果、28個のORFをみつけたが、葯において転写し、翻訳産物のミトコンドリア輸送が予想されるORFは5個のみであった。
    3. これらのORFより、Rf1の最有力候補配列としてMPL(metalloprotease-1ike)遺伝子を特定した。MPLはRf1座において4コピー存在し、クラスターを形成している。一方、Rf1をもたないテンサイ株(rf1劣性ホモ接合型)では、大規模なMPLの構造変異がみつかった。
    4. Rf1の分離集団を用いて、MPLのノーザン解析を行った。Rf1の働きで稔性を回復した個体では、強いシグナルがみられたが、完全不稔型植物(rflrf1)においてはシグナルが検出されず、稔性回復とMPLシグナルとの密接な相関が確かめられた。
    5. in situハイブリダイゼーションを通じて、MPLの発現が小胞子四分子期及び小胞子初期の葯タペート細胞のみに限局されていることが明らかとなった。
    6. 雄性不稔株のタペート細胞(小胞子初期)では、花粉形成に重要な役割を果たすと考えられる葯特異的脂質輸送タンパク質(LTP)遺伝子の発現が著しく抑制されることが判明した。テンサイ細胞質雄性不稔株においては、雄性不稔原因タンパク質によってミトコンドリアの機能に不具合が生じた結果、タペート細胞で何らかの生理障害が発生し、これに伴ってLTPの発現も阻害されたと解釈される。
    日本学術振興会, 基盤研究(A), 北海道大学, 16208001
  • 葯におけるミトコンドリア機能の阻害誘導-雄性不稔の機序解明に向けて
    科学研究費助成事業
    2004年 - 2005年
    三上 哲夫; 久保 友彦; 小野寺 康之
    今年度の研究成果は次のように要約される。
    [1]前年度までに、ミトコンドリア型ピルビン酸脱水酵素(PDH)を標的にしたアンチセンス法により、タペート細胞のミトコンドリア機能が損われた形質転換タバコを作成した。半数の形質転換タバコは花粉不稔を示した。これらの花粉不稔タバコを供試し、光学顕微鏡下で葯におけるタペート細胞の形態を調べた。
    [2]正常型のタバコ野生株では、小胞手前期にタペート細胞が消失し始める。これに対して花粉不稔タバコにおいては、タペート細胞が肥大し小胞子を押しつぶす事例がしばしば監察された。肥大したタペートでは多核化や液胞化が生じている。
    [3]DAPI染色によりタペート細胞を観察した。正常型のタバコ野性株では、四分子期にタペート細胞が目立って発達するのに対して、花粉不稔タバコではこのような発達が認められず、四分子の構成胞子の一部に細胞壁の陥没や変形がみられた。小胞子前期に至ると、正常株のタペート細胞では核が収縮しDAPI蛍光のシグナルも強くなる傾向が認められた。一方、花粉不稔タバコのタペートにおいては、多核化が確認されるとともに、核の収縮はみられず、また蛍光シグナルの強度も変化しない。
    [4]花粉不稔タバコの葯で発現の阻害又は亢進の生じている遺伝子を探索した。その結果、lipid transfer proteinをコードする遺伝子の転写が小胞子前期で阻害されていることが判明した。
    [5]アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)はPDHのバイパス経路にかかわる酵素の1つである。ALDHのコード遺伝子については、花粉不稔タバコの葯において転写が小胞子前期で若干亢進している傾向が認められた。
    日本学術振興会, 萌芽研究, 北海道大学, 16658002