Japan Society for the Promotion of Science:Grants-in-Aid for Scientific Research Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
Date (from‐to) : 2019/04 -2022/03
Author : 伊藤 隼
令和3年度は、まず、前年度から引き続いてイタリア法の補助参加論を跡づけて、現在に至るまでの議論の経過を詳らかにするとともに、その規律について考察する作業に取り組んだ。種々の参加形態の間あるいは他の制度との間での役割分担が意識されつつ、補助参加のメルクマールがほぼ一貫して参加訴訟の訴訟物たる法関係と第三者の主張する法関係との間の(前者が後者の法律要件要素に当たるという意味での)先決従属性に見いだされていること、しかしそこにおいて補助参加が許容される実質的根拠には変遷が見られること、具体的には、その種の実体的なつながりによって一般的に生じるとされる(不利な)判決効の回避を強調する見方が憲法上の防御権ないし対審の原則の重要性が認識されるにつれて次第に支持を失い、参加による(有利な)判決効の創出を重視する見方が勢いを強めつつあること、そしてそうした規律に鑑みつつ、法体系の中での補助参加の機能の定位が試みられるに至っていること、等が明らかになったが、こうした視点は、(ドイツ法・)日本法の議論を相対化しつつ深めるうえで重要な手がかりになるのではないかと考えている。
それに続いて、ドイツ法、イタリア法を突き合わせて比較検討するとともに、それらから得られる示唆を踏まえて、日本法における補助参加の在り方について本格的に考察する作業に取りかかった。ここについて本年度中に形にすることは叶わなかったが、一定の見通しは持てるようになってきており、成果の取りまとめに尽力しているところである。