日本学術振興会:科学研究費助成事業
研究期間 : 1998年 -1998年
代表者 : 平井 武, 山下 博, 洞 彰人, 斎藤 公明, 山口 博, 久保 泉
1. 廣い意味の調和解析学の発展はめざましく,最近は無限次元的な対象を取り扱おうとする萌芽的研究が生まれている.こうした「無限次元調和解析」を目指す気運は国際的な広がりを見せている.
これに呼応して,共同研究の企画を試み,研究協力を強化発展させた。最近の,無限次元調和解析学の研究に関し,重要な四つの柱を選び,その方面の中心的研究者に参加して貰い,共同の研究会を持って,新しい共同研究を企画・開拓した.さらに,日独の国際共同研究を学振に申請した.
2. 上記の四つの柱とは,
(1) 無限次元群,例えば多様体上の微分同相写像のなす群,loop群,超リー代数,Kac-Moody環の表現論,及びそれに対応する幾何学的対象の研究.また,半単純リー群の無限次元表現の新しい方向の研究.
(2) 局所コンパクト群上の函数の変換に関する研究,双対性及び測度環の研究.
(3) 群やそれを一般化したhyper group,その他の代数的構造の上の酔歩の理論.
(4) ホワイトノイズ解析,無限次元リー群やloop空間上の確率解析と無限次元群の表現の応用.
3. 「無限次元調和解析」の共同研究の企画調査をした.共同研究の姿としては,
(1) 上の4つの重要な柱の間の有機的関連が図られ,相互に影響し合いながら,それぞれの発展を計る,
(2) 無限次元群などの表現論とloop空間上の確率解析や群上の測度環の研究との間に相互の応用.
(3) 位相群上の調和解析は群のアーベル性,非アーベル性に関係のない,統一的理論の確立.
(4) 無限次元空間,とくにガウス空間の変換群は,場の量子論や確率場の理論において,しばしば興味深い役割を演じている.そのような変換群の表現論を通じて,ホワイトノイズ解析,量子的(非可換)ホワイトノイズを基礎とした量子確率解析にまで,応用を拡げる.